大阪大学 1993年 文系 第4問 解説

方針・初手
点 $P$ が満たすべき条件 $\angle APB > 90^\circ$ は、ベクトルを用いて $\overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PB} < 0$ と同値であることに着目する。これにより、集合 $S$ が線分 $AB$ を直径とする球面の内部であることを把握する。 (2) は底面における球と正三角形の共通部分、(3) は他の斜面における共通部分の面積を求める。(3) では、ベクトルの正射影を利用することで、切り口の円を図形的に捉えるのが計算量を減らす鍵となる。
解法1
(1)
点 $P$ について、$\angle APB > 90^\circ$ となる条件は、ベクトルの内積を用いて $\overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PB} < 0$ と表される。
線分 $AB$ の中点を $M$ とすると、$\overrightarrow{PA} = \overrightarrow{MA} - \overrightarrow{MP}$、$\overrightarrow{PB} = \overrightarrow{MB} - \overrightarrow{MP} = -\overrightarrow{MA} - \overrightarrow{MP}$ であるから、与式に代入して、
$$ (\overrightarrow{MA} - \overrightarrow{MP}) \cdot (-\overrightarrow{MA} - \overrightarrow{MP}) < 0 $$
$$ -|\overrightarrow{MA}|^2 + |\overrightarrow{MP}|^2 < 0 $$
$$ |\overrightarrow{MP}| < |\overrightarrow{MA}| $$
正四面体の 1辺の長さは 2 であるから、$|\overrightarrow{MA}| = 1$ である。 したがって、$|\overrightarrow{MP}| < 1$ となり、集合 $S$ は線分 $AB$ の中点 $M$ を中心とする半径 1 の球の内部(境界を含まない)である。 (または、線分 $AB$ を直径とする球面の内部)
(2)
集合 $S$ と平面 $ABC$ の交わりは、平面 $ABC$ 上において、点 $M$ を中心とする半径 1 の円の内部である。この円を $C_1$ とする。 求める面積は、正三角形 $ABC$ と円 $C_1$ の内部の共通部分の面積である。
辺 $AC, BC$ の中点をそれぞれ $K, L$ とおく。 $\triangle ABC$ において中点連結定理より $MK = \frac{1}{2} BC = 1$、同様に $ML = \frac{1}{2} AC = 1$ であるから、点 $K, L$ は中心 $M$、半径 1 の円 $C_1$ の周上にある。
$\triangle MAK$ において、$MA = MK = 1$ であり、$\triangle ABC$ は正三角形であるから $\angle MAK = 60^\circ$ となる。よって $\triangle MAK$ は 1辺 1 の正三角形である。 同様に $\triangle MBL$ も 1辺 1 の正三角形である。
したがって、求める共通部分は、$\triangle MAK$ と $\triangle MBL$、および扇形 $MKL$ の 3つの部分に分割できる。 扇形 $MKL$ の中心角 $\angle KML$ は、
$$ \angle KML = 180^\circ - \angle AMK - \angle BML = 180^\circ - 60^\circ - 60^\circ = 60^\circ $$
である。ゆえに、求める交わりの面積を $S_1$ とすると、
$$ S_1 = \triangle MAK + (\text{扇形 } MKL) + \triangle MBL $$
$$ S_1 = \frac{\sqrt{3}}{4} \cdot 1^2 + \frac{1}{2} \cdot 1^2 \cdot \frac{\pi}{3} + \frac{\sqrt{3}}{4} \cdot 1^2 = \frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{\pi}{6} $$
(3)
正四面体の 4つの表面のうち、面 $ABD$ と $S$ の交わりの面積 $S_2$ は、対称性から (2) の $S_1$ と等しくなる。すなわち $S_2 = \frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{\pi}{6}$ である。
次に、面 $ACD$ と $S$ の交わりについて考える。 点 $P$ が平面 $ACD$ 上にあるとき、点 $B$ から平面 $ACD$ に下ろした垂線の足を $H$ とすると、$\overrightarrow{PB} = \overrightarrow{PH} + \overrightarrow{HB}$ と分解できる。 点 $P$ は平面 $ACD$ 上にあり、$\overrightarrow{HB}$ は平面 $ACD$ の法線ベクトルであるから、$\overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{HB} = 0$ である。 これを用いて $\overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PB} < 0$ を変形すると、
$$ \overrightarrow{PA} \cdot (\overrightarrow{PH} + \overrightarrow{HB}) < 0 $$
$$ \overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PH} < 0 $$
これは、平面 $ACD$ 上において、点 $P$ が線分 $AH$ を直径とする円の内部にあることを意味する。この円を $C_2$ とする。
四面体 $B-ACD$ において、$BA = BC = BD = 2$ であるから、頂点 $B$ から底面 $ACD$ に下ろした垂線の足 $H$ は、正三角形 $ACD$ の外心に一致する。 1辺 2 の正三角形 $ACD$ の外接円の半径は、正弦定理より $\frac{2}{2 \sin 60^\circ} = \frac{2}{\sqrt{3}}$ であるから、$AH = \frac{2}{\sqrt{3}}$ となる。 したがって、円 $C_2$ の半径は $\frac{1}{\sqrt{3}}$ である。
辺 $AC, AD$ の中点をそれぞれ $K, N$ とおく。 $\triangle AKH$ において、$AK = 1$、$AH = \frac{2}{\sqrt{3}}$ であり、点 $H$ は $\triangle ACD$ の外心($\angle A$ の二等分線上)であるから $\angle HAK = 30^\circ$ である。 余弦定理を用いて $HK^2$ を計算すると、
$$ HK^2 = 1^2 + \left(\frac{2}{\sqrt{3}}\right)^2 - 2 \cdot 1 \cdot \frac{2}{\sqrt{3}} \cos 30^\circ = 1 + \frac{4}{3} - 2 = \frac{1}{3} $$
$AK^2 + HK^2 = 1 + \frac{1}{3} = \frac{4}{3} = AH^2$ が成り立つため、$\angle AKH = 90^\circ$ である。 これは、点 $K$ が線分 $AH$ を直径とする円 $C_2$ の周上にあることを示す。対称性より、点 $N$ も円 $C_2$ の周上にある。
面 $ACD$ と $S$ の交わりは、円 $C_2$ の内部と $\triangle ACD$ の内部の共通部分である。 円 $C_2$ は辺 $AC, AD$ の外側にはみ出す部分(弦 $AK, AN$ に対する 2つの弓形)を持つ。 直角三角形 $AKH$ において $\angle AHK = 60^\circ$ であるから、弦 $AK$ に対する中心角は $120^\circ$($\frac{2\pi}{3}$)である。 半径 $\frac{1}{\sqrt{3}}$ の円について、この弓形の面積は、
$$ \frac{1}{2} \left(\frac{1}{\sqrt{3}}\right)^2 \cdot \frac{2\pi}{3} - \frac{1}{2} \left(\frac{1}{\sqrt{3}}\right)^2 \sin \frac{2\pi}{3} = \frac{\pi}{9} - \frac{\sqrt{3}}{12} $$
したがって、面 $ACD$ との交わりの面積 $S_3$ は、円 $C_2$ 全体の面積からこれら 2つの弓形を引いたものである。
$$ S_3 = \pi \left(\frac{1}{\sqrt{3}}\right)^2 - 2 \left(\frac{\pi}{9} - \frac{\sqrt{3}}{12}\right) = \frac{\pi}{3} - \frac{2\pi}{9} + \frac{\sqrt{3}}{6} = \frac{\pi}{9} + \frac{\sqrt{3}}{6} $$
対称性より、面 $BCD$ との交わりの面積 $S_4$ も $S_3$ に等しい。 以上より、正四面体の表面と $S$ の交わりの総面積は、
$$ S_1 + S_2 + S_3 + S_4 = 2\left(\frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{\pi}{6}\right) + 2\left(\frac{\pi}{9} + \frac{\sqrt{3}}{6}\right) $$
$$ = \sqrt{3} + \frac{\pi}{3} + \frac{2\pi}{9} + \frac{\sqrt{3}}{3} = \frac{4\sqrt{3}}{3} + \frac{5\pi}{9} $$
解説
空間図形における $\angle APB > 90^\circ$ という条件を、ベクトルの内積 $\overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PB} < 0$ に翻訳して処理することが基本となる。
本問の最大の難所は (3) における面 $ACD$(および $BCD$)と球面 $S$ の交わりの特定である。 これを空間座標を設定し、平面の方程式と球面の方程式を連立して切り口の円の中心と半径を直接計算することも可能であるが、計算量が膨大になりやすい。 解答のように、平面上における $\overrightarrow{PA} \cdot \overrightarrow{PB} < 0$ の条件を、空間から平面への正射影(垂線の足 $H$)を用いて解釈し直すことで、切り口が「線分 $AH$ を直径とする円」であることが図形的に一目瞭然となる。 このようにベクトルと幾何的考察を組み合わせることで、計算を大幅に削減しつつ正確に見通しを立てることができる。
答え
(1)
線分 $AB$ の中点を中心とする半径 $1$ の球の内部(または、線分 $AB$ を直径とする球面の内部)
(2)
$\frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{\pi}{6}$
(3)
$\frac{4\sqrt{3}}{3} + \frac{5\pi}{9}$
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