数学3 極限 問題 8 解説

方針・初手
$x \to -\infty$ における極限の問題である。負の無限大への極限では、$\sqrt{x^2} = |x| = -x$ となるため、符号の扱いでミスが起こりやすい。この計算ミスを防ぐための定石として、$x = -t$ と置き換え、$t \to \infty$ の極限として考えるのが有効である。
また、極限が有限確定値になるためには、最高次数の項が打ち消し合う形($\infty - \infty$ の不定形)になる必要があるという点に着目して、定数 $a$ の値を絞り込む。
解法1
$x \to -\infty$ の極限を考えやすくするため、$x = -t$ とおく。$x \to -\infty$ のとき、$t \to \infty$ である。 与えられた極限の式は、次のように書き換えられる。
$$\lim_{t \to \infty} (\sqrt{at^2 - bt} - t) = -1$$
この極限が有限の値($-1$)になるための条件を考える。 $a < 0$ のとき、十分大きい $t$ に対して根号の中身が負になるため不適である。 $a = 0$ のとき、与式は $\lim_{t \to \infty} (\sqrt{-bt} - t) = -1$ となる。$b < 0$ のとき根号内は正になるが、極限は $-\infty$ に発散するため不適である。 したがって、$a > 0$ である必要がある。
$a > 0$ のとき、極限の式を次のように変形する。
$$\lim_{t \to \infty} (\sqrt{at^2 - bt} - t) = \lim_{t \to \infty} t \left(\sqrt{a - \frac{b}{t}} - 1\right)$$
$t \to \infty$ のとき $t \to \infty$ であるから、この極限が有限確定値を持つためには、括弧内の極限が $0$ になることが必要である。
$$\lim_{t \to \infty} \left(\sqrt{a - \frac{b}{t}} - 1\right) = 0$$
これより、$\sqrt{a} - 1 = 0$ となり、$a = 1$ が必要である。
$a = 1$ のとき、極限の式は $\lim_{t \to \infty} (\sqrt{t^2 - bt} - t) = -1$ となる。 左辺の極限を計算するために、分子と分母に $\sqrt{t^2 - bt} + t$ を掛けて「分子の有理化」を行う。
$$\begin{aligned} \lim_{t \to \infty} (\sqrt{t^2 - bt} - t) &= \lim_{t \to \infty} \frac{(\sqrt{t^2 - bt} - t)(\sqrt{t^2 - bt} + t)}{\sqrt{t^2 - bt} + t} \\ &= \lim_{t \to \infty} \frac{(t^2 - bt) - t^2}{\sqrt{t^2 - bt} + t} \\ &= \lim_{t \to \infty} \frac{-bt}{\sqrt{t^2 - bt} + t} \end{aligned}$$
分母と分子を $t$ で割る。$t \to \infty$ より $t > 0$ としてよく、分母の根号の中には $t^2$ として入れることができる。
$$\begin{aligned} \lim_{t \to \infty} \frac{-b}{\sqrt{1 - \frac{b}{t}} + 1} &= \frac{-b}{\sqrt{1 - 0} + 1} \\ &= -\frac{b}{2} \end{aligned}$$
この極限値が $-1$ に等しいので、次の方程式が成り立つ。
$$-\frac{b}{2} = -1$$
これを解いて、$b = 2$ を得る。 以上より、$a = 1, b = 2$ であり、逆にこのとき与式は満たされる。
解法2
置き換えを行わず、$x \to -\infty$ のまま計算する。 解法1と同様の議論により、$a > 0$ であることが必要である。
極限を計算するために、分子の有理化を行う。
$$\begin{aligned} \sqrt{ax^2+bx} + x &= \frac{(\sqrt{ax^2+bx} + x)(\sqrt{ax^2+bx} - x)}{\sqrt{ax^2+bx} - x} \\ &= \frac{(ax^2+bx) - x^2}{\sqrt{ax^2+bx} - x} \\ &= \frac{(a-1)x^2 + bx}{\sqrt{ax^2+bx} - x} \end{aligned}$$
$x \to -\infty$ を考えるので、$x < 0$ としてよい。 分母と分子を $x$ で割る。このとき、$x = -\sqrt{x^2}$ であることに注意して、分母の根号内は $x^2$ で割りつつ、根号の前にマイナスをつける。
$$\frac{(a-1)x^2 + bx}{\sqrt{ax^2+bx} - x} = \frac{(a-1)x + b}{-\sqrt{a + \frac{b}{x}} - 1}$$
$x \to -\infty$ のとき、分母は $-\sqrt{a} - 1$ (定数)に収束する。 このとき、全体が有限確定値に収束するためには、分子が発散しないこと、すなわち $x$ の係数が $0$ であることが必要である。
$$a - 1 = 0$$
よって、$a = 1$ である。このとき、式は次のように簡略化される。
$$\lim_{x \to -\infty} \frac{b}{-\sqrt{1 + \frac{b}{x}} - 1} = \frac{b}{-\sqrt{1} - 1} = -\frac{b}{2}$$
この極限値が $-1$ であるから、
$$-\frac{b}{2} = -1$$
これを解いて、$b = 2$ を得る。
解説
負の無限大への極限における最大の罠は、$x < 0$ のときに $x = \sqrt{x^2}$ ではなく $x = -\sqrt{x^2}$ となる点である。解法2のように直接計算することも可能だが、符号の取り扱いによるミスを誘発しやすいため、解法1のように $x = -t$ と置換し、正の無限大への極限 $t \to \infty$ に帰着させる方針が安全かつ標準的である。
また、$\lim (\text{無理式} + \text{多項式}) = \text{定数}$ となる条件から、まず最高次の項が相殺して $\infty - \infty$ の形になるように定数 $a$ を決定し、その後「分子の有理化」によって定数 $b$ を決定するという流れは、極限の未定係数決定問題における頻出の処理である。
答え
$a = 1, b = 2$
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