九州大学 2008年 文系 第4問 解説

方針・初手
(1) 与えられた関数の導関数を求め、接線の方程式を立てて $x$ 軸との交点を計算する基本的な微分の問題である。 (2) (1)で得られた漸化式について、すべての自然数 $n$ で $a_n > 1$ となることを数学的帰納法を用いて証明する。 (3) (2)の計算過程で現れた $a_{n+1}-1$ と $a_n-1$ の関係式を利用して、$b_{n+1}$ と $b_n^2$ の大小を比較する。差をとって符号を調べるのが定石の手法である。 (4) (3)の不等式を繰り返し用いることで、$b_n$ の上限を $n$ を用いた式で評価する。得られた指数不等式の条件を、常用対数を用いて調べる。
解法1
(1)
$f(x) = x^2 - 1$ とおくと、$f'(x) = 2x$ である。 曲線 $C: y = f(x)$ 上の点 $(a_1, a_1^2 - 1)$ における接線の方程式は、
$$ y - (a_1^2 - 1) = 2a_1 (x - a_1) $$
$$ y = 2a_1 x - 2a_1^2 + a_1^2 - 1 $$
$$ y = 2a_1 x - a_1^2 - 1 $$
この接線と $x$ 軸との交点の $x$ 座標が $a_2$ であるから、$y = 0$ を代入すると、
$$ 2a_1 a_2 - a_1^2 - 1 = 0 $$
条件より $a_1 > 1$ であるから $a_1 \neq 0$ であり、両辺を $2a_1$ で割ると、
$$ a_2 = \frac{a_1^2 + 1}{2a_1} $$
(2)
(1) の操作を繰り返すことから、数列 $\{a_n\}$ の漸化式は次のように表される。
$$ a_{n+1} = \frac{a_n^2 + 1}{2a_n} \quad (n = 1, 2, 3, \cdots) $$
すべての $n$ に対して $a_n > 1$ であることを、数学的帰納法で示す。
(i) $n = 1$ のとき 条件より $a_1 > 1$ であるから、成り立つ。
(ii) $n = k$ ($k$ は自然数) のとき、$a_k > 1$ が成り立つと仮定する。 $n = k + 1$ のとき、差を調べると、
$$ a_{k+1} - 1 = \frac{a_k^2 + 1}{2a_k} - 1 = \frac{a_k^2 - 2a_k + 1}{2a_k} = \frac{(a_k - 1)^2}{2a_k} $$
帰納法の仮定より $a_k > 1 > 0$ であり、$a_k \neq 1$ であるから $(a_k - 1)^2 > 0$ となる。 したがって、
$$ \frac{(a_k - 1)^2}{2a_k} > 0 $$
すなわち $a_{k+1} - 1 > 0$ となり、$a_{k+1} > 1$ が成り立つ。
(i), (ii) より、すべての自然数 $n$ に対して $a_n > 1$ が成り立つ。
(3)
$b_n = \frac{1}{2}(a_n - 1)$ より、$b_{n+1} - b_n^2$ の符号を調べる。
$$ b_{n+1} - b_n^2 = \frac{1}{2}(a_{n+1} - 1) - \left\{ \frac{1}{2}(a_n - 1) \right\}^2 $$
(2) の計算過程より、$a_{n+1} - 1 = \frac{(a_n - 1)^2}{2a_n}$ であるから、
$$ \begin{aligned} b_{n+1} - b_n^2 &= \frac{1}{2} \cdot \frac{(a_n - 1)^2}{2a_n} - \frac{(a_n - 1)^2}{4} \\ &= \frac{(a_n - 1)^2}{4a_n} - \frac{(a_n - 1)^2}{4} \\ &= \frac{(a_n - 1)^2}{4} \left( \frac{1}{a_n} - 1 \right) \\ &= \frac{(a_n - 1)^2 (1 - a_n)}{4a_n} \end{aligned} $$
(2) より $a_n > 1$ であるから、$a_n > 0$、$(a_n - 1)^2 > 0$、$1 - a_n < 0$ である。 したがって、
$$ \frac{(a_n - 1)^2 (1 - a_n)}{4a_n} < 0 $$
よって、$b_{n+1} - b_n^2 < 0$ すなわち $b_{n+1} < b_n^2$ がすべての自然数 $n$ に対して成り立つ。
(4)
$a_1 = 2$ のとき、$b_1 = \frac{1}{2}(2 - 1) = \frac{1}{2}$ である。 (3) の結果より、すべての自然数 $n$ に対して $b_n \leqq \left(\frac{1}{2}\right)^{2^{n-1}}$ が成り立つことを数学的帰納法で示す。($n \geqq 2$ では真の不等号 $<$ が成り立つが、評価の上限を示すため $\leqq$ を用いる)
(i) $n = 1$ のとき 左辺は $b_1 = \frac{1}{2}$、右辺は $\left(\frac{1}{2}\right)^{2^0} = \frac{1}{2}$ であり、等号が成り立つ。
(ii) $n = k$ ($k$ は自然数) のとき、$b_k \leqq \left(\frac{1}{2}\right)^{2^{k-1}}$ が成り立つと仮定する。 $n = k + 1$ のとき、(3) の結果と帰納法の仮定より、
$$ b_{k+1} < b_k^2 \leqq \left\{ \left(\frac{1}{2}\right)^{2^{k-1}} \right\}^2 = \left(\frac{1}{2}\right)^{2^{k-1} \cdot 2} = \left(\frac{1}{2}\right)^{2^k} $$
よって、$b_{k+1} < \left(\frac{1}{2}\right)^{2^k}$ となり、$n = k + 1$ のときも成り立つ。
(i), (ii) より、すべての自然数 $n$ に対して $b_n \leqq \left(\frac{1}{2}\right)^{2^{n-1}} = 2^{-2^{n-1}}$ が成り立つ。($n \geqq 2$ のときは $b_n < 2^{-2^{n-1}}$)
この評価を用いて、$2^{-2^{n-1}} \leqq 10^{-12}$ を満たす $n$ を見つければ、その $n$ に対して $b_n < 10^{-12}$ が十分に保証される。 両辺の底を $10$ とした常用対数をとると、
$$ \log_{10} 2^{-2^{n-1}} \leqq \log_{10} 10^{-12} $$
$$ -2^{n-1} \log_{10} 2 \leqq -12 $$
$$ 2^{n-1} \log_{10} 2 \geqq 12 $$
$\log_{10} 2 = 0.301$ を代入すると、
$$ 2^{n-1} \times 0.301 \geqq 12 $$
$$ 2^{n-1} \geqq \frac{12}{0.301} = \frac{12000}{301} = 39.86\cdots $$
ここで、$2^5 = 32$、$2^6 = 64$ であるから、これを満たす最小の整数 $n-1$ は $6$ である。 したがって、$n-1 \geqq 6$ すなわち $n \geqq 7$ であれば上の不等式を満たす。 $n = 7$ のとき、$b_7 < 2^{-2^6} = 2^{-64} \leqq 10^{-12}$ が成り立ち、題意の条件を満たす。 条件を満たす $n$ の値を1つ求めればよいので、$7$ が一つの解として適する。
解説
ニュートン法の原理を背景とした有名問題である。ある方程式 $f(x) = 0$ の解の近似値を求めるためのアルゴリズムであるニュートン法では、$x_{n+1} = x_n - \frac{f(x_n)}{f'(x_n)}$ という漸化式を用いる。本問で与えられた漸化式は、$f(x) = x^2 - 1 = 0$ の正の解(すなわち $x = 1$)を求める漸化式に他ならない。(3) と (4) は、この数列が非常に速く(2次収束で) $1$ に収束していく様子を不等式評価で示している。
(4) のように不等式を繰り返し用いて一般項を評価する手法は難関大で頻出である。直接一般項を求めることが困難な数列でも、自乗のスピードで差が縮まっていくことを上手く評価できればよい。厳密に不等式を繋いでいく際には、推測した評価式を数学的帰納法で証明しておくことで、論理の穴をなくすことができる。
答え
(1) $a_2 = \frac{a_1^2 + 1}{2a_1}$
(2) (証明は解法1を参照)
(3) (証明は解法1を参照)
(4) $7$ ($n=7$ 以上の整数であればどれでも条件を満たす)
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