数学3 確率・極限 問題 3 解説

注意
画像の一部が不鮮明で、特に (2) の極限記号 $\lim$ の下部($n \to \infty$ など)の読取りに不確実性があります。前後の文脈と式の形から、以下は $\lim_{n \to \infty}$ として解釈した場合の解答解説です。
方針・初手
- (1)(ア) は、$T$ がとる値 $k$ ごとに確率を立式する。$k=n$ の場合だけ、それ以降の試行がないため「$n$回目に表が出た」と「$n$回とも裏だった」の両方を含むことに注意する。
- (1)(イ) は、期待値の定義に従って「(等差数列) $\times$ (等比数列)」の和の形を作り、公比を掛けて引く定石の処理を行う。
- (2) は、代入して整理したのち、自然対数の底 $e$ の定義式 $\lim_{n \to \infty}\left(1+\frac{1}{n}\right)^n = e$ に帰着させる変形を行う。
解法1
(1) (ア)
$T=k \ (1 \leqq k \leqq n-1)$ となるのは、最初の $k-1$ 回が裏で、第 $k$ 回で初めて表が出る場合である。 1回の試行で表が出る確率は $p$、裏が出る確率は $1-p$ であるから、
$$P(T=k) = (1-p)^{k-1} p \quad (k=1, 2, \dots, n-1)$$
$T=n$ となるのは、「$n$回目に初めて表が出る」または「$n$回とも表が出ない」場合である。これは「最初の $n-1$ 回がすべて裏である」ことと同値であるため、
$$P(T=n) = (1-p)^{n-1}$$
(1) (イ)
期待値の定義より、$E(T)$ は次のようになる。
$$E(T) = \sum_{k=1}^{n-1} k P(T=k) + n P(T=n) = \sum_{k=1}^{n-1} k (1-p)^{k-1} p + n (1-p)^{n-1}$$
ここで、$S = \sum_{k=1}^{n-1} k (1-p)^{k-1}$ とおく。
$$S = 1 + 2(1-p) + 3(1-p)^2 + \cdots + (n-1)(1-p)^{n-2}$$
両辺に $1-p$ をかけると、
$$(1-p)S = (1-p) + 2(1-p)^2 + \cdots + (n-2)(1-p)^{n-2} + (n-1)(1-p)^{n-1}$$
上の式から下の式を辺々引くと、
$$\begin{aligned} S - (1-p)S &= 1 + (1-p) + (1-p)^2 + \cdots + (1-p)^{n-2} - (n-1)(1-p)^{n-1} \\ pS &= \frac{1 - (1-p)^{n-1}}{1 - (1-p)} - (n-1)(1-p)^{n-1} \\ pS &= \frac{1 - (1-p)^{n-1}}{p} - (n-1)(1-p)^{n-1} \end{aligned}$$
したがって、$E(T)$ は次のように計算できる。
$$\begin{aligned} E(T) &= p S + n(1-p)^{n-1} \\ &= \left\{ \frac{1 - (1-p)^{n-1}}{p} - (n-1)(1-p)^{n-1} \right\} + n(1-p)^{n-1} \\ &= \frac{1 - (1-p)^{n-1}}{p} + (1-p)^{n-1} \\ &= \frac{1 - (1-p)^{n-1} + p(1-p)^{n-1}}{p} \\ &= \frac{1 - (1-p)^{n-1}(1-p)}{p} \\ &= \frac{1 - (1-p)^n}{p} \end{aligned}$$
(2)
(1)(イ)の結果より、$f_n(p) = \frac{1 - (1-p)^n}{p}$ である。 与えられた式の $p$ に $\frac{1}{n}$ を代入すると、
$$\begin{aligned} \frac{1}{n} f_n\left(\frac{1}{n}\right) &= \frac{1}{n} \cdot \frac{1 - \left(1 - \frac{1}{n}\right)^n}{\frac{1}{n}} \\ &= 1 - \left(1 - \frac{1}{n}\right)^n \end{aligned}$$
ここで、$n \to \infty$ のときの $\left(1 - \frac{1}{n}\right)^n$ の極限を求める。底を $e$ の定義式に合わせるように変形すると、
$$\begin{aligned} \left(1 - \frac{1}{n}\right)^n &= \left(\frac{n-1}{n}\right)^n \\ &= \frac{1}{\left(\frac{n}{n-1}\right)^n} \\ &= \frac{1}{\left(1 + \frac{1}{n-1}\right)^n} \\ &= \frac{1}{\left(1 + \frac{1}{n-1}\right)^{n-1} \left(1 + \frac{1}{n-1}\right)} \end{aligned}$$
$n \to \infty$ のとき、$n-1 \to \infty$ であるから、$\lim_{n \to \infty} \left(1 + \frac{1}{n-1}\right)^{n-1} = e$ である。また、$\lim_{n \to \infty} \left(1 + \frac{1}{n-1}\right) = 1$ である。 したがって、
$$\lim_{n \to \infty} \left(1 - \frac{1}{n}\right)^n = \frac{1}{e \cdot 1} = \frac{1}{e}$$
よって、求める極限値は、
$$\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} f_n\left(\frac{1}{n}\right) = 1 - \frac{1}{e}$$
解法2
(1) (イ) の別解
確率変数 $T$ がとりうる値は $1, 2, \dots, n$ である。 非負の整数値をとる確率変数 $T$ について、期待値は次のように $T > k$ となる確率の和として表される。
$$E(T) = \sum_{k=0}^{n-1} P(T > k)$$
事象 $T > k \ (0 \leqq k \leqq n-1)$ は、「最初の $k$ 回がすべて裏である」ことと同値であるため、その確率は
$$P(T > k) = (1-p)^k$$
となる。
これを $k=0$ から $n-1$ まで足し合わせると、初項 $1$、公比 $1-p$、項数 $n$ の等比数列の和となる。公比 $1-p \neq 1$ より、
$$\begin{aligned} E(T) &= \sum_{k=0}^{n-1} (1-p)^k \\ &= \frac{1 - (1-p)^n}{1 - (1-p)} \\ &= \frac{1 - (1-p)^n}{p} \end{aligned}$$
解説
- 確率分布の端点の処理: $T=n$ の場合のみ、表が出るかどうかの条件が不要になる点に注意が必要である。すべての $k$ の確率の総和が $1$ になるかを確認することで、立式ミスを防ぐことができる。
- 等差×等比の和: 解法1で用いた、全体に公比(今回は $1-p$)を掛けてずらして引くという処理は、数列分野における定石である。
- 期待値の性質の利用: 解法2で用いた $E(T) = \sum P(T > k)$ という式は、生存関数を用いた期待値の表現であり、離散型の確率変数において計算量を劇的に減らせる強力な手法である。
- 極限の処理: $\lim_{n \to \infty} \left(1 - \frac{1}{n}\right)^n$ が $e^{-1}$ に収束することは有名であるが、答案に記述する際は、標準的な定義式 $\lim_{n \to \infty} \left(1 + \frac{1}{n}\right)^n = e$ の形が明確に現れるように変形するのが安全である。
答え
(1) (ア)
$$P(T=k) = \begin{cases} (1-p)^{k-1} p & (k = 1, 2, \dots, n-1) \\ (1-p)^{n-1} & (k = n) \end{cases}$$
(1) (イ)
$$E(T) = \frac{1 - (1-p)^n}{p}$$
(2)
$$1 - \frac{1}{e}$$
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