数学A 期待値 問題 8 解説

方針・初手
各回の操作は、3個の箱のうち2個を選び、その中の球を交換する操作である。2個の箱の選び方は3通りであり、それぞれ等確率で選ばれると考える。
この問題では、各球が自分と同じ色の箱に入っているかどうかを見る。特に、赤球に注目すると、赤球が赤箱にあるかどうかだけで閉じた漸化式が立つ。
解法1
(1) 赤球が赤箱に入っている確率を求める。
$k$回操作後に赤球が赤箱に入っている確率を $p_k$ とする。初期状態では $p_0=1$ である。
$k$回操作後の状態から、次の1回の操作で赤球が赤箱に入る確率を考える。
赤球がすでに赤箱に入っているとき、次の操作後も赤箱に残るのは、赤箱を含まない2箱、すなわち青箱と黄箱を選ぶ場合だけである。したがって、その確率は $\dfrac{1}{3}$ である。
一方、赤球が赤箱に入っていないとき、赤球は青箱または黄箱に入っている。このとき、赤箱と赤球の入っている箱を選んで交換すれば、赤球は赤箱に入る。このような選び方は3通りのうち1通りなので、確率は $\dfrac{1}{3}$ である。
よって
$$ \begin{aligned} p_{k+1} &= \frac{1}{3}p_k+\frac{1}{3}(1-p_k) \\ \frac{1}{3} \end{aligned} $$
である。したがって、$n\geqq 1$ に対して
$$ p_n=\frac{1}{3} $$
となる。
(2) 色が一致している箱の個数の期待値を求める。
$n$回操作後に、赤箱・青箱・黄箱についてそれぞれ色が一致しているかを表す確率変数を
$$ I_R,\ I_B,\ I_Y $$
とする。ただし、一致していれば $1$、一致していなければ $0$ とする。
色が一致している箱の個数を $X$ とすると
$$ X=I_R+I_B+I_Y $$
である。
(1) と同様の議論は青球・黄球についても成り立つ。したがって、$n\geqq 1$ に対して
$$ E(I_R)=E(I_B)=E(I_Y)=\frac{1}{3} $$
である。期待値の線形性より
$$ \begin{aligned} E(X) &= E(I_R)+E(I_B)+E(I_Y) \\ \frac{1}{3}+\frac{1}{3}+\frac{1}{3} \\ 1 \end{aligned} $$
である。
よって、求める期待値は $1$ である。
(3) 赤球が赤箱に入っている事象と、青球が青箱に入っている事象の独立性を調べる。
赤球が赤箱に入っている事象を $A$、青球が青箱に入っている事象を $B$ とする。(1) より
$$ P(A)=P(B)=\frac{1}{3} $$
である。したがって、もし $A$ と $B$ が独立ならば
$$ P(A\cap B)=P(A)P(B)=\frac{1}{9} $$
でなければならない。
ここで、赤球が赤箱に入り、青球が青箱に入っていれば、残った黄球も黄箱に入る。つまり
$$ A\cap B $$
は、3個すべての箱で色が一致している事象と同じである。
1回の操作は2個の球の交換であるから、操作を1回行うごとに配置の偶奇が入れ替わる。初期状態はすべて一致している配置である。
(i) $n$ が奇数の場合
奇数回の交換後には、初期状態と同じ配置には戻れない。したがって
$$ P(A\cap B)=0 $$
である。一方、
$$ P(A)P(B)=\frac{1}{9} $$
だから、
$$ P(A\cap B)\ne P(A)P(B) $$
である。
(ii) $n$ が偶数の場合
$n\geqq 1$ で偶数だから、$n\geqq 2$ である。このとき、配置は偶数回の交換で得られる配置である。
3個の球の配置において、偶数回の交換で得られる配置は、すべて一致している配置か、3個すべてがずれている配置である。したがって、色が一致している箱の個数 $X$ は
$$ X= \begin{cases} 3 & \text{すべて一致しているとき},\\ 0 & \text{すべて一致していないとき} \end{cases} $$
である。
すべて一致している確率は $P(A\cap B)$ であるから、(2) の $E(X)=1$ を用いると
$$ E(X)=3P(A\cap B) $$
である。よって
$$ 3P(A\cap B)=1 $$
より
$$ P(A\cap B)=\frac{1}{3} $$
である。一方、
$$ P(A)P(B)=\frac{1}{9} $$
だから、この場合も
$$ P(A\cap B)\ne P(A)P(B) $$
である。
以上より、$n$ の偶奇によらず、2つの事象は独立ではない。
解説
この問題では、配置全体を追うよりも、まず1つの球に注目するのが有効である。赤球が赤箱にあるかどうかは、次の1回で赤箱に入る確率が現在の状態によらず常に $\dfrac{1}{3}$ になるため、(1) はすぐに求まる。
(2) は期待値の線形性を使う典型問題である。箱の個数そのものの分布を求める必要はなく、各箱について一致する確率だけを足せばよい。
(3) では、個々の確率がどちらも $\dfrac{1}{3}$ であっても、同時に起こる確率は $\dfrac{1}{9}$ にはならない点が重要である。赤と青がともに一致すれば、自動的に黄も一致するため、2つの事象には強い関係がある。
答え
(1)
$$ \frac{1}{3} $$
(2)
$$ 1 $$
(3)
独立ではない。 実際、
$$ P(A)=P(B)=\frac{1}{3} $$
であるが、$P(A\cap B)$ は
$$ P(A\cap B)= \begin{cases} 0 & (n \text{ が奇数}),\\ \frac{1}{3} & (n \text{ が偶数}) \end{cases} $$
となり、いずれの場合も
$$ P(A\cap B)\ne \frac{1}{9}=P(A)P(B) $$
である。
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