東京工業大学 1985年 理系 第2問 解説

方針・初手
直方体の中心に関する点対称性を利用し、平面によって切り取られる領域の体積の性質を把握する。
平面 $x+\frac{y}{2}+\frac{z}{3}=t$ と各座標軸の交点は $(t, 0, 0), (0, 2t, 0), (0, 0, 3t)$ となる。直方体 $V$ の体積は $1 \times 2 \times 3 = 6$ であるため、切り取られる領域の体積 $v(t)$ を求めたあと、対称性から $v(t) + v(3-t) = 6$ となることを利用して、全体の $f(t)$ を構成する。
解法1
(1)
直方体 $V$ は、不等式 $0 \le x \le 1$、$0 \le y \le 2$、$0 \le z \le 3$ が表す領域である。
平面 $x+\frac{y}{2}+\frac{z}{3}=t$ で分割された領域のうち、$x+\frac{y}{2}+\frac{z}{3} \le t$ を満たす部分の体積を $v(t)$ とする。
ここで、$x = 1-X$、$y = 2-Y$、$z = 3-Z$ とおくと、点 $(x, y, z)$ が $V$ 全体を動くとき、点 $(X, Y, Z)$ も $V$ 全体を動く。このとき、不等式 $x+\frac{y}{2}+\frac{z}{3} \ge t$ は次のように変形できる。
$$ (1-X) + \frac{2-Y}{2} + \frac{3-Z}{3} \ge t $$
$$ 3 - \left( X + \frac{Y}{2} + \frac{Z}{3} \right) \ge t $$
$$ X + \frac{Y}{2} + \frac{Z}{3} \le 3-t $$
したがって、$x+\frac{y}{2}+\frac{z}{3} \ge t$ の領域の体積は $v(3-t)$ と等しい。
直方体 $V$ の体積は $1 \times 2 \times 3 = 6$ であるから、2つに分割された領域の体積の和について次が成り立つ。
$$ v(t) + v(3-t) = 6 $$
関数 $v(t)$ は $t$ について単調増加であるから、$v\left(\frac{3}{2}\right) = 3$ である。小さいほうの体積 $f(t)$ は $f(t) = \min(v(t), 6-v(t)) = \min(v(t), v(3-t))$ となるため、
$$ f(t) = \begin{cases} v(t) & \left(0 < t \le \frac{3}{2}\right) \\ v(3-t) & \left(\frac{3}{2} < t < 3\right) \end{cases} $$
と表せる。したがって、$0 < t \le \frac{3}{2}$ における $v(t)$ を求めればよい。
$x \ge 0$、$y \ge 0$、$z \ge 0$ かつ $x+\frac{y}{2}+\frac{z}{3} \le t$ が定める四面体 $T_t$ の体積は、
$$ \frac{1}{6} \cdot t \cdot 2t \cdot 3t = t^3 $$
である。
(i)
$0 < t \le 1$ のとき
$T_t$ の各頂点は $x \le 1$、$y \le 2$、$z \le 3$ を満たすため、$T_t$ は完全に $V$ に含まれる。よって、
$$ v(t) = t^3 $$
(ii)
$1 < t \le \frac{3}{2}$ のとき
$T_t$ が $V$ の外側にはみ出す部分は、$x > 1$、$y > 2$、$z > 3$ の3つの領域である。 $x > 1$ かつ $T_t$ に含まれる領域は、$x = 1+x'$ とおくと $x' > 0$ かつ $x'+\frac{y}{2}+\frac{z}{3} \le t-1$ を満たす四面体となる。これは $T_{t-1}$ と合同であり、その体積は $(t-1)^3$ である。 同様に、$y > 2$ の部分、$z > 3$ の部分もそれぞれ体積 $(t-1)^3$ の四面体となる。
ここで、$t \le \frac{3}{2}$ であるから、例えば $x \ge 1$ かつ $y \ge 2$ のとき、
$$ x+\frac{y}{2}+\frac{z}{3} \ge 1 + \frac{2}{2} + 0 = 2 > t $$
となり、領域内に含まれない。他の2領域間の重複も同様に生じないため、はみ出す3つの四面体は互いに重ならない。 したがって、全体の四面体からこれら3つを取り除いて、
$$ v(t) = t^3 - 3(t-1)^3 = -2t^3 + 9t^2 - 9t + 3 $$
以上より、$f(t)$ を構成する。
(iii)
$\frac{3}{2} < t \le 2$ のとき
$1 \le 3-t < \frac{3}{2}$ であるから、(ii) の結果を用いて、
$$ f(t) = v(3-t) = -2(3-t)^3 + 9(3-t)^2 - 9(3-t) + 3 $$
これを展開して整理すると、
$$ f(t) = 2t^3 - 9t^2 + 9t + 3 $$
(iv)
$2 < t < 3$ のとき
$0 < 3-t < 1$ であるから、(i) の結果を用いて、
$$ f(t) = v(3-t) = (3-t)^3 $$
(2)
(1) で求めた $f(t)$ を各区間で微分すると、次のようになる。
$$ f'(t) = \begin{cases} 3t^2 & (0 < t < 1) \\ -6t^2 + 18t - 9 & \left(1 < t < \frac{3}{2}\right) \\ 6t^2 - 18t + 9 & \left(\frac{3}{2} < t < 2\right) \end{cases} $$
$t=1$ における微分可能性について、左右の極限を調べる。
$$ \lim_{t \to 1-0} f'(t) = 3(1)^2 = 3 $$
$$ \lim_{t \to 1+0} f'(t) = -6(1)^2 + 18(1) - 9 = 3 $$
左側微分係数と右側微分係数が一致するため、$f(t)$ は $t=1$ で微分可能である。
次に、$t=\frac{3}{2}$ における微分可能性について調べる。
$$ \lim_{t \to \frac{3}{2}-0} f'(t) = -6\left(\frac{3}{2}\right)^2 + 18\left(\frac{3}{2}\right) - 9 = -\frac{27}{2} + 27 - 9 = \frac{9}{2} $$
$$ \lim_{t \to \frac{3}{2}+0} f'(t) = 6\left(\frac{3}{2}\right)^2 - 18\left(\frac{3}{2}\right) + 9 = \frac{27}{2} - 27 + 9 = -\frac{9}{2} $$
左側微分係数と右側微分係数が一致しないため、$f(t)$ は $t=\frac{3}{2}$ で微分可能ではない。
解説
空間図形の切断による体積計算の典型問題であるが、愚直に積分を実行しようとすると、積分区間や断面の多角形の形状(三角形、四角形、六角形など)による場合分けが非常に煩雑になる。
このような問題では、図形の対称性(点対称性)に着目し、全体の体積から引く「余事象」の考え方を導入することがポイントである。また、切断面と直方体の頂点の関係から、はみ出す部分が互いに独立した相似な四面体になることに気づけば、計算量を大幅に削減できる。
(2) の微分の問題では、$t=1$ で関数が滑らかに接続していることが数式として確認できるが、$t=\frac{3}{2}$ においては「小さいほう」を選択する $\min$ 関数の影響(絶対値をつける操作と同様)で、体積の増減の傾きの符号が反転するため、微分不可能となる。
答え
(1)
$$ f(t) = \begin{cases} t^3 & (0 < t \le 1) \\ -2t^3 + 9t^2 - 9t + 3 & \left(1 < t \le \frac{3}{2}\right) \\ 2t^3 - 9t^2 + 9t + 3 & \left(\frac{3}{2} < t \le 2\right) \\ (3-t)^3 & (2 < t < 3) \end{cases} $$
(※境界の等号はいずれの区間に含めてもよい)
(2) $t=1$ で微分可能である。 $t=\frac{3}{2}$ で微分可能でない。
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