大阪大学 1968年 文系 第2問 解説

方針・初手
合同な4つの三角形から四面体(等面四面体)を作る問題である。与えられた3辺 $a, b, c$ を持つ三角形を組み合わせて立体を構成するためには、空間上の頂点が同一平面上に潰れず、体積が正になる必要がある。
本問は、「等面四面体は必ずある直方体に埋め込むことができる」という図形的な性質を利用する方針が最も見通しがよい。あるいは、1つの頂点を基準に空間ベクトルを設定し、頂点から底面に下ろした垂線の長さ(高さ)が正になる条件を直接計算することもできる。
解法1
四面体 $\text{ABCD}$ が題意を満たす等面四面体であるとする。すなわち、各面の三角形の辺の対応から、 $$\text{BC}=\text{DA}=a, \quad \text{CA}=\text{DB}=b, \quad \text{AB}=\text{CD}=c$$ である。このような四面体は、直方体の頂点を選ぶことで構成できることを示す。
四面体 $\text{ABCD}$ の重心を原点 $\text{O}$ とし、各頂点の位置ベクトルを $\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}, \vec{d}$ とおく。重心の定義より、以下の等式が成り立つ。 $$\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}+\vec{d}=\vec{0}$$
対辺の長さが等しいことから、 $$|\vec{a}-\vec{b}|^2 = |\vec{c}-\vec{d}|^2$$ ここで $\vec{c}+\vec{d} = -(\vec{a}+\vec{b})$ であることを用い、平行四辺形の法則 $|\vec{x}-\vec{y}|^2 + |\vec{x}+\vec{y}|^2 = 2(|\vec{x}|^2+|\vec{y}|^2)$ を適用すると、 $$|\vec{a}-\vec{b}|^2 + |\vec{a}+\vec{b}|^2 = 2(|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2)$$ $$|\vec{c}-\vec{d}|^2 + |\vec{c}+\vec{d}|^2 = 2(|\vec{c}|^2+|\vec{d}|^2)$$ 左辺同士が等しいため、右辺も等しくなり、 $$|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2 = |\vec{c}|^2+|\vec{d}|^2$$ が得られる。同様に他の対辺の等式からも関係式を導くと、結果として以下の等式を得る。 $$|\vec{a}|^2 = |\vec{b}|^2 = |\vec{c}|^2 = |\vec{d}|^2$$
次に、対辺の中点を結ぶベクトル $\vec{x} = \frac{\vec{a}+\vec{b}}{2}, \vec{y} = \frac{\vec{a}+\vec{c}}{2}, \vec{z} = \frac{\vec{a}+\vec{d}}{2}$ を考える。これらの内積を計算する。 $$\vec{x}\cdot\vec{y} = \frac{1}{4}(\vec{a}+\vec{b})\cdot(\vec{a}+\vec{c}) = \frac{1}{4}(|\vec{a}|^2 + \vec{a}\cdot\vec{b} + \vec{a}\cdot\vec{c} + \vec{b}\cdot\vec{c})$$
$\vec{a}+\vec{b}+\vec{c} = -\vec{d}$ の両辺の絶対値の2乗をとると、 $$|\vec{a}|^2+|\vec{b}|^2+|\vec{c}|^2 + 2(\vec{a}\cdot\vec{b} + \vec{b}\cdot\vec{c} + \vec{c}\cdot\vec{a}) = |\vec{d}|^2$$ $|\vec{a}|^2 = |\vec{b}|^2 = |\vec{c}|^2 = |\vec{d}|^2$ を代入して整理すると、 $$3|\vec{a}|^2 + 2(\vec{a}\cdot\vec{b} + \vec{b}\cdot\vec{c} + \vec{c}\cdot\vec{a}) = |\vec{a}|^2$$ $$\vec{a}\cdot\vec{b} + \vec{b}\cdot\vec{c} + \vec{c}\cdot\vec{a} = -|\vec{a}|^2$$
これを内積の式に代入すると、 $$\vec{x}\cdot\vec{y} = \frac{1}{4}(|\vec{a}|^2 - |\vec{a}|^2) = 0$$ となる。同様にして $\vec{y}\cdot\vec{z} = 0, \vec{z}\cdot\vec{x} = 0$ が示され、$\vec{x}, \vec{y}, \vec{z}$ は互いに直交することがわかる。
また、$\vec{x}+\vec{y}+\vec{z} = \frac{3\vec{a}+\vec{b}+\vec{c}+\vec{d}}{2} = \vec{a}$ であるから、各頂点の位置ベクトルは次のように表される。 $$\begin{aligned} \vec{a} &= \vec{x}+\vec{y}+\vec{z} \\ \vec{b} &= \vec{x}-\vec{y}-\vec{z} \\ \vec{c} &= -\vec{x}+\vec{y}-\vec{z} \\ \vec{d} &= -\vec{x}-\vec{y}+\vec{z} \end{aligned}$$
これは、四面体 $\text{ABCD}$ の頂点が、互いに直交するベクトル $\vec{x}, \vec{y}, \vec{z}$ を用いて構成される直方体の頂点であることを意味する。直方体の辺の長さを $2x, 2y, 2z$ ($x=|\vec{x}|, y=|\vec{y}|, z=|\vec{z}|$)とすると、四面体の辺の長さの2乗は次のように表される。 $$\begin{aligned} a^2 &= |\vec{c}-\vec{b}|^2 = 4x^2+4y^2 \\ b^2 &= |\vec{a}-\vec{c}|^2 = 4x^2+4z^2 \\ c^2 &= |\vec{b}-\vec{a}|^2 = 4y^2+4z^2 \end{aligned}$$
四面体が退化せずに立体として存在するための必要十分条件は、この直方体が存在すること、すなわち $x^2>0, y^2>0, z^2>0$ である。上の連立方程式を解くと、 $$\begin{aligned} 4x^2 &= \frac{a^2+b^2-c^2}{2} \\ 4y^2 &= \frac{c^2+a^2-b^2}{2} \\ 4z^2 &= \frac{b^2+c^2-a^2}{2} \end{aligned}$$ となる。条件より $a \ge b \ge c$ であるから、 $$a^2+b^2-c^2 \ge c^2+a^2-b^2 \ge b^2+c^2-a^2$$ が成り立つ。したがって、最も小さい $4z^2 > 0$ であればすべて正となる。 ゆえに、求める必要十分条件は $b^2+c^2-a^2 > 0$ すなわち $a^2 < b^2+c^2$ である。
(逆に $a^2 < b^2+c^2$ を満たすとき、$x^2, y^2, z^2 > 0$ となる $x, y, z$ を定めて直方体を作ることで、条件を満たす四面体を構成できる。)
解法2
底面を $\triangle\text{BCD}$ とし、辺の長さを $\text{BC}=a, \text{CD}=c, \text{DB}=b$ とする。 頂点 $\text{D}$ を原点とし、$\vec{u} = \vec{\text{DB}}, \vec{v} = \vec{\text{DC}}$ とおく。 条件より $|\vec{u}| = b, |\vec{v}| = c, |\vec{u}-\vec{v}| = a$ であるから、内積は次のように計算できる。 $$|\vec{u}-\vec{v}|^2 = a^2 \implies \vec{u}\cdot\vec{v} = \frac{b^2+c^2-a^2}{2}$$
残りの頂点 $\text{A}$ について、$\vec{w} = \vec{\text{DA}}$ とおく。 四面体の他の面も $a, b, c$ の辺を持つ三角形であるから、$\text{AB}=c, \text{AC}=b, \text{AD}=a$ とすれば題意を満たす。 $$\begin{aligned} |\vec{w}| &= a \\ |\vec{w}-\vec{u}|^2 = c^2 &\implies \vec{w}\cdot\vec{u} = \frac{a^2+b^2-c^2}{2} \\ |\vec{w}-\vec{v}|^2 = b^2 &\implies \vec{w}\cdot\vec{v} = \frac{c^2+a^2-b^2}{2} \end{aligned}$$
ここで、計算の見通しを良くするために以下のようにおく。 $$\begin{aligned} X &= \frac{b^2+c^2-a^2}{2} \\ Y &= \frac{c^2+a^2-b^2}{2} \\ Z &= \frac{a^2+b^2-c^2}{2} \end{aligned}$$ これにより、$\vec{u}\cdot\vec{v} = X, \vec{w}\cdot\vec{u} = Z, \vec{w}\cdot\vec{v} = Y$ であり、さらに $|\vec{u}|^2 = X+Z, |\vec{v}|^2 = X+Y, |\vec{w}|^2 = Y+Z$ と表せる。
頂点 $\text{A}$ から平面 $\text{BCD}$ に下ろした垂線の足を $\text{H}$ とし、$\vec{\text{DH}} = s\vec{u}+t\vec{v}$ とおく。 $\vec{w} = s\vec{u}+t\vec{v}+\vec{h}$ ($\vec{h} \perp \vec{u}, \vec{h} \perp \vec{v}$)と分解できる。 両辺と $\vec{u}, \vec{v}$ の内積をとると、 $$\begin{cases} s(X+Z) + tX = Z \\ sX + t(X+Y) = Y \end{cases}$$ 四面体が存在するための条件は、頂点 $\text{A}$ が平面 $\text{BCD}$ 上にないこと、すなわち高さの2乗 $|\vec{h}|^2 > 0$ であることである。 $$|\vec{h}|^2 = \vec{w}\cdot(\vec{w}-s\vec{u}-t\vec{v}) = |\vec{w}|^2 - sZ - tY = Y+Z - sZ - tY$$
上の連立方程式を行列式 $\Delta = (X+Z)(X+Y) - X^2 = XY+YZ+ZX$ を用いて解く。 $\Delta$ は、$\Delta = \frac{2a^2 b^2 + 2b^2 c^2 + 2c^2 a^2 - a^4 - b^4 - c^4}{4}$ と変形でき、これはヘロンの公式より(底面 $\triangle\text{BCD}$ が存在するため)正である。 $$s = \frac{Z(X+Y)-XY}{\Delta}, \quad t = \frac{Y(X+Z)-XZ}{\Delta}$$ これを $|\vec{h}|^2$ の式に代入して整理すると、 $$|\vec{h}|^2 = \frac{(Y+Z)\Delta - Z^2(X+Y) + XYZ - Y^2(X+Z) + XYZ}{\Delta} = \frac{4XYZ}{\Delta}$$ となる。
$\Delta > 0$ であるから、四面体が作れるための必要十分条件は $XYZ > 0$ である。 $a \ge b \ge c$ であるから、$Y > 0, Z > 0$ は明らかである。 したがって、$X > 0$ すなわち $b^2+c^2-a^2 > 0$ が必要十分条件となる。
解説
等面四面体の成立条件を問う問題である。 解法1のように「等面四面体は直方体に埋め込むことができる」という事実を利用する方針が最も鮮やかである。ベクトルを用いて「対辺の中点を結ぶ線分が互いに直交する」ことを示せば、直方体の構成が論理的に証明できる。 解法2のように、1つの頂点を基準にベクトルを設定し、高さを直接計算する方針でも正答に至る。変数を $X, Y, Z$ と置き換える工夫が計算量削減の鍵となる。 結果として、与えられた辺の長さからなる三角形が「鋭角三角形」であることが、等面四面体が構成できるための必要十分条件となる。
答え
$a^2 < b^2 + c^2$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











