東京大学 1968年 文系 第1問 解説

方針・初手
点 $P$ に対する条件 $\angle APB \le \frac{3\pi}{4}$ の幾何学的な意味を考える。線分 $AB$ を見込む角が一定以下であるという条件は、円周角の定理とその逆により、線分 $AB$ を弦とする特定の円の外部(または境界)に点 $P$ が存在することを示す。 この円の中心と半径を特定し、正方形から除外される領域(弓形)の面積を求める。さらに、4辺それぞれに対して除外される領域が互いに重ならないことを証明したうえで、全体の面積から引くという手順を踏む。
解法1
正方形の1辺の長さは $1$ である。点 $P$ が正方形の内部にあるとき、条件 $\angle APB \le \frac{3\pi}{4}$ が表す領域について考える。
線分 $AB$ を弦とし、弦に対する円周角が $\frac{3\pi}{4}$ となる円を $C_1$ とする。 円 $C_1$ の半径を $R$ とすると、正弦定理より
$$ 2R = \frac{AB}{\sin\frac{3\pi}{4}} = \frac{1}{\frac{1}{\sqrt{2}}} = \sqrt{2} $$
となり、$R = \frac{1}{\sqrt{2}}$ である。 この円弧に対する中心角は $2 \times \left(\pi - \frac{3\pi}{4}\right) = \frac{\pi}{2}$ となる。円周角が鈍角であるため、円 $C_1$ の中心 $O_1$ は、直線 $AB$ に関して正方形の内部とは反対側(正方形の外部)に存在する。 正方形の内部において、$\angle APB \le \frac{3\pi}{4}$ を満たす点 $P$ の領域は、円 $C_1$ の外部および境界である。したがって、条件を満たさない(除外される)領域は、弦 $AB$ と円 $C_1$ の劣弧で囲まれた弓形の部分となる。
この弓形の面積 $S$ は、中心角 $\frac{\pi}{2}$ の扇形 $O_1AB$ の面積から、直角二等辺三角形 $O_1AB$ の面積を引くことで求められる。
$$ S = \frac{1}{2} R^2 \cdot \frac{\pi}{2} - \frac{1}{2} R^2 \sin\frac{\pi}{2} = \frac{1}{2} \left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^2 \frac{\pi}{2} - \frac{1}{2} \left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^2 \cdot 1 = \frac{\pi}{8} - \frac{1}{4} $$
他の辺 $BC, CD, DA$ についても同様に、除外される弓形領域が存在し、その面積はすべて $S$ である。
次に、これら4つの弓形領域が互いに重ならないことを示す。 正方形 $ABCD$ の中心を $O$ とする。 $OA = OB = \frac{1}{\sqrt{2}}$ であり、$OA^2 + OB^2 = 1 = AB^2$ が成り立つため、$\triangle OAB$ は $\angle AOB = \frac{\pi}{2}$ の直角二等辺三角形である。 円 $C_1$ の中心を $O_1$ とすると、$O_1A = O_1B = \frac{1}{\sqrt{2}}$ かつ $\angle AO_1B = \frac{\pi}{2}$ である。 したがって、四角形 $OAO_1B$ はすべての辺の長さが $\frac{1}{\sqrt{2}}$ で内角が $\frac{\pi}{2}$ の正方形となる。 このとき、半径 $O_1A$ は線分 $OA$ と直交するため、$OA$ は点 $A$ における円 $C_1$ の接線である。同様に、$OB$ は点 $B$ における円 $C_1$ の接線である。 よって、円 $C_1$ の弧 $AB$(正方形内部の側)は、2つの接線 $OA, OB$ に挟まれた領域、すなわち $\triangle OAB$ の内部に含まれる。 対称性より、辺 $BC, CD, DA$ に対する弓形もそれぞれ $\triangle OBC, \triangle OCD, \triangle ODA$ の内部に含まれるため、境界(対角線上の点)を共有するのみで、内部で互いに重なることはない。
以上より、求める点 $P$ の動く範囲の面積は、正方形全体の面積から4つの弓形の面積を引いたものとなる。
$$ 1^2 - 4S = 1 - 4\left(\frac{\pi}{8} - \frac{1}{4}\right) = 1 - \frac{\pi}{2} + 1 = 2 - \frac{\pi}{2} $$
解法2
座標平面を設定して代数的に解く。 正方形 $ABCD$ の中心を原点 $O(0,0)$ とし、頂点の座標を $A\left(-\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right), B\left(-\frac{1}{2}, -\frac{1}{2}\right), C\left(\frac{1}{2}, -\frac{1}{2}\right), D\left(\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right)$ とする。 点 $P(x,y)$ は正方形の内部にあるため、$-\frac{1}{2} < x < \frac{1}{2}, -\frac{1}{2} < y < \frac{1}{2}$ を満たす。
条件 $\angle APB \le \frac{3\pi}{4}$ について考える。 線分 $AB$ を弦とし、円周角が $\frac{3\pi}{4}$ となる円を $C_1$ とする。この円弧に対する中心角は $\frac{\pi}{2}$ であり、半径を $R$ とすると $2R^2 = AB^2 = 1$ より $R = \frac{1}{\sqrt{2}}$ である。 弦 $AB$ は直線 $x = -\frac{1}{2}$ 上にあり、円 $C_1$ の中心は弦の垂直二等分線($x$ 軸)上にある。 弦の中点 $\left(-\frac{1}{2}, 0\right)$ から中心までの距離は $\sqrt{R^2 - \left(\frac{1}{2}\right)^2} = \frac{1}{2}$ であり、中心は正方形の外部にあるため、その座標は $(-1, 0)$ となる。 したがって、円 $C_1$ の方程式は
$$ (x+1)^2 + y^2 = \frac{1}{2} $$
である。正方形の内部($x > -\frac{1}{2}$)において、$\angle APB \le \frac{3\pi}{4}$ を満たす点 $P$ の条件は、円 $C_1$ の外部および境界に存在すること、すなわち
$$ (x+1)^2 + y^2 \ge \frac{1}{2} $$
を満たすことである。除外される領域(弓形)は $(x+1)^2 + y^2 < \frac{1}{2}$ かつ $x > -\frac{1}{2}$ である。
この除外領域が対角線 $y=x$ および $y=-x$ と交わる点を確認する。 円 $C_1$ の方程式に $y=x$ を代入すると、
$$ (x+1)^2 + x^2 = \frac{1}{2} \implies 2x^2 + 2x + 1 = \frac{1}{2} \implies 4x^2 + 4x + 1 = 0 \implies (2x+1)^2 = 0 $$
となり、$x = -\frac{1}{2}$ を重解に持つ。すなわち、円 $C_1$ は直線 $y=x$ と点 $B\left(-\frac{1}{2}, -\frac{1}{2}\right)$ で接する。 同様に、$y=-x$ を代入しても $x = -\frac{1}{2}$ が重解となり、点 $A\left(-\frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right)$ で接することが分かる。 これにより、除外される弓形領域は直線 $y=x$ と $y=-x$ によって囲まれた領域($x \le -|y|$ の領域)に完全に含まれる。
対称性から、他の辺 $BC, CD, DA$ に対して除外される領域も同様の方程式で表され、それぞれ対角線で区切られた4つの三角形領域に完全に収まる。ゆえに、4つの除外領域は内部で互いに重ならない。
1つの弓形の面積 $S$ は、中心角 $\frac{\pi}{2}$ の扇形から直角二等辺三角形を引いたものであり、
$$ S = \frac{1}{2} \cdot \left(\frac{1}{\sqrt{2}}\right)^2 \cdot \frac{\pi}{2} - \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{\sqrt{2}} \cdot \frac{1}{\sqrt{2}} = \frac{\pi}{8} - \frac{1}{4} $$
である。
求める面積は、正方形の面積から4つの弓形の面積を引いたものなので、
$$ 1^2 - 4S = 1 - 4\left(\frac{\pi}{8} - \frac{1}{4}\right) = 2 - \frac{\pi}{2} $$
となる。
解説
「ある線分を見込む角が一定」という条件から円弧を思い浮かべること(円周角の定理の逆)が最初の重要なステップである。見込む角が鈍角($\frac{3\pi}{4}$)であるため、円の中心が線分に対して領域の反対側に来ることに注意して作図する。 最大のポイントは、「4つの辺に対する弓形領域が互いに重ならないか」という確認である。図を書いて直感的に重ならないと判断して計算を進めてしまうと、論理の飛躍として減点される可能性がある。解法1のように「円の接線が正方形の対角線に一致する」という幾何的性質に気づくか、解法2のように座標を用いて接線を代数的に導出することで、厳密な答案となる。
答え
$$ 2 - \frac{\pi}{2} $$
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