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東京大学 1987年 文系 第1問 解説

旧課程/行列・一次変換数学1/方程式不等式テーマ/軌跡・領域テーマ/場合分け
東京大学 1987年 文系 第1問 解説

方針・初手

行列の成分を直接計算して条件式に代入する方法、ケーリー・ハミルトンの定理を利用して次数を下げる方法、または実対称行列であることを利用して固有値から迫る方法などが考えられる。 いずれの解法においても、非対角成分 $z$ が実数であるという条件から、$z^2 \geqq 0$ という不等式を導き、$x$ の変域を正しく絞り込むことが最重要の着眼点である。

解法1

$X = \begin{pmatrix} x & z \\ z & y \end{pmatrix}$ のとき、$X^2$ は次のように計算できる。

$$ X^2 = \begin{pmatrix} x & z \\ z & y \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x & z \\ z & y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x^2+z^2 & z(x+y) \\ z(x+y) & y^2+z^2 \end{pmatrix} $$

これを条件式 $X^2 - 4X + 3E = O$ に代入する。

$$ \begin{pmatrix} x^2+z^2 - 4x + 3 & z(x+y) - 4z \\ z(x+y) - 4z & y^2+z^2 - 4y + 3 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} $$

各成分を比較して、以下の連立方程式を得る。

$$ \begin{cases} x^2+z^2 - 4x + 3 = 0 & \cdots (1) \\ z(x+y-4) = 0 & \cdots (2) \\ y^2+z^2 - 4y + 3 = 0 & \cdots (3) \end{cases} $$

(2) より、$z = 0$ または $x+y-4 = 0$ である。

(i)

$z = 0$ のとき

(1), (3) はそれぞれ $x^2 - 4x + 3 = 0$, $y^2 - 4y + 3 = 0$ となる。これを解くと、

$$ (x-1)(x-3) = 0 \iff x = 1, 3 $$

$$ (y-1)(y-3) = 0 \iff y = 1, 3 $$

このとき $z=0$ は実数であるから条件を満たす。 よって、$(x, y)$ の組として $(1, 1), (1, 3), (3, 1), (3, 3)$ の4点が得られる。

(ii)

$x+y-4 = 0$ のとき

$y = -x + 4$ である。これを (1) から得られる $z^2 = -x^2 + 4x - 3$ に注意しつつ、(3) に代入すると、

$$ (-x+4)^2 + (-x^2 + 4x - 3) - 4(-x+4) + 3 = 0 $$

これは恒等的に成り立つため、(1) を満たせば (3) も自動的に満たされる。 行列の成分 $z$ は実数であるから、$z^2 \geqq 0$ が必要である。(1) より、

$$ -x^2 + 4x - 3 \geqq 0 \iff x^2 - 4x + 3 \leqq 0 \iff (x-1)(x-3) \leqq 0 $$

$$ 1 \leqq x \leqq 3 $$

このとき $y = -x + 4$ であり、各 $x$ に対して $z = \pm\sqrt{-x^2+4x-3}$ と実数 $z$ が確かに存在する。 これにより、点 $(x, y)$ は線分 $y = -x + 4 \ (1 \leqq x \leqq 3)$ 上にあるとわかる。 なお、(i) で得られた $(1, 3)$ と $(3, 1)$ はこの線分の両端点として含まれる。

(i), (ii) より、求める点 $(x, y)$ の存在範囲は、 点 $(1, 1)$、点 $(3, 3)$、および線分 $y = -x + 4 \ (1 \leqq x \leqq 3)$ である。

解法2

ケーリー・ハミルトンの定理より、行列 $X = \begin{pmatrix} x & z \\ z & y \end{pmatrix}$ は以下の式を満たす。

$$ X^2 - (x+y)X + (xy - z^2)E = O $$

与えられた条件式 $X^2 - 4X + 3E = O$ と辺々引くと、$X^2$ が消去されて次式を得る。

$$ (x+y-4)X = (xy - z^2 - 3)E $$

(i)

$x+y-4 \neq 0$ のとき

$$ X = \frac{xy - z^2 - 3}{x+y-4} E $$

右辺は単位行列の実数倍であるから、行列 $X$ は $X = \begin{pmatrix} k & 0 \\ 0 & k \end{pmatrix}$ ($k$ は実数)という形のスカラー行列である。 すなわち $x=k, y=k, z=0$ である。 これを元の条件式 $X^2 - 4X + 3E = O$ に代入すると、

$$ (k^2 - 4k + 3)E = O \iff (k-1)(k-3) = 0 \iff k = 1, 3 $$

よって $(x, y) = (1, 1)$ または $(3, 3)$ となる。 これらは $x+y-4 \neq 0$ の条件を満たしている($1+1-4 \neq 0$, $3+3-4 \neq 0$)。

(ii)

$x+y-4 = 0$ のとき

$(x+y-4)X = O$ となるため、右辺も $(xy - z^2 - 3)E = O$ でなければならず、$xy - z^2 - 3 = 0$ が得られる。 $y = -x + 4$ を代入して $z^2$ について解くと、

$$ z^2 = x(-x + 4) - 3 = -x^2 + 4x - 3 $$

$z$ は実数であるから、$z^2 \geqq 0$ より

$$ -x^2 + 4x - 3 \geqq 0 \iff 1 \leqq x \leqq 3 $$

この範囲において実数 $z$ が存在し、条件を満たす。 よって、点 $(x, y)$ の範囲は線分 $y = -x + 4 \ (1 \leqq x \leqq 3)$ である。

以上より、求める領域が得られる。

解法3

行列 $X$ は実対称行列であるから、適当な直交行列 $P$ を用いて対角化可能である。 $X$ の固有値を $\alpha, \beta$ とすると、$P^{-1}XP = \begin{pmatrix} \alpha & 0 \\ 0 & \beta \end{pmatrix}$ と表せる。 条件式 $X^2 - 4X + 3E = O$ の両辺に左から $P^{-1}$、右から $P$ を掛けると、

$$ (P^{-1}XP)^2 - 4(P^{-1}XP) + 3E = O $$

$$ \begin{pmatrix} \alpha^2 - 4\alpha + 3 & 0 \\ 0 & \beta^2 - 4\beta + 3 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 0 & 0 \\ 0 & 0 \end{pmatrix} $$

よって $(\alpha-1)(\alpha-3) = 0$ かつ $(\beta-1)(\beta-3) = 0$ となり、$\alpha, \beta \in \{1, 3\}$ である。 また、行列のトレース(対角成分の和)と行列式の性質から、固有値と成分の間には次の関係が成り立つ。

$$ \begin{cases} \mathrm{tr}(X) = x + y = \alpha + \beta \\ \det(X) = xy - z^2 = \alpha\beta \end{cases} $$

(i)

$\{\alpha, \beta\} = \{1, 1\}$ のとき

固有値がすべて $1$ の対称行列は単位行列に限られるため、$X = E$ である。 よって $x=1, y=1$ となり、点 $(1, 1)$ を得る。

(ii)

$\{\alpha, \beta\} = \{3, 3\}$ のとき

同様に $X = 3E$ であり、$x=3, y=3$ となり、点 $(3, 3)$ を得る。

(iii)

$\{\alpha, \beta\} = \{1, 3\}$ のとき

$\alpha + \beta = 4$、$\alpha\beta = 3$ であるから、

$$ \begin{cases} x + y = 4 \\ xy - z^2 = 3 \end{cases} $$

$y = -x + 4$ を第2式に代入すると、

$$ x(-x + 4) - z^2 = 3 \iff z^2 = -x^2 + 4x - 3 $$

$z$ は実数であるから $z^2 \geqq 0$ より、

$$ -x^2 + 4x - 3 \geqq 0 \iff 1 \leqq x \leqq 3 $$

よって、点 $(x, y)$ は線分 $y = -x + 4 \ (1 \leqq x \leqq 3)$ 上を動く。

以上より、求める範囲が得られる。

解説

2次正方行列の決定問題において、$X^2$ のような累乗が含まれる場合は「成分で直接計算する」か「ケーリー・ハミルトンの定理で次数を下げる」のが定石である。どちらのアプローチでもスムーズに解答できる。 本問で最も差がつくポイントは、非対角成分の $z$ が見かけ上消去されてしまう関係式から、「$z$ が実数として存在するための条件 $z^2 \geqq 0$」を自ら引き出せるかどうかである。これを忘れると直線 $x+y=4$ 全体を答えてしまうため、隠れた条件に気付く注意力が必要とされる。

答え

座標平面上において、点 $(x, y)$ が存在する範囲は以下の通りである。

図示すると、直線 $y = -x + 4$ 上の $1 \leqq x \leqq 3$ の実線部分と、直線外にある2点 $(1, 1), (3, 3)$ の点集合となる。

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