ベクトルの公式・定理・考え方
数学Cのベクトルで使う公式・定理・考え方を、大学入試数学で実際に使う場面に絞って整理します。ベクトルは、図形の長さ、角度、平行、垂直、内分点、空間内の位置関係を、式で扱うための道具です。図を見て終わるのではなく、条件をベクトル方程式や内積に翻訳することが重要です。
入試問題解析では、1961年度〜2025年度の数学Cのベクトル676問を分類しています。関連して出やすい分類は、テーマ/図形総合294問、テーマ/空間図形275問、数学2/図形と式221問、数学1/立体図形195問、テーマ/面積・体積139問、テーマ/最大・最小137問です。
ベクトルの和・差・実数倍
点 $A$, $B$ の位置ベクトルをそれぞれ $\vec{a}$, $\vec{b}$ とすると、
$$\vec{AB}=\vec{b}-\vec{a}$$
です。和や実数倍は、向きと大きさを保ったまま平行移動して考えます。
| 操作 | 図形的な意味 |
|---|---|
| $\vec{a}+\vec{b}$ | 2つの移動を続けて行います。 |
| $\vec{a}-\vec{b}$ | $\vec{b}$ の終点から $\vec{a}$ の終点へ向かう差を見ます。 |
| $t\vec{a}$ | 向きは同じまたは反対で、大きさを $|t|$ 倍します。 |
平行条件は、片方がもう片方の実数倍で表せることです。零ベクトルを含む場合は、方向が定まらないため、条件の扱いに注意します。
内積
内積は、長さと角度を式で扱うための中心公式です。
$$\vec{a}\cdot\vec{b}=|\vec{a}||\vec{b}|\cos\theta$$
座標で $\vec{a}=(a_1,a_2)$, $\vec{b}=(b_1,b_2)$ なら、
$$\vec{a}\cdot\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2$$
空間で $\vec{a}=(a_1,a_2,a_3)$, $\vec{b}=(b_1,b_2,b_3)$ なら、
$$\vec{a}\cdot\vec{b}=a_1b_1+a_2b_2+a_3b_3$$
零ベクトルでない $\vec{a}$, $\vec{b}$ について、$\vec{a}\perp\vec{b}$ なら $\vec{a}\cdot\vec{b}=0$ です。直角条件、角度条件、長さの最小化でよく使います。
位置ベクトル
位置ベクトルでは、基準点を決めて点の位置をベクトルで表します。$P$ が $AB$ を $AP:PB=m:n$ に内分するとき、$A$, $B$ の位置ベクトルを $\vec{a}$, $\vec{b}$ として、
$$\vec{p}=\frac{n\vec{a}+m\vec{b}}{m+n}$$
です。外分点では符号が変わります。内分・外分の公式は、比の向きと係数の位置を逆にしやすいので、図で $m:n$ がどちら側の長さかを確認します。
重心 $G$ は、三角形 $ABC$ の位置ベクトルを $\vec{a}$, $\vec{b}$, $\vec{c}$ とすると、
$$\vec{g}=\frac{\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}}{3}$$
です。
直線・平面上の点の表現
直線上の点は、1つの点と方向ベクトルで表せます。
$$\vec{p}=\vec{a}+t\vec{u}$$
ここで $t$ は実数です。線分 $AB$ 上にある点なら、$\vec{p}=(1-t)\vec{a}+t\vec{b}$ と置き、$0\le t\le1$ を付けます。
空間の平面上の点は、1つの点と2つの独立な方向ベクトルで表します。
$$\vec{p}=\vec{a}+s\vec{u}+t\vec{v}$$
$\vec{u}$ と $\vec{v}$ が平行だと平面を表せません。平面上の点を表すときは、2つの方向ベクトルが独立であることを確認します。
平面ベクトルと空間ベクトルの違い
平面ベクトルでは、主に2成分で点や直線を扱います。空間ベクトルでは3成分になり、直線だけでなく平面、ねじれの位置、空間内の垂直条件が入ります。
| 場面 | 平面ベクトル | 空間ベクトル |
|---|---|---|
| 点の表現 | 2成分で表します。 | 3成分で表します。 |
| 直線 | 1つのパラメータで表します。 | 同じく1つのパラメータで表します。 |
| 平面 | 通常は座標平面内で扱います。 | 2つのパラメータで平面を表します。 |
| 垂直条件 | 内積 $0$ を使います。 | 内積 $0$ に加えて、平面との垂直や射影を意識します。 |
空間では、図の見た目に頼ると平行・垂直・交点の有無を誤りやすくなります。式で条件を確認することが必要です。
図形問題での使いどころ
ベクトルは、図形の条件を次の形に翻訳するときに使います。
- 平行: $\vec{u}=t\vec{v}$
- 垂直: $\vec{u}\cdot\vec{v}=0$
- 長さ: $|\vec{u}|^2=\vec{u}\cdot\vec{u}$
- 中点・内分点: 位置ベクトルの一次結合
- 直線上・平面上: パラメータ表示
特に図形の最大最小では、距離の2乗を内積で表し、二次式として処理する形がよく出ます。平方根を含む長さを直接扱うより、$|\vec{u}|^2$ を使う方が計算が安定します。
空間図形との融合
空間図形では、点、直線、平面の位置関係をベクトルで表します。
- 直線上の点をパラメータで置く
- 平面上の点を2つのパラメータで置く
- 垂線の足は、垂直条件を内積 $0$ で立てる
- 距離の最小値は、垂直条件や二次式の最小値として求める
空間図形の問題では、立体を正確に描くことよりも、どの点を変数で置くかが得点を左右します。
ベクトルで失点しやすい点
- $\vec{AB}=\vec{b}-\vec{a}$ の向きを逆にする
- 内分比 $AP:PB=m:n$ と係数 $n\vec{a}+m\vec{b}$ の対応を取り違える
- 内積 $0$ を、零ベクトルを含む場合まで無条件に垂直と読む
- 線分上の点なのに、パラメータ範囲 $0\le t\le1$ を書かない
- 空間で、直線と平面を同じパラメータ数で表してしまう
- 図の見た目だけで平行や垂直を決め、式で確認しない
ベクトルは、図形の直感を式で検証する分野です。見える関係をそのまま答案にせず、ベクトルの等式や内積条件へ落としてください。
この公式集と一緒に見る問題
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ベクトルの対策では、公式暗記よりも、平行、垂直、長さ、内分、直線上、平面上という条件を、どのベクトル式に変換するかを確認してください。
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