数学B 検定 問題 5 解説

方針・初手
治癒する人数 $X$ は二項分布 $B(100,0.8)$ に従う。したがって平均と分散は
$$ m=100\cdot 0.8=80,\qquad \sigma^2=100\cdot 0.8\cdot 0.2=16 $$
である。よって、正規近似により
$$ X \fallingdotseq N(80,4^2) $$
として扱う。整数値を連続分布で近似するため、連続補正を用いる。
解法1
(1)
求める確率は
$$ \Pr(|X-m|\geqq 10)=\Pr(|X-80|\geqq 10) $$
である。これは
$$ X\leqq 70\quad \text{または}\quad X\geqq 90 $$
を意味する。
正規近似で連続補正を用いると、
$$ \Pr(X\leqq 70)+\Pr(X\geqq 90) \fallingdotseq \Pr(Y\leqq 70.5)+\Pr(Y\geqq 89.5) $$
となる。ただし $Y\sim N(80,4^2)$ である。
標準化すると、
$$ \frac{70.5-80}{4}=-2.375,\qquad \frac{89.5-80}{4}=2.375 $$
であるから、
$$ \Pr(|X-80|\geqq 10) \fallingdotseq 2\Pr(Z\geqq 2.375) $$
となる。ただし $Z$ は標準正規分布に従う。
標準正規分布表より
$$ \Pr(Z\leqq 2.375)\fallingdotseq 0.9912 $$
であるから、
$$ \begin{aligned} 2\Pr(Z\geqq 2.375) &= 2(1-0.9912) \\ 0.0176 \end{aligned} $$
である。
したがって、
$$ \Pr(|X-m|\geqq 10)\fallingdotseq 0.018 $$
である。
(2)
整数 $k$ に対して
$$ \Pr(|X-80|\geqq k)\leqq 0.05 $$
となる最小の $k$ を求める。
連続補正を用いると、
$$ \Pr(|X-80|\geqq k) \fallingdotseq 2\Pr\left(Z\geqq \frac{k-0.5}{4}\right) $$
である。
これが $0.05$ 以下となるには、
$$ 2\Pr\left(Z\geqq \frac{k-0.5}{4}\right)\leqq 0.05 $$
すなわち
$$ \Pr\left(Z\leqq \frac{k-0.5}{4}\right)\geqq 0.975 $$
となればよい。
標準正規分布表より
$$ \Pr(Z\leqq 1.96)\fallingdotseq 0.975 $$
であるから、
$$ \frac{k-0.5}{4}\geqq 1.96 $$
を満たせばよい。これより
$$ k-0.5\geqq 7.84 $$
なので、
$$ k\geqq 8.34 $$
である。したがって最小の整数は
$$ k=9 $$
である。
実際、
$$ k=8 $$
では
$$ \begin{aligned} 2\Pr\left(Z\geqq \frac{7.5}{4}\right) &= 2\Pr(Z\geqq 1.875) \fallingdotseq 0.061>0.05 \end{aligned} $$
であり、
$$ k=9 $$
では
$$ \begin{aligned} 2\Pr\left(Z\geqq \frac{8.5}{4}\right) &= 2\Pr(Z\geqq 2.125) \fallingdotseq 0.034<0.05 \end{aligned} $$
であるから、確かに最小である。
(3)
新しい治療法の治癒率を $p$ とする。
在来の治療法と治癒率に差があるかを調べるので、両側検定を行う。帰無仮説と対立仮説は
$$ H_0:p=0.8,\qquad H_1:p\neq 0.8 $$
である。
帰無仮説 $H_0$ のもとでは、治癒人数 $X$ は近似的に
$$ N(80,4^2) $$
に従う。
有意水準 $5%$ の両側検定では、(2) より
$$ \Pr(|X-80|\geqq 9)\leqq 0.05 $$
であるから、棄却域は
$$ |X-80|\geqq 9 $$
と考えればよい。
今回の観測値は
$$ X=92 $$
であるから、
$$ |92-80|=12 $$
である。これは
$$ 12\geqq 9 $$
を満たすので、帰無仮説 $H_0$ は棄却される。
したがって、有意水準 $5%$ で、新しい治療法は在来のものと比べて治癒率に差があると考えてよい。
解説
この問題では、二項分布
$$ B(n,p) $$
の平均と分散
$$ np,\qquad np(1-p) $$
を用いて、正規分布
$$ N(np,np(1-p)) $$
で近似することが基本である。
また、$X$ は整数値をとる確率変数であるのに対し、正規分布は連続分布であるため、$X\leqq 70$ を $Y\leqq 70.5$、$X\geqq 90$ を $Y\geqq 89.5$ のように補正する。これが連続補正である。
検定では、「在来の治癒率 $0.8$ と差があるか」を調べるので、片側検定ではなく両側検定を用いる。観測値 $92$ は平均 $80$ から大きく離れており、$5%$ 水準の棄却域に入るため、治癒率に差があると判断する。
答え
(1)
$$ \Pr(|X-m|\geqq 10)\fallingdotseq 0.018 $$
(2)
$$ k=9 $$
(3)
有意水準 $5%$ で帰無仮説 $p=0.8$ は棄却される。したがって、新しい治療法は在来のものと比べて、治癒率に差があると考えてよい。
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