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京都大学 1985年 文系 第2問 解説

旧課程/行列・一次変換数学C/平面ベクトル数学2/図形と式テーマ/場合分けテーマ/存在証明
京都大学 1985年 文系 第2問 解説

方針・初手

条件②から、1次変換 $f$ によって3点 $A, B, C$ は全体として自分自身の集合にうつるため、$f$ はこの3点の置換(並べ替え)を引き起こすことがわかる。 置換のパターンとして、「3点とも動かない」「1点だけ動かない」「3点とも動く」の3つの場合が考えられる。条件①と③を用いて、「3点とも動かない」場合と「3点とも動く」場合が起こり得ないことを背理法によって示す。

解法1

点 $A, B, C$ の位置ベクトルをそれぞれ $\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$ とする。 条件② $\{f(A), f(B), f(C)\} = \{A, B, C\}$ より、$f$ による点 $A, B, C$ の行き先は、これらの置換となる。 置換のパターンは以下の3通りに分類できる。

(ア) 3点とも動かない場合(恒等置換) (イ) 1点が動かず、残り2点が入れ替わる場合(互換) (ウ) 3点とも動く場合(巡回置換)

これらについて順番に検討する。

(ア) の場合

$f(A) = A, f(B) = B, f(C) = C$ となる。 条件①より $A, B, C$ は同一直線上にないため、$\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$ のうち少なくとも2つは1次独立である。(もしどの2つも1次従属であれば、3点は原点を通る同一直線上に並んでしまい矛盾する。) 1次独立な2つのベクトル(例えば $\vec{a}, \vec{b}$)に対して $f(\vec{a}) = \vec{a}, f(\vec{b}) = \vec{b}$ が成り立つならば、任意のベクトル $\vec{x}$ に対して $f(\vec{x}) = \vec{x}$ となる。 すなわち $f$ は恒等変換 $E$ となるが、これは条件③に矛盾する。

(ウ) の場合

3点とも動かない点がないため、$f(A) = B, f(B) = C, f(C) = A$ または $f(A) = C, f(B) = A, f(C) = B$ のいずれかである。 一般性を失わず、$f(\vec{a}) = \vec{b}, f(\vec{b}) = \vec{c}, f(\vec{c}) = \vec{a}$ の場合を考える。 (ア) で述べたように、$\vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$ のうち少なくとも2つは1次独立である。ここでも一般性を失わず、$\vec{a}, \vec{b}$ が1次独立であるとする。 このとき、$\vec{c}$ は実数 $s, t$ を用いて以下のように一意に表せる。

$$ \vec{c} = s\vec{a} + t\vec{b} $$

この両辺を $f$ で変換すると、線形性より以下の式が得られる。

$$ f(\vec{c}) = s f(\vec{a}) + t f(\vec{b}) $$

$$ \vec{a} = s\vec{b} + t\vec{c} $$

この式の $\vec{c}$ に $\vec{c} = s\vec{a} + t\vec{b}$ を代入する。

$$ \vec{a} = s\vec{b} + t(s\vec{a} + t\vec{b}) $$

$$ \vec{a} = ts\vec{a} + (s + t^2)\vec{b} $$

$\vec{a}, \vec{b}$ は1次独立であるから、両辺の係数を比較して以下の連立方程式を得る。

$$ \begin{cases} 1 = ts \\ 0 = s + t^2 \end{cases} $$

第1式より $s = \frac{1}{t}$ であるから、これを第2式に代入する。

$$ \frac{1}{t} + t^2 = 0 $$

$$ t^3 = -1 $$

$t$ は実数であるから $t = -1$ となる。このとき $s = -1$ である。 したがって、$\vec{c} = -\vec{a} - \vec{b}$ となり、これを変形すると以下のようになる。

$$ \vec{a} + \vec{b} + \vec{c} = \vec{0} $$

$$ \frac{\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}}{3} = \vec{0} $$

この式は、三角形 $ABC$ の重心が原点 $O$ に一致することを示している。 三角形の重心はその内部の点(各頂点の重みが正で和が1の凸結合)であるため、原点 $O$ が三角形 $ABC$ の内部にあることになり、条件①に矛盾する。 逆回りの置換 $f(\vec{a}) = \vec{c}, f(\vec{b}) = \vec{a}, f(\vec{c}) = \vec{b}$ の場合も同様にして矛盾が導かれる。 よって、(ウ) の場合は起こり得ない。

以上より、(ア) と (ウ) の可能性が否定されたため、残る置換のパターンは (イ) のみとなる。 すなわち、3点 $A, B, C$ のうち $f$ によって動かないものは1つだけ存在することが示された。

解説

1次変換が有限個の点を自分自身にうつすという条件を、点の置換(並べ替え)として捉えることが第一歩である。 特に「3点すべてが動く(巡回置換)」という仮定から、ベクトルの1次独立性と1次変換の線形性を用いて $A+B+C=0$ (重心が原点)を導き出し、条件①と矛盾させる論証が本問の核心となる。 論理の飛躍を防ぐため、なぜベクトルの組が1次独立と言えるのか(同一直線上にないという条件の活用)を明記することが重要である。

答え

本問は証明問題であり、解法1の論証によって題意が示された。

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