トップ 基礎問題 数学2 図形と式 点と直線の距離 問題 3

数学2 点と直線の距離 問題 3 解説

数学2 点と直線の距離 問題 3 解説

方針・初手

点から直線に下ろした垂線の長さを求めることが目標である。中学校で学ぶような図形的性質(相似や三平方の定理)を用いて証明することも可能だが、直線が座標軸と平行な場合などでの場合分けが発生し、記述が煩雑になりやすい。 ここではベクトルを用いることで、座標軸との関係に依存せず、すべての直線を統一的に扱って簡潔に証明する方針をとる。直線の法線ベクトル $\vec{n}=(a, b)$ に着目することがポイントとなる。

解法1

直線 $ax+by+c=0$ を $l$ とし、点 $(x_0, y_0)$ を $\mathrm{P}$ とする。 $l$ は直線を表す方程式であるから、$a \neq 0$ または $b \neq 0$、すなわち $a^2+b^2 \neq 0$ である。 点 $\mathrm{P}$ から直線 $l$ に下ろした垂線の足を $\mathrm{H}(x_1, y_1)$ とおくと、求める距離 $d$ は線分 $\mathrm{PH}$ の長さ $|\vec{\mathrm{PH}}|$ である。

点 $\mathrm{H}$ は直線 $l$ 上の点であるから、

$$ax_1+by_1+c=0$$

が成り立つ。 一方、直線 $l$ の法線ベクトルの一つを $\vec{n} = (a, b)$ とすると、ベクトル $\vec{\mathrm{PH}}$ は $\vec{n}$ と平行である。 したがって、実数 $k$ を用いて

$$\vec{\mathrm{PH}} = k\vec{n}$$

と表すことができる。成分で比較すると $(x_1-x_0, y_1-y_0) = (ka, kb)$ となり、

$$\begin{cases} x_1 = x_0 + ka \\ y_1 = y_0 + kb \end{cases}$$

を得る。これらを $ax_1+by_1+c=0$ に代入すると、

$$a(x_0+ka) + b(y_0+kb) + c = 0$$

$$ax_0 + by_0 + c + k(a^2+b^2) = 0$$

となる。$a^2+b^2 \neq 0$ であるから、$k$ について解くと

$$k = -\frac{ax_0+by_0+c}{a^2+b^2}$$

となる。求める距離 $d$ は $|\vec{\mathrm{PH}}|$ であるから、

$$d = |\vec{\mathrm{PH}}| = |k\vec{n}| = |k||\vec{n}|$$

$$d = \left| -\frac{ax_0+by_0+c}{a^2+b^2} \right| \sqrt{a^2+b^2}$$

$$d = \frac{|ax_0+by_0+c|}{a^2+b^2} \sqrt{a^2+b^2} = \frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$

以上より、点 $(x_0, y_0)$ と直線 $ax+by+c=0$ の距離は $\frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$ であることが示された。

解法2

直線 $ax+by+c=0$ を $l$、点 $(x_0, y_0)$ を $\mathrm{P}$ とする。 直線 $l$ 上に任意の点 $\mathrm{A}(x_1, y_1)$ をとると、

$$ax_1+by_1+c=0$$

すなわち $ax_1+by_1 = -c$ が成り立つ。 点 $\mathrm{P}$ から直線 $l$ に下ろした垂線の足を $\mathrm{H}$ とし、直線 $l$ の法線ベクトルの一つを $\vec{n} = (a, b)$ とする。 求める距離 $d$ は線分 $\mathrm{PH}$ の長さである。

ベクトル $\vec{\mathrm{AP}}$ と $\vec{n}$ のなす角を $\theta \ (0 \leqq \theta \leqq \pi)$ とすると、直角三角形 $\mathrm{APH}$ の幾何的な関係から、$\theta$ が鋭角・鈍角・直角いずれの場合であっても、

$$\mathrm{PH} = |\vec{\mathrm{AP}}| |\cos \theta|$$

が成り立つ。ここで、内積の定義より

$$|\vec{\mathrm{AP}} \cdot \vec{n}| = |\vec{\mathrm{AP}}| |\vec{n}| |\cos \theta| = (|\vec{\mathrm{AP}}| |\cos \theta|) |\vec{n}| = \mathrm{PH} \cdot |\vec{n}| = d |\vec{n}|$$

となるため、求める距離 $d$ は次のように表せる。

$$d = \frac{|\vec{\mathrm{AP}} \cdot \vec{n}|}{|\vec{n}|}$$

成分を用いて計算すると、$\vec{\mathrm{AP}} = (x_0-x_1, y_0-y_1)$ であるから、内積は

$$\vec{\mathrm{AP}} \cdot \vec{n} = a(x_0-x_1) + b(y_0-y_1) = ax_0 + by_0 - (ax_1 + by_1)$$

となる。ここで $ax_1+by_1 = -c$ を代入すると、

$$\vec{\mathrm{AP}} \cdot \vec{n} = ax_0 + by_0 - (-c) = ax_0 + by_0 + c$$

を得る。また、法線ベクトルの大きさは $|\vec{n}| = \sqrt{a^2+b^2}$ である。 これらを $d$ の式に代入すると、

$$d = \frac{|ax_0+by_0+c|}{\sqrt{a^2+b^2}}$$

となり、示された。

解説

教科書で学ぶ「点と直線の距離の公式」そのものを証明させる、入試では典型的な証明問題である。 公式の丸暗記に頼らず、その背景にある原理を理解しているかが問われている。 解法1は、垂線の足の座標を文字で置き、直線の方程式と法線ベクトルの条件からその座標(今回は実数倍のパラメータ $k$)を直接求める、最も実直な方法である。 解法2は、「正射影ベクトル」の考え方に基づく証明である。ベクトル $\vec{\mathrm{AP}}$ を法線ベクトル $\vec{n}$ がなす直線上に正射影したベクトルの大きさが求める距離 $d$ になるという事実を利用しており、計算量が少なく非常にスマートである。この考え方は、3次元空間における「点と平面の距離の公式」の証明にも全く同じ形で応用できるため、発展性のある重要な手法である。

答え

題意の通り、公式が成り立つことが証明された。

自分の記録

ログインすると保存できます。

誤りを報告

問題文の写しミス、解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。