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東京大学 1996年 文系 第1問 解説

旧課程/行列・一次変換テーマ/場合分けテーマ/存在証明
東京大学 1996年 文系 第1問 解説

方針・初手

行列の2次方程式が与えられているため、行列 $X$ の成分を直接代入して各成分についての連立方程式を解く方針か、2次正方行列であることからケーリー・ハミルトンの定理を用いて次数下げや係数比較を行う方針が考えられる。どちらでも計算量は多くない。$x, y$ が実数であるという条件に注意して、場合分けや実数解をもつ条件(判別式や根号の中身が非負など)を適切に処理する。

解法1

$X = \begin{pmatrix} x & -y \\ y & x \end{pmatrix}$ より、$X^2$ を計算すると

$$ X^2 = \begin{pmatrix} x & -y \\ y & x \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x & -y \\ y & x \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x^2-y^2 & -2xy \\ 2xy & x^2-y^2 \end{pmatrix} $$

となる。与えられた等式 $X^2 - 2X + aE = O$ に代入すると

$$ \begin{pmatrix} x^2-y^2 & -2xy \\ 2xy & x^2-y^2 \end{pmatrix} - \begin{pmatrix} 2x & -2y \\ 2y & 2x \end{pmatrix} + \begin{pmatrix} a & 0 \\ 0 & a \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} $$

$$ \begin{pmatrix} x^2-y^2-2x+a & -2xy+2y \\ 2xy-2y & x^2-y^2-2x+a \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} $$

両辺の成分を比較して、次の連立方程式を得る。

$$ \begin{cases} x^2 - y^2 - 2x + a = 0 \quad \cdots \text{①} \\ 2y(x - 1) = 0 \quad \cdots \text{②} \end{cases} $$

②より、$y = 0$ または $x = 1$ である。それぞれについて場合分けを行う。

(i)

$y = 0$ のとき

①に代入して整理すると

$$ x^2 - 2x + a = 0 $$

$x$ は実数であるから、この $x$ についての2次方程式は実数解をもたなければならない。判別式を $D$ とすると

$$ \frac{D}{4} = (-1)^2 - 1 \cdot a = 1 - a \geqq 0 $$

よって、$a \leqq 1$ のとき実数 $x$ が存在し、その値は

$$ x = 1 \pm \sqrt{1 - a} $$

となる。

(ii)

$x = 1$ のとき

①に代入して整理すると

$$ 1^2 - y^2 - 2 \cdot 1 + a = 0 $$

$$ y^2 = a - 1 $$

$y$ は実数であるから、$y^2 \geqq 0$ より

$$ a - 1 \geqq 0 \iff a \geqq 1 $$

このとき、実数 $y$ が存在し、その値は

$$ y = \pm \sqrt{a - 1} $$

となる。

以上 (i), (ii) より、実数 $a$ の値によって次のように分類される。 $a < 1$ のとき、(i) のみ適し、$(x, y) = (1 \pm \sqrt{1 - a}, 0)$ である。 $a = 1$ のとき、(i), (ii) ともに $(x, y) = (1, 0)$ となり一致する。 $a > 1$ のとき、(ii) のみ適し、$(x, y) = (1, \pm \sqrt{a - 1})$ である。

解法2

2次正方行列 $X = \begin{pmatrix} x & -y \\ y & x \end{pmatrix}$ に対して、ケーリー・ハミルトンの定理より

$$ X^2 - (x + x)X + \{x \cdot x - (-y) \cdot y\}E = O $$

すなわち

$$ X^2 - 2xX + (x^2 + y^2)E = O \quad \cdots \text{③} $$

が成り立つ。

一方、問題の条件より

$$ X^2 - 2X + aE = O \quad \cdots \text{④} $$

である。③から④を辺々引くと、$X^2$ の項が消去されて

$$ -2(x - 1)X + (x^2 + y^2 - a)E = O $$

$$ 2(x - 1) \begin{pmatrix} x & -y \\ y & x \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x^2 + y^2 - a & 0 \\ 0 & x^2 + y^2 - a \end{pmatrix} $$

両辺の $(1, 2)$ 成分(または $(2, 1)$ 成分)を比較すると

$$ -2y(x - 1) = 0 \iff y = 0 \text{ または } x = 1 $$

これ以降は解法1と同様に場合分けを行って $x, y$ の値を求め、実数条件から $a$ の値による場合分けに帰着する。

解説

行列 $X$ は複素数 $z = x + yi$ に対応する行列表現(表現行列)の形をしている。実際、$X^2 - 2X + aE = O$ という式は、複素数 $z$ が $z^2 - 2z + a = 0$ を満たすことと同値である。 方程式 $z^2 - 2z + a = 0$ を解くと、$z = 1 \pm \sqrt{1 - a}$ となる。 $a \leqq 1$ のときは根号内が非負なので $z$ は実数となり、$x = 1 \pm \sqrt{1-a}$、$y = 0$ に対応する。 $a > 1$ のときは根号内が負なので $z = 1 \pm \sqrt{a-1} i$ という虚数となり、$x = 1$、$y = \pm \sqrt{a-1}$ に対応する。 このように複素数との対応関係を知っていれば、答えの予測が容易に立つ問題である。記述式答案としては、成分比較やケーリー・ハミルトンの定理を用いて地道に同値変形していくのが確実である。また、$x, y$ が「実数」であることを忘れずに、文字式の2乗が0以上になる条件や判別式によって $a$ の範囲による場合分けを落とさないことが重要である。

答え

$a < 1$ のとき、$(x, y) = (1 \pm \sqrt{1 - a}, 0)$

$a = 1$ のとき、$(x, y) = (1, 0)$

$a > 1$ のとき、$(x, y) = (1, \pm \sqrt{a - 1})$

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