数学B 数列の和 問題 60 解説

方針・初手
基金は1年で利息により $(1+r)$ 倍になる。したがって、将来の給付額 $X$ 万円を設立時点の金額に直すには、1年後なら $(1+r)$ で、2年後なら $(1+r)^2$ で割ればよい。
設立時に第1回の給付をする場合は、給付直後の残高から考えると漸化式が自然に立つ。
解法1
(1)
設立時からちょうど1年後に第1回目の給付をする。設立時の基金を $Y$ 万円とすると、1年後には利息がついて
$$ (1+r)Y $$
万円になる。
これで $X$ 万円を給付できればよいから、
$$ (1+r)Y \geq X $$
である。したがって、必要な設立時の基金の最小額は
$$ Y=\frac{X}{1+r} $$
万円である。よって、
$$ \boxed{\text{ア}=\frac{X}{1+r}} $$
である。
次に、1年後、2年後、$\cdots$、$n$ 年後にそれぞれ $X$ 万円を給付する場合を考える。設立時点で必要な金額は、それぞれの給付額の現在価値の和である。
1年後の $X$ 万円に必要な設立時の金額は $\dfrac{X}{1+r}$ 万円、2年後の $X$ 万円に必要な設立時の金額は $\dfrac{X}{(1+r)^2}$ 万円である。
同様にして、$n$ 年後の $X$ 万円に必要な設立時の金額は $\dfrac{X}{(1+r)^n}$ 万円である。よって、必要な設立時の基金は
$$ \frac{X}{1+r}+\frac{X}{(1+r)^2} $$
である。これは初項 $\dfrac{X}{1+r}$、公比 $\dfrac{1}{1+r}$ の等比数列の和だから、
$$ \begin{aligned} \frac{X}{1+r}+\frac{X}{(1+r)^2} &=\frac{X((1+r)+1)}{(1+r)^2}\\ &=\frac{X(2+r)}{(1+r)^2} \end{aligned} $$
となる。したがって、
$$ \boxed{\text{イ}=\frac{X(2+r)}{(1+r)^2}} $$
である。
(2)
(a)
設立時に第1回目の給付をするので、初回の $X$ 万円は利息を待たずに必要である。
合計10回の給付をする場合、給付の時点は
$$ 0,\ 1,\ 2,\ \cdots,\ 9 $$
年後である。したがって、必要な設立時の基金は
$$ X+\frac{X}{1+r}+\frac{X}{(1+r)^2}+\cdots+\frac{X}{(1+r)^9} $$
である。
これは初項 $X$、公比 $\dfrac{1}{1+r}$、項数10の等比数列の和なので、
$$ \begin{aligned} X+\frac{X}{1+r}+\frac{X}{(1+r)^2}+\cdots+\frac{X}{(1+r)^9} &=\frac{X\left\{1-\left(\dfrac{1}{1+r}\right)^{10}\right\}}{1-\dfrac{1}{1+r}}\\ &=\frac{X(1+r){1-(1+r)^{-10}}}{r} \end{aligned} $$
である。よって、
$$ \boxed{\text{ウ}=\frac{X(1+r){1-(1+r)^{-10}}}{r}} $$
である。
(b)
設立時の基金を $Y$ 万円とする。第1回目の給付は設立時に行うので、第1回目の給付後の基金残高は
$$ a_1=Y-X $$
である。よって、
$$ \boxed{\text{カ}=Y-X} $$
である。
第 $n$ 回目の給付後の基金残高を $a_n$ 万円とする。次の年には利息がついて $(1+r)a_n$ 万円になり、そこから第 $n+1$ 回目の給付として $X$ 万円を支払う。
したがって、
$$ a_{n+1}=(1+r)a_n-X $$
である。よって、
$$ \boxed{\text{エ}=1+r},\qquad \boxed{\text{オ}=X} $$
である。
この漸化式を解く。$a_{n+1}=(1+r)a_n-X$ より、順に代入すると
$$ \begin{aligned} a_n &=(1+r)^{n-1}Y-X{(1+r)^{n-1}+(1+r)^{n-2}+\cdots+1}\\ &=(1+r)^{n-1}Y-X\cdot \frac{(1+r)^n-1}{r} \end{aligned} $$
である。したがって、
$$ \boxed{\text{キ}=(1+r)^{n-1}Y-\frac{X{(1+r)^n-1}}{r}} $$
である。
第 $n$ 回目の給付をもって残金を残さずに奨学金の給付を終えるには、第 $n$ 回目の給付後の残高が $0$ であればよい。すなわち、
$$ a_n=0 $$
とする。
よって、
$$ (1+r)^{n-1}Y-\frac{X{(1+r)^n-1}}{r}=0 $$
より、
$$ Y=\frac{X{(1+r)^n-1}}{r(1+r)^{n-1}} $$
である。したがって、
$$ \boxed{\text{ク}=\frac{X{(1+r)^n-1}}{r(1+r)^{n-1}}} $$
である。
解説
この問題の中心は、将来の給付額を設立時点の金額に直す考え方である。1年で基金が $(1+r)$ 倍になるため、$k$ 年後に $X$ 万円を用意するには、設立時点では $\dfrac{X}{(1+r)^k}$ 万円あればよい。
設立時に第1回目の給付をする場合は、初回分だけは割り引かずにそのまま $X$ 万円必要になる。そこが、1年後から給付する場合との違いである。
また、(2)(b) では「第 $n$ 回目の給付後の残高」を $a_n$ としているため、利息がつくのは $a_n$ から次回給付までの間である。この順序を誤ると、漸化式の形が変わってしまう。
答え
(1)
$$ \text{ア}=\frac{X}{1+r} $$
$$ \text{イ}=\frac{X(2+r)}{(1+r)^2} $$
(2)(a)
$$ \text{ウ}=\frac{X(1+r){1-(1+r)^{-10}}}{r} $$
(2)(b)
$$ \text{エ}=1+r $$
$$ \text{オ}=X $$
$$ \text{カ}=Y-X $$
$$ \text{キ}=(1+r)^{n-1}Y-\frac{X{(1+r)^n-1}}{r} $$
$$ \text{ク}=\frac{X{(1+r)^n-1}}{r(1+r)^{n-1}} $$
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