京都大学 1982年 文系 第1問 解説

方針・初手
空間図形の切り口の面積を求める定番問題である。 (1) は平面が座標軸と交わる点を求めて三角形の面積を計算するだけである。 (2) は $t$ の値によって切り口の形(三角形、六角形、三角形)が変わるため、場合分けが必要である。全体(領域 $A$)の切り口から、立方体 $C$ の外にはみ出した部分の面積を引くという図形的な引き算を用いると、煩雑な座標計算を回避して見通しよく面積を求めることができる。
解法1
(1) 平面 $x+y+z=t$ と $x$ 軸、$y$ 軸、$z$ 軸との交点は、それぞれ $(t,0,0), (0,t,0), (0,0,t)$ である。 領域 $A$($x \geqq 0, y \geqq 0, z \geqq 0$)による切り口は、これら3点を頂点とする正三角形になる。 この正三角形の1辺の長さは、原点からの距離を用いて $\sqrt{t^2+t^2+0} = \sqrt{2}t$ となる。 したがって、その面積 $T(t)$ は
$$ T(t) = \frac{1}{2} \cdot (\sqrt{2}t) \cdot (\sqrt{2}t) \cdot \sin 60^\circ = \frac{\sqrt{3}}{4} (\sqrt{2}t)^2 = \frac{\sqrt{3}}{2}t^2 $$
である。
(2) 領域 $A$ の切り口の正三角形から、立方体 $C$ ($0 \leqq x \leqq 1, 0 \leqq y \leqq 1, 0 \leqq z \leqq 1$) の外にはみ出した部分を切り落としたものが $C$ の切り口である。 $t$ の値によって場合分けをして $S(t)$ を求める。
(i) $0 < t \leqq 1$ のとき 平面上の点は $x+y+z=t$ を満たし、$x \geqq 0, y \geqq 0, z \geqq 0$ よりおのずと $x \leqq t \leqq 1$ となる($y, z$ についても同様)。 よって切り口はすべて立方体 $C$ に含まれるため、
$$ S(t) = T(t) = \frac{\sqrt{3}}{2}t^2 $$
この範囲において $S(t)$ は単調増加であり、最大値は $t=1$ のとき $\frac{\sqrt{3}}{2}$ である。
(ii) $1 < t \leqq 2$ のとき $A$ の切り口である正三角形の3つの頂点付近が、それぞれ $x>1, y>1, z>1$ の領域にはみ出す。 例えば $x>1$ の領域にはみ出す部分は、平面 $x=1$ によって切り取られる。 ここで $x' = x-1$ とおくと、$x'>0, y \geqq 0, z \geqq 0$ かつ $x'+y+z = t-1$ となる。これは一辺の長さが $\sqrt{2}(t-1)$ の正三角形であり、その面積は $T(t-1)$ に等しい。 $1 < t \leqq 2$ においては $t-1 \leqq 1$ である。もし2つのはみ出し部分(例えば $x>1$ と $y>1$)が重なるとすると $x+y+z > 2$ となり、$z \geqq 0$ を考慮すると $t>2$ が必要になるため、この区間では3箇所のはみ出し部分が互いに重なることはない。 したがって、$S(t)$ は全体の正三角形から3つの小さな正三角形を引いたもの(六角形)になり、
$$ S(t) = T(t) - 3T(t-1) $$
$$ S(t) = \frac{\sqrt{3}}{2}t^2 - 3 \cdot \frac{\sqrt{3}}{2}(t-1)^2 = \frac{\sqrt{3}}{2} \{ t^2 - 3(t^2-2t+1) \} = \frac{\sqrt{3}}{2}(-2t^2+6t-3) $$
これを平方完成すると、
$$ S(t) = \frac{\sqrt{3}}{2} \left\{ -2 \left( t - \frac{3}{2} \right)^2 + \frac{9}{2} - 3 \right\} = -\sqrt{3} \left( t - \frac{3}{2} \right)^2 + \frac{3\sqrt{3}}{4} $$
$t = \frac{3}{2}$ は $1 < t \leqq 2$ の範囲に含まれるため、この区間における最大値は $t = \frac{3}{2}$ のとき $\frac{3\sqrt{3}}{4}$ である。
(iii) $2 < t < 3$ のとき 立方体 $C$ の中心 $\left(\frac{1}{2}, \frac{1}{2}, \frac{1}{2}\right)$ に関する点対称移動を考える。 点 $(x,y,z)$ をこの中心に関して対称移動した点を $(X,Y,Z)$ とすると、$x = 1-X, y = 1-Y, z = 1-Z$ である。 平面 $x+y+z=t$ は、この変換により $(1-X)+(1-Y)+(1-Z)=t \iff X+Y+Z = 3-t$ に移る。 立方体 $C$ はこの対称移動で不変であるから、平面 $x+y+z=t$ による $C$ の切り口は、平面 $X+Y+Z=3-t$ による $C$ の切り口と合同である。 $2 < t < 3$ のとき $0 < 3-t < 1$ であるから、(i) の結果を用いて
$$ S(t) = S(3-t) = \frac{\sqrt{3}}{2}(3-t)^2 $$
この区間で $S(t)$ は単調減少であるため、最大値は持たない。(極限として $t \to 2+0$ で $\frac{\sqrt{3}}{2}$ に近づく)
以上 (i), (ii), (iii) より、$S(t)$ 全体を通しての最大値は $t = \frac{3}{2}$ のときの $\frac{3\sqrt{3}}{4}$ である。
解説
立方体を平面で切断したときの切り口の面積の推移を追う、大学入試における空間図形の極めて標準的な問題である。 切り口の頂点の座標を個別に求めて多角形の面積を計算することも可能であるが、本解法のように「基本となる大きな図形から、はみ出した部分(相似な小さな図形)を引く」という包除原理の考え方ができると、計算量が激減しミスも少なくなる。 また、立方体の中心に関する対称性を利用して $t > 2$ の区間の計算を省略するテクニックも、空間図形を扱う上での強力な武器になる。
答え
(1)
$$ T(t) = \frac{\sqrt{3}}{2}t^2 $$
(2)
$$ \frac{3\sqrt{3}}{4} $$
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