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東北大学 1962年 理系 第2問 解説

数学1/図形計量数学A/図形の性質テーマ/図形総合テーマ/軌跡・領域
東北大学 1962年 理系 第2問 解説

方針・初手

(1) は、正三角形の辺の長さが等しいことと、角度が $60^\circ$ であることを利用して三角形の合同を示し、残りの辺の長さが一致することを導きます。問題文の指示通りに点 $D$ をとり、$\triangle ABD$ と $\triangle CBP$ の合同を示すのが定石です。

(2) は、「鋭角三角形である」という条件を「3つの内角がすべて $90^\circ$ より小さい」と言い換えます。(1) で示した合同関係と、正三角形の性質を用いて、$\triangle APD$ の3つの内角を、点 $P$ から $\triangle ABC$ の各頂点を見込む角($\angle APB$, $\angle BPC$, $\angle CPA$)で表すことが鍵となります。


解法1

(1)

点 $P$ は $\triangle ABC$ の内部にあるため、半直線 $BP$ は $\angle ABC$ の内部を通る。したがって、$0^\circ < \angle ABP < 60^\circ$ である。

$\triangle DBP$ は正三角形であるから $\angle DBP = 60^\circ$ であり、点 $A$ と点 $D$ が直線 $BP$ に関して同じ側にあることから、半直線 $BD$ は半直線 $BP$ から見て半直線 $BA$ 側(またはさらに外側)にある。 ゆえに、 $$ \angle ABD = \angle DBP - \angle ABP = 60^\circ - \angle ABP $$ 一方、$\triangle ABC$ も正三角形であり $\angle ABC = 60^\circ$ であるから、 $$ \angle CBP = \angle ABC - \angle ABP = 60^\circ - \angle ABP $$ よって、$\angle ABD = \angle CBP$ が成り立つ。

$\triangle ABD$ と $\triangle CBP$ において、 $$ \begin{aligned} AB &= CB \quad \text{(正三角形 $ABC$ の辺)} \\ BD &= BP \quad \text{(正三角形 $DBP$ の辺)} \\ \angle ABD &= \angle CBP \quad \text{(上で示した通り)} \end{aligned} $$ 2辺とその間の角がそれぞれ等しいから、$\triangle ABD \equiv \triangle CBP$ である。

合同な図形の対応する辺の長さは等しいから、$AD = CP$ が成り立つ。 したがって、$\triangle APD$ の3辺の長さは、 $$ \begin{aligned} AP &= PA \\ PD &= PB \quad \text{(正三角形 $DBP$ の辺)} \\ DA &= PC \quad \text{(上で示した通り)} \end{aligned} $$ となり、$\triangle APD$ は $PA, PB, PC$ を3辺とする題意の三角形である。(証明終)

(2)

$\triangle APD$ が鋭角三角形となるための条件は、3つの内角 $\angle APD, \angle PDA, \angle PAD$ がすべて $90^\circ$ 未満となることである。

点 $P$ は $\triangle ABC$ の内部にあるため、$\angle APB > 60^\circ, \angle BPC > 60^\circ, \angle CPA > 60^\circ$ である。

(i) $\angle APD$ について 点 $A$ と点 $D$ は直線 $BP$ に関して同じ側にあり、$\angle DPB = 60^\circ < \angle APB$ であるから、半直線 $PD$ は $\angle APB$ の内部にある。 したがって、 $$ \angle APD = \angle APB - \angle DPB = \angle APB - 60^\circ $$ これが鋭角となる条件は、$\angle APB - 60^\circ < 90^\circ$ すなわち $\angle APB < 150^\circ$。

(ii) $\angle PDA$ について (1) より $\triangle ABD \equiv \triangle CBP$ であるから、$\angle BDA = \angle BPC > 60^\circ$。 $\angle BDP = 60^\circ < \angle BDA$ であるから、半直線 $DP$ は $\angle BDA$ の内部にある。 したがって、 $$ \angle PDA = \angle BDA - \angle BDP = \angle BPC - 60^\circ $$ これが鋭角となる条件は、$\angle BPC - 60^\circ < 90^\circ$ すなわち $\angle BPC < 150^\circ$。

(iii) $\angle PAD$ について $\triangle APD$ の内角の和は $180^\circ$ であるから、 $$ \begin{aligned} \angle PAD &= 180^\circ - (\angle APD + \angle PDA) \\ &= 180^\circ - (\angle APB - 60^\circ + \angle BPC - 60^\circ) \\ &= 300^\circ - (\angle APB + \angle BPC) \end{aligned} $$ 点 $P$ の周りの角の和は $360^\circ$ であるから、$\angle APB + \angle BPC = 360^\circ - \angle CPA$。 これを代入すると、 $$ \begin{aligned} \angle PAD &= 300^\circ - (360^\circ - \angle CPA) \\ &= \angle CPA - 60^\circ \end{aligned} $$ これが鋭角となる条件は、$\angle CPA - 60^\circ < 90^\circ$ すなわち $\angle CPA < 150^\circ$。

以上 (i)〜(iii) より、求める条件は $$ \angle APB < 150^\circ \quad \text{かつ} \quad \angle BPC < 150^\circ \quad \text{かつ} \quad \angle CPA < 150^\circ $$ である。

これらの条件を満たす点 $P$ の存在範囲を図示する。 条件 $\angle BPC < 150^\circ$ を考える。 直線 $BC$ に関して点 $A$ と対称な点を $A'$ とすると、$\triangle A'BC$ は正三角形である。 点 $A'$ を中心とする半径 $A'B$ の円において、弧 $BC$ に対する中心角は $\angle BA'C = 60^\circ$ である。円周角の定理より、弦 $BC$ に関して $A'$ と反対側にある弧 $BC$ 上の点から弦 $BC$ を見込む角は $180^\circ - 30^\circ = 150^\circ$ となる。 点 $P$ は $\triangle ABC$ の内部(直線 $BC$ に関して $A'$ と反対側)にあるため、$\angle BPC < 150^\circ$ となる範囲は、この円の外部(境界の円弧より中心側でない領域)である。

直線 $CA$ に関して点 $B$ と対称な点を $B'$、直線 $AB$ に関して点 $C$ と対称な点を $C'$ とし、他の2条件についても同様に考える。 求める範囲は、$\triangle ABC$ の内部において、 ・点 $A'$ を中心とする半径 $A'B$ の円 ・点 $B'$ を中心とする半径 $B'C$ の円 ・点 $C'$ を中心とする半径 $C'A$ の円 の3つの円の外部の共通部分となる。


解法2

(1) について、複素数平面を用いた別解

点 $B$ を原点とする複素数平面を考える。 $\triangle ABC$ は正三角形であるから、点 $C$ を原点 $B$ の周りに $\frac{\pi}{3}$ だけ回転させた点が $A$ である。すなわち、$A = C e^{i \frac{\pi}{3}}$ と表せる。

また、$\triangle DBP$ は正三角形であり、点 $D$ と点 $A$ は直線 $BP$ に対して同じ側にあるから、点 $P$ を原点 $B$ の周りに $\frac{\pi}{3}$ だけ回転させた点が $D$ となる。すなわち、$D = P e^{i \frac{\pi}{3}}$ である。

このとき、2点 $A, D$ 間のベクトル(複素数の差)を計算すると、 $$ A - D = C e^{i \frac{\pi}{3}} - P e^{i \frac{\pi}{3}} = (C - P) e^{i \frac{\pi}{3}} $$ 両辺の絶対値をとると、 $$ |A - D| = |C - P| \left| e^{i \frac{\pi}{3}} \right| $$ $\left| e^{i \frac{\pi}{3}} \right| = 1$ より、$AD = CP$ が成り立つ。 したがって、$\triangle APD$ の3辺の長さは $AP=PA$, $PD=PB$, $DA=PC$ となり、題意の三角形であることが示された。


解説

本問は、「ポンペイの定理(Pompeiu's theorem)」の背景となる有名な構図を題材にしています。正三角形とその平面上の任意の点 $P$ に対して、$PA, PB, PC$ を3辺とする三角形が存在するという事実があり、(1) はその証明の誘導となっています。

(2) では、代数的に $a^2+b^2>c^2$ のような余弦定理ベースの不等式を処理しても解けますが、(1) での図形的考察(角の和と差の関係)をうまく使い回すことで、内角の評価に直接持ち込むことができます。円周角が $150^\circ$ になる円弧の作図は、数学IIの軌跡や領域でも頻出のテーマです。


答え

(1) (解法1または解法2を参照)

(2) 点 $P$ が存在しなければならない範囲は、次のように図示される領域である。

  1. 正三角形 $ABC$ の外部に、各辺を共有する正三角形 $A'BC$, $AB'C$, $ABC'$ を作る。
  2. 点 $A'$ を中心とする半径 $A'B$ の円弧($\triangle ABC$ の内部を通るもの)、同様に点 $B'$ を中心とする半径 $B'C$ の円弧、点 $C'$ を中心とする半径 $C'A$ の円弧を描く。
  3. 求める範囲は、正三角形 $ABC$ の内部のうち、これら3つの円弧に囲まれた中心部の領域である。 (※境界線である3つの円弧上の点、および正三角形の辺上の点はすべて含まない)

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