九州大学 1997年 文系 第3問 解説

方針・初手
- (1)は、指数関数 $2^x$ と2次関数 $4x^2$ の大小関係の逆転する境界を探す問題である。$m$ に小さな自然数から順に代入してしらみつぶしに調べる。
- (2)は、$n$ についての不等式の証明であるから、数学的帰納法を用いるのが自然である。
- (3)は和 $S_n$ の最小値を求める問題であるが、$S_n - S_{n-1} = 2^n - 4n^2$ であり、これは(1), (2)で調べた式そのものである。階差の符号から $S_n$ の増減を調べて最小値を特定する。
解法1
(1)
$m$ に自然数を順に代入して調べる。
$m=1$ のとき、$2^1 = 2$、$4 \cdot 1^2 = 4$ より $2^1 \leqq 4 \cdot 1^2$ は成立。しかし $2^2 = 4$、$4 \cdot 2^2 = 16$ より $2^{1+1} > 4(1+1)^2$ は不成立。
$m=2$ のとき、$2^2 = 4$、$4 \cdot 2^2 = 16$ より $2^2 \leqq 4 \cdot 2^2$ は成立。しかし $2^3 = 8$、$4 \cdot 3^2 = 36$ より $2^{2+1} > 4(2+1)^2$ は不成立。
以下、両者の値を順に比較する。
- $m=3$: $2^3 = 8 \leqq 36$、しかし $2^4 = 16 \ngtr 4 \cdot 4^2 = 64$
- $m=4$: $2^4 = 16 \leqq 64$、しかし $2^5 = 32 \ngtr 4 \cdot 5^2 = 100$
- $m=5$: $2^5 = 32 \leqq 100$、しかし $2^6 = 64 \ngtr 4 \cdot 6^2 = 144$
- $m=6$: $2^6 = 64 \leqq 144$、しかし $2^7 = 128 \ngtr 4 \cdot 7^2 = 196$
- $m=7$: $2^7 = 128 \leqq 196$、しかし $2^8 = 256 \ngtr 4 \cdot 8^2 = 256$(等号が成り立つため不成立)
- $m=8$: $2^8 = 256 \leqq 4 \cdot 8^2 = 256$ が成立。かつ $2^9 = 512$、$4 \cdot 9^2 = 324$ より $2^9 > 4 \cdot 9^2$ が成立。
よって、条件を満たす最小の自然数 $m$ は $m=8$ である。
(2)
(1)より $m=8$ であるから、示したい命題は「$n \geqq 9$ を満たすすべての自然数 $n$ について、$4n^2 < 2^n$ が成り立つ」ことである。 これを数学的帰納法で証明する。
[1] $n=9$ のとき
$2^9 = 512$、$4 \cdot 9^2 = 324$ であり、$512 > 324$ となるから成り立つ。((1)で確認済み)
[2] $n=k \ (k \geqq 9)$ のとき、不等式が成り立つと仮定する。すなわち、
$$2^k > 4k^2$$
と仮定する。$n=k+1$ のときを考えると、
$$2^{k+1} - 4(k+1)^2 = 2 \cdot 2^k - 4(k^2 + 2k + 1)$$
帰納法の仮定 $2^k > 4k^2$ を用いると、
$$\begin{aligned} 2 \cdot 2^k - 4(k^2 + 2k + 1) &> 2 \cdot 4k^2 - 4k^2 - 8k - 4 \\ &= 4k^2 - 8k - 4 \\ &= 4(k^2 - 2k - 1) \\ &= 4\{(k-1)^2 - 2\} \end{aligned}$$
$k \geqq 9$ より $k-1 \geqq 8$ であるから、$(k-1)^2 - 2 \geqq 64 - 2 = 62 > 0$ である。 したがって、$2^{k+1} - 4(k+1)^2 > 0$ となり、$2^{k+1} > 4(k+1)^2$ が示された。よって $n=k+1$ のときも成り立つ。
[1], [2] より、$m<n$ を満たすすべての自然数 $n$ について、$4n^2 < 2^n$ が成り立つことが証明された。
(3)
数列 $\{a_n\}$ を $a_n = 2^n - 4n^2$ とおく。 (1), (2)の議論から、各自然数 $n$ に対する $a_n$ の符号は以下のようになる。
- $1 \leqq n \leqq 7$ のとき、$2^n < 4n^2$ より $a_n < 0$
- $n = 8$ のとき、$2^8 = 4 \cdot 8^2$ より $a_8 = 0$
- $n \geqq 9$ のとき、$2^n > 4n^2$ より $a_n > 0$
与えられた和は $S_n = \sum_{k=1}^n a_k$ であり、$n \geqq 2$ において $S_n - S_{n-1} = a_n$ であるから、 数列 $\{S_n\}$ は $n \leqq 7$ の範囲で単調に減少し、$S_7 = S_8$ となり、$n \geqq 8$ の範囲で単調に増加する。
したがって、$S_n$ が最小となるのは $n=7$ または $n=8$ のときである。 最小値を $S_8$ として計算する。
$$\begin{aligned} S_8 &= \sum_{k=1}^8 2^k - 4 \sum_{k=1}^8 k^2 \\ &= \frac{2(2^8 - 1)}{2 - 1} - 4 \cdot \frac{1}{6} \cdot 8 \cdot (8+1) \cdot (2 \cdot 8 + 1) \\ &= 2(256 - 1) - \frac{2}{3} \cdot 8 \cdot 9 \cdot 17 \\ &= 510 - 2 \cdot 8 \cdot 3 \cdot 17 \\ &= 510 - 816 \\ &= -306 \end{aligned}$$
よって、$n$ を動かしたときの $S_n$ の最小値は $-306$ である。
解説
- (1)のように方程式や不等式を解くことが困難な場合は、自然数であることを活かして小さな値から順に代入して調べることが定石である。
- (2)は、(1)での実験により「どこから不等式の向きが逆転するか」を把握した上で、それを数学的帰納法によって一般化して証明する、入試頻出の誘導形式となっている。帰納法のステップで差をとって平方完成する処理も典型である。
- (3)では、数列の和の最小値を問われているが、和の公式をそのまま微分等するのではなく、「和の増減は、足し合わせる項(階差)の符号によって決まる」という基本性質を用いることがポイント。階差数列の符号の切り替わりが(1)(2)で既に調べられているという誘導に気づけるかが鍵となる。
答え
(1) $m = 8$ (2) 略(解法に記載の通り) (3) $-306$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











