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名古屋大学 1991年 理系 第5問 解説

数学A/図形の性質数学1/図形計量テーマ/図形総合
名古屋大学 1991年 理系 第5問 解説

方針・初手

玉が反射して進む軌道は、辺を軸として三角形そのものを折り返していく「鏡像法」を用いて直線化して考えるのが定石である。まずは、玉がどの辺の順に反射するのかを特定する。各辺に1回ずつ当たるという条件と、出発点・到達点の位置関係から、反射の順番は一意に定まる。その後、鏡像を展開した空間で出発点と到達点を結ぶ線分を引き、それが各境界の正しい位置と交わる条件を立式する。

解法1

$O(0, 0)$ とし、直線 $OA$ を $x$軸、直線 $OB$ を $y$軸とする座標平面を設定する。 $\angle OAB = \theta$ $\left(0 < \theta < \frac{\pi}{2}\right)$ とおく。 玉の軌道は相似拡大しても条件は変わらないため、$AB = 1$ としても一般性を失わない。 このとき、各頂点の座標は $A(\cos\theta, 0)$、$B(0, \sin\theta)$ となる。

【反射の順序の決定】

玉は点 $A$ から直角三角形の内部に向かって打ち出される。点 $A$ は辺 $OA$ と辺 $AB$ 上の点であるため、玉が内部へ進んで最初に到達できる辺は辺 $OB$ しかあり得ない。 同様に、玉は最後に辺で反射した後、内部を通って点 $B$ に達する。点 $B$ は辺 $OB$ と辺 $AB$ 上の点であるため、到達直前に反射した辺は辺 $OA$ しかあり得ない。 「各辺で1回ずつ当たって」という条件から、玉が反射する辺の順序は「辺 $OB \to$ 辺 $AB \to$ 辺 $OA$」の1通りに確定する。

【鏡像による軌道の直線化】

反射の法則より、軌道は反射する辺を軸にして三角形を次々と折り返すことで直線となる。 元の三角形 $\triangle OAB$ を $T_0$ とする。

(1) 辺 $OB$ での反射 $T_0$ を辺 $OB$($y$軸)に関して折り返した三角形を $T_1$ とする。 頂点は $O(0,0)$、$A_1(-\cos\theta, 0)$、$B_1(0, \sin\theta)$ となる。玉は $T_0$ の点 $A$ から出発し、$y$軸上の線分 $OB_1$ を通過して $T_1$ に入る。

(2) 辺 $AB$ での反射 玉は次に、元の辺 $AB$ の鏡像である線分 $A_1 B_1$ を通過する。 $T_1$ を直線 $A_1 B_1$ に関して折り返した三角形を $T_2$ とする。 折り返し軸上の点 $A_1$、$B_1$ は動かず、$O$ の像を $O_2$ とおく。

(3) 辺 $OA$ での反射 最後に、元の辺 $OA$ の鏡像である線分 $O_2 A_1$ を通過する。 $T_2$ を直線 $O_2 A_1$ に関して折り返した三角形を $T_3$ とする。 折り返し軸上の点 $O_2$、$A_1$ は動かず、最終到達点 $B_1$ の像を $B_3$ とおく。

展開された空間において、玉の軌道は点 $A$ と点 $B_3$ を結ぶ線分 $A B_3$ となる。

【最終到達点 $B_3$ の座標】

点 $A_1(-\cos\theta, 0)$ を極とし、$x$軸正の方向を偏角 $0$ として各点の位置を考える。 直線 $A_1 B_1$ の傾きは $\tan\theta$ であるため、その偏角は $\theta$ である。 点 $O$ は $A_1$ から距離 $\cos\theta$、偏角 $0$ の位置にある。これを直線 $A_1 B_1$(偏角 $\theta$)に関して折り返した点 $O_2$ は、距離 $\cos\theta$、偏角 $2\theta$ となる。すなわち、直線 $O_2 A_1$ の偏角は $2\theta$ である。

点 $B_1$ は $A_1$ から距離 $1$、偏角 $\theta$ の位置にある。これを直線 $O_2 A_1$(偏角 $2\theta$)に関して折り返した点 $B_3$ は、距離 $1$、偏角 $2\theta + (2\theta - \theta) = 3\theta$ となる。 したがって、点 $B_3$ の座標は以下のように求まる。

$$ \begin{aligned} x_{B3} &= -\cos\theta + 1 \cdot \cos 3\theta = \cos 3\theta - \cos\theta \\ y_{B3} &= 0 + 1 \cdot \sin 3\theta = \sin 3\theta \end{aligned} $$

【線分が各辺を通過する条件】

線分 $A B_3$ が実際の軌道として成立するためには、線分が折り返し境界である(i)線分 $OB_1$、(ii)線分 $A_1 B_1$、(iii)線分 $O_2 A_1$ と、それぞれの端点を含まない内部で順に交わる必要がある。

(i) 線分 $OB_1$ と交わる条件 $A$ の $x$座標は正、$B_3$ の $x$座標は $\cos 3\theta - \cos\theta = -2\sin 2\theta \sin\theta < 0$ であるため、線分 $A B_3$ は必ず $y$軸と交わる。 交点 $P_1$ の $y$座標 $y_1$ は、$x$座標の絶対値の比 $\cos\theta : (\cos\theta - \cos 3\theta)$ すなわち $1 : 4\sin^2\theta$ で $A$ と $B_3$ の $y$座標を内分して得られる。

$$ y_1 = \frac{4\sin^2\theta \cdot 0 + 1 \cdot \sin 3\theta}{1 + 4\sin^2\theta} = \frac{\sin 3\theta}{1 + 4\sin^2\theta} $$

これが線分 $OB_1$ 上にある条件は $0 < y_1 < \sin\theta$ である。 $y_1 > 0$ より、$\sin 3\theta > 0$ となり $0 < 3\theta < \pi$ すなわち $0 < \theta < \frac{\pi}{3}$ である。 $y_1 < \sin\theta$ より、

$$ \frac{3\sin\theta - 4\sin^3\theta}{1 + 4\sin^2\theta} < \sin\theta $$

$\sin\theta > 0$ で割り、整理する。

$$ 3 - 4\sin^2\theta < 1 + 4\sin^2\theta $$

$$ 8\sin^2\theta > 2 \iff \sin\theta > \frac{1}{2} $$

これより $\frac{\pi}{6} < \theta < \frac{\pi}{2}$ を得る。 両方の共通範囲をとると、

$$ \frac{\pi}{6} < \theta < \frac{\pi}{3} $$

となる。

(ii) 線分 $A_1 B_1$ と交わる条件 直線 $A_1 B_1$ の方程式は $f(x,y) = x\sin\theta - y\cos\theta + \sin\theta\cos\theta = 0$ である。 $f(A) = \sin 2\theta$ であり、和積の公式等を用いて $f(B_3)$ を計算すると $f(B_3) = -\sin 2\theta$ となる。 $f(A) + f(B_3) = 0$ となることから、線分 $A B_3$ は直線 $A_1 B_1$ と常にその中点 $P_2 = \left(\frac{\cos 3\theta}{2}, \frac{\sin 3\theta}{2}\right)$ で交わる。 $\frac{\pi}{6} < \theta < \frac{\pi}{3}$ のとき、この中点 $P_2$ は常に線分 $A_1 B_1$ の内部にあることが確認できる。

(iii) 線分 $O_2 A_1$ と交わる条件 直線 $O_2 A_1$ の方程式は $g(x,y) = x\sin 2\theta - y\cos 2\theta + \cos\theta\sin 2\theta = 0$ である。 $g(A) = 2\cos\theta\sin 2\theta$、および $g(B_3) = -\sin\theta$ となり、異符号であるため線分は直線と必ず交わる。 内分比から交点 $P_3$ の $y$座標を求めると、

$$ y_{P3} = \frac{4\cos^2\theta \cdot \sin 3\theta}{4\cos^2\theta + 1} $$

となる。これが線分 $O_2 A_1$ の $y$座標の範囲 $0 < y_{P3} < 2\sin\theta\cos^2\theta$ に収まる条件を解くと、(i)の条件と全く同じ $\frac{\pi}{6} < \theta < \frac{\pi}{3}$ に帰着する。

以上より、すべての条件を満たす $\theta$ の範囲が求める条件である。

解説

ビリヤードなどの反射軌道に関する問題では、鏡像法(壁を軸にして空間を対称移動させる手法)が最も有効です。 本問では「各辺で1回ずつ」という条件がありますが、点 $A$ および点 $B$ の位置関係から、玉が反射する辺の順序が1通りに絞られることに気づけるかが最大の鍵となります。 順番が確定した後は、極座標的な発想(偏角の利用)で折り返した部屋の頂点座標を求めると、三角関数の計算が劇的に簡略化されます。交点の位置が線分の内部にあるかどうかの確認も怠らないようにしましょう(本問では結果的に最初の壁の条件だけで十分となります)。

答え

$$ \frac{\pi}{6} < \angle OAB < \frac{\pi}{3} $$

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