数学B 推定 問題 2 解説

方針・初手
$X_n$ は $n$ 回の移動量の和である。表の回数を $Y$ とすると、$Y$ は二項分布に従い、
$$ X_n=Y-(n-Y)=2Y-n $$
と表せる。この関係を使うと、確率分布・平均・分散をまとめて扱える。
解法1
(1)
$p=\dfrac{1}{2}$ のとき、$n$ 回中に表が $k$ 回出る確率は
$$ {}_{n}\mathrm{C}_{k}\left(\frac{1}{2}\right)^n $$
であり、そのとき
$$ X_n=2k-n $$
である。
まず $X_4$ について考える。$k=0,1,2,3,4$ に対して $X_4=2k-4$ であるから、
$$ \begin{array}{c|ccccc} X_4 & -4 & -2 & 0 & 2 & 4 \\ \hline P & \dfrac{1}{16} & \dfrac{4}{16} & \dfrac{6}{16} & \dfrac{4}{16} & \dfrac{1}{16} \end{array} $$
となる。
$p=\dfrac{1}{2}$ なので、1回の移動量の平均は $0$、分散は $1$ である。したがって、4回の和である $X_4$ について
$$ E(X_4)=0,\qquad V(X_4)=4 $$
である。
次に $X_5$ について考える。$k=0,1,2,3,4,5$ に対して $X_5=2k-5$ であるから、
$$ \begin{array}{c|cccccc} X_5 & -5 & -3 & -1 & 1 & 3 & 5 \\ \hline P & \dfrac{1}{32} & \dfrac{5}{32} & \dfrac{10}{32} & \dfrac{10}{32} & \dfrac{5}{32} & \dfrac{1}{32} \end{array} $$
となる。
同様に、5回の和である $X_5$ について
$$ E(X_5)=0,\qquad V(X_5)=5 $$
である。
(2)
$6$ 回目で初めて原点に戻るには、$6$ 回目で $X_6=0$ となり、かつ $1$ 回目から $5$ 回目までは原点に戻らないことが必要である。
$X_6=0$ となるには、表が $3$ 回、裏が $3$ 回出る必要がある。ただし、途中で原点に戻る場合は除く。
まず最初に $+1$ へ進む場合を考える。このとき、途中で原点に戻らず、6回目で初めて $0$ に戻る列は
$$ +++---,\qquad ++-+-- $$
の2通りである。記号を見やすく書けば、それぞれ
$$ (+,+,+,-,-,-),\qquad (+,+,-,+,-,-) $$
である。
最初に $-1$ へ進む場合も、符号をすべて反転させた2通りがある。したがって、条件を満たす列は全部で
$$ 2+2=4 $$
通りである。
各列の確率は $\left(\dfrac{1}{2}\right)^6$ であるから、求める確率は
$$ 4\left(\frac{1}{2}\right)^6=\frac{4}{64}=\frac{1}{16} $$
である。
(3) 1回の移動量 $X_1$ は
$$ X_1= \begin{cases} 1 & \text{確率 }p,\\ -1 & \text{確率 }1-p \end{cases} $$
である。
したがって、平均は
$$ E(X_1)=1\cdot p+(-1)(1-p)=2p-1 $$
である。
また、$X_1^2=1$ が常に成り立つので、
$$ E(X_1^2)=1 $$
である。よって分散は
$$ V(X_1)=E(X_1^2)-{E(X_1)}^2 =1-(2p-1)^2 =4p(1-p) $$
である。
次に、$X_n$ は独立な $n$ 回の移動量の和である。1回ごとの移動量を $Z_1,Z_2,\dots,Z_n$ とすると、
$$ X_n=Z_1+Z_2+\cdots+Z_n $$
であり、各 $Z_i$ は $X_1$ と同じ分布に従う。
したがって、平均は
$$ E(X_n)=nE(X_1)=n(2p-1) $$
である。
また、独立な確率変数の和の分散は分散の和になるから、
$$ V(X_n)=nV(X_1)=4np(1-p) $$
である。
(4)
$100$ 回中、表の回数を $Y$ とする。このとき
$$ X_{100}=2Y-100 $$
である。$X_{100}=28$ より、
$$ 28=2Y-100 $$
だから、
$$ Y=64 $$
である。したがって、表の出た割合は
$$ \hat p=\frac{64}{100}=0.64 $$
である。
母比率 $p$ の信頼度 $95%$ の信頼区間は、正規近似により
$$ \hat p \pm 1.96\sqrt{\frac{\hat p(1-\hat p)}{100}} $$
で求められる。
ここで、
$$ \sqrt{\frac{0.64\cdot 0.36}{100}} =\sqrt{0.002304} =0.048 $$
であるから、
$$ 1.96\cdot 0.048=0.09408 $$
となる。
よって、信頼度 $95%$ の信頼区間は
$$ 0.64-0.09408 \leqq p \leqq 0.64+0.09408 $$
すなわち
$$ 0.54592 \leqq p \leqq 0.73408 $$
である。
小数第3位までで表せば、
$$ 0.546 \leqq p \leqq 0.734 $$
である。
解説
この問題では、$X_n$ を直接考えるよりも、表の回数 $Y$ を導入して
$$ X_n=2Y-n $$
と表すのが最も整理しやすい。
特に、確率分布を求める部分では二項分布をそのまま使えばよい。一方、平均と分散については、1回の移動量の平均・分散を先に求め、独立な和として $n$ 倍するのが簡潔である。
$6$ 回目で初めて原点に戻る確率では、単に $X_6=0$ となる確率を求めるだけでは不十分である。途中で $X_2=0$ や $X_4=0$ になる場合を除かなければならない点が重要である。
信頼区間では、$X_{100}=28$ から直接 $p$ を推定するのではなく、まず表の回数 $64$ 回を求め、標本比率 $\hat p=0.64$ に直してから母比率の信頼区間の公式を用いる。
答え
(1)
$$ \begin{array}{c|ccccc} X_4 & -4 & -2 & 0 & 2 & 4 \\ \hline P & \dfrac{1}{16} & \dfrac{4}{16} & \dfrac{6}{16} & \dfrac{4}{16} & \dfrac{1}{16} \end{array} $$
$$ E(X_4)=0,\qquad V(X_4)=4 $$
$$ \begin{array}{c|cccccc} X_5 & -5 & -3 & -1 & 1 & 3 & 5 \\ \hline P & \dfrac{1}{32} & \dfrac{5}{32} & \dfrac{10}{32} & \dfrac{10}{32} & \dfrac{5}{32} & \dfrac{1}{32} \end{array} $$
$$ E(X_5)=0,\qquad V(X_5)=5 $$
(2)
$$ \frac{1}{16} $$
(3)
$$ E(X_1)=2p-1,\qquad V(X_1)=4p(1-p) $$
$$ E(X_n)=n(2p-1),\qquad V(X_n)=4np(1-p) $$
(4)
$$ 0.54592 \leqq p \leqq 0.73408 $$
すなわち、小数第3位までで
$$ 0.546 \leqq p \leqq 0.734 $$
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