九州大学 1996年 文系 第1問 解説

方針・初手
- 正六角形を扱う問題では、隣り合う2辺のベクトル(本問では $\vec{a}$ と $\vec{b}$)を基底として、他のすべての頂点や中心の位置ベクトルを表現することが定石である。
- 正六角形の中心を $O$ とすると、内接円の中心も $O$ であり、その半径は正六角形を構成する1辺の長さが1の正三角形の高さに等しいことに着目する。
- 基準となるベクトル $\vec{a}$, $\vec{b}$ の大きさおよび内積をあらかじめ求めておき、それらを用いて各設問の計算を進める。
解法1
正六角形 $ABCDEF$ の中心を $O$ とすると、内接円の中心も $O$ である。正六角形は1辺の長さが1の正三角形6個で構成されているため、内接円の半径 $r$ は1辺が1の正三角形の高さに等しい。よって、
$$r = 1 \times \sin 60^\circ = \frac{\sqrt{3}}{2}$$
である。また、$\overrightarrow{AB} = \vec{a}$, $\overrightarrow{AF} = \vec{b}$ であり、$|\vec{a}| = 1$, $|\vec{b}| = 1$、$\vec{a}$ と $\vec{b}$ のなす角は $120^\circ$ であるから、その内積は、
$$\vec{a} \cdot \vec{b} = 1 \times 1 \times \cos 120^\circ = -\frac{1}{2}$$
となる。
さらに、中心 $O$ の位置ベクトルは $\overrightarrow{AO} = \overrightarrow{AB} + \overrightarrow{BO} = \overrightarrow{AB} + \overrightarrow{AF}$ より、
$$\overrightarrow{AO} = \vec{a} + \vec{b}$$
と表せる。
(1)
点 $P(\vec{x})$ は中心 $O$、半径 $r = \frac{\sqrt{3}}{2}$ の内接円上にあるため、$|\overrightarrow{OP}| = \frac{\sqrt{3}}{2}$ を満たす。 $\overrightarrow{OP} = \overrightarrow{AP} - \overrightarrow{AO}$ より、
$$\left| \vec{x} - (\vec{a} + \vec{b}) \right| = \frac{\sqrt{3}}{2}$$
これが求めるベクトル方程式である。両辺を2乗して $\left| \vec{x} - (\vec{a} + \vec{b}) \right|^2 = \frac{3}{4}$ としてもよい。
(2)
点 $C$ について考える。$\overrightarrow{AC} = \overrightarrow{AB} + \overrightarrow{BC}$ であり、正六角形の性質から $\overrightarrow{BC} = \overrightarrow{AO} = \vec{a} + \vec{b}$ である。よって、
$$\overrightarrow{AC} = \vec{a} + (\vec{a} + \vec{b}) = 2\vec{a} + \vec{b}$$
点 $Q$ は線分 $BC$ の中点であるから、
$$\overrightarrow{AQ} = \frac{\overrightarrow{AB} + \overrightarrow{AC}}{2}$$
$$\overrightarrow{AQ} = \frac{\vec{a} + (2\vec{a} + \vec{b})}{2} = \frac{3}{2}\vec{a} + \frac{1}{2}\vec{b}$$
となる。
(3)
$\overrightarrow{AP} = k\overrightarrow{AQ}$ に (2) の結果を代入すると、
$$\vec{x} = k \left( \frac{3}{2}\vec{a} + \frac{1}{2}\vec{b} \right)$$
となる。点 $P(\vec{x})$ は内接円上の点であるから、(1) で求めたベクトル方程式にこれを代入し、両辺を2乗すると、
$$\left| k \left( \frac{3}{2}\vec{a} + \frac{1}{2}\vec{b} \right) - (\vec{a} + \vec{b}) \right|^2 = \frac{3}{4}$$
$$\left| \left( \frac{3}{2}k - 1 \right)\vec{a} + \left( \frac{1}{2}k - 1 \right)\vec{b} \right|^2 = \frac{3}{4}$$
ここで、左辺の絶対値の2乗を展開する。$|\vec{a}|^2 = 1, |\vec{b}|^2 = 1, \vec{a} \cdot \vec{b} = -\frac{1}{2}$ であることを用いると、
$$\begin{aligned} \left( \frac{3}{2}k - 1 \right)^2 |\vec{a}|^2 + 2\left( \frac{3}{2}k - 1 \right)\left( \frac{1}{2}k - 1 \right) \vec{a} \cdot \vec{b} + \left( \frac{1}{2}k - 1 \right)^2 |\vec{b}|^2 &= \frac{3}{4} \\ \left( \frac{9}{4}k^2 - 3k + 1 \right) \times 1 + 2\left( \frac{3}{4}k^2 - 2k + 1 \right) \times \left(-\frac{1}{2}\right) + \left( \frac{1}{4}k^2 - k + 1 \right) \times 1 &= \frac{3}{4} \\ \left( \frac{9}{4}k^2 - 3k + 1 \right) - \left( \frac{3}{4}k^2 - 2k + 1 \right) + \left( \frac{1}{4}k^2 - k + 1 \right) &= \frac{3}{4} \end{aligned}$$
左辺を整理して、
$$\frac{7}{4}k^2 - 2k + 1 = \frac{3}{4}$$
両辺に4を掛けて整理すると、
$$7k^2 - 8k + 4 = 3$$
$$7k^2 - 8k + 1 = 0$$
これを因数分解して、
$$(7k - 1)(k - 1) = 0$$
よって、求める $k$ の値は、
$$k = \frac{1}{7}, 1$$
である。
解説
- 正六角形の頂点や中心を2つの一次独立なベクトルで表すのは基本操作である。内積の値など基本情報を最初に整理しておくとミスを防げる。
- (1)の「内接円」とは、正六角形の6つの辺すべてに接する円のことである。その中心が正六角形の中心 $O$ と一致し、各辺(例えば $BC$ など)の中点が接点となることを利用して半径を求めている。
- (3) はベクトルの大きさを扱うため、2乗して内積計算に持ち込む典型的な処理である。計算量が多くなりがちだが、係数を丁寧に取りまとめることが重要である。図形的にも、$k=1$ のときは点 $P$ が辺 $BC$ の中点 $Q$ に一致し、接点となることから自明な解として確認できる。
答え
(1) $\left| \vec{x} - (\vec{a} + \vec{b}) \right| = \frac{\sqrt{3}}{2}$
(2) $\overrightarrow{AQ} = \frac{3}{2}\vec{a} + \frac{1}{2}\vec{b}$
(3) $k = \frac{1}{7}, 1$
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