数学3 接線・極限との複合 問題 1 解説

方針・初手
被積分関数 $|\sin t|e^{-t}$ は絶対値を含んでいるため、積分区間内で符号が変化しないように、$t$ の区間を $k\pi \leqq t \leqq (k+1)\pi$ ($k$ は非負整数)に分割して考えます。各区間での定積分を数列の項として捉えることで、無限級数の和に帰着させます。
ただし、積分の上端 $x$ は実数全体を連続的に動いて無限大へ向かうため、直接 $n\pi \to \infty$ とするだけでは不十分です。「被積分関数が常に $0$ 以上である」という性質を利用して、$x$ を $n\pi \leqq x < (n+1)\pi$ を満たす整数 $n$ で挟み込み、はさみうちの原理を用いるのが定石です。
解法1
$x > 0$ に対し、実数 $x$ はある非負整数 $n$ を用いて $n\pi \leqq x < (n+1)\pi$ と表すことができる。 すべての $t \geqq 0$ において被積分関数は $|\sin t|e^{-t} \geqq 0$ を満たすため、積分の区間が広がるほど積分値は単調に非減少となる。したがって、
$$\int_{0}^{n\pi} |\sin t|e^{-t} dt \leqq \int_{0}^{x} |\sin t|e^{-t} dt \leqq \int_{0}^{(n+1)\pi} |\sin t|e^{-t} dt$$
が成り立つ。
ここで、非負整数 $k$ に対して、区間 $k\pi \leqq t \leqq (k+1)\pi$ における定積分を $I_k$ とおく。
$$I_k = \int_{k\pi}^{(k+1)\pi} |\sin t|e^{-t} dt$$
$t = u + k\pi$ と置換すると、$dt = du$ であり、$t$ が $k\pi$ から $(k+1)\pi$ まで変化するとき、$u$ は $0$ から $\pi$ まで変化する。 このとき、$\sin t = \sin(u + k\pi) = \sin u \cos k\pi + \cos u \sin k\pi = (-1)^k \sin u$ であるから、
$$|\sin t| = |(-1)^k \sin u| = |\sin u|$$
となる。積分区間 $0 \leqq u \leqq \pi$ において $\sin u \geqq 0$ であるから、$|\sin u| = \sin u$ である。よって、$I_k$ は次のように変形できる。
$$I_k = \int_{0}^{\pi} \sin u \cdot e^{-(u+k\pi)} du = e^{-k\pi} \int_{0}^{\pi} e^{-u} \sin u du$$
ここで、定積分 $J = \int_{0}^{\pi} e^{-u} \sin u du$ を部分積分法を用いて計算する。
$$J = \left[ -e^{-u} \sin u \right]_{0}^{\pi} - \int_{0}^{\pi} (-e^{-u}) \cos u du$$
$$= 0 + \int_{0}^{\pi} e^{-u} \cos u du$$
$$= \left[ -e^{-u} \cos u \right]_{0}^{\pi} - \int_{0}^{\pi} (-e^{-u}) (-\sin u) du$$
$$= ( -e^{-\pi} \cos \pi - (-e^0 \cos 0) ) - \int_{0}^{\pi} e^{-u} \sin u du$$
$$= e^{-\pi} + 1 - J$$
これより $2J = 1 + e^{-\pi}$ となるため、
$$J = \frac{1 + e^{-\pi}}{2}$$
を得る。したがって、
$$I_k = \frac{1 + e^{-\pi}}{2} (e^{-\pi})^k$$
と表せる。
次に、$S_n = \int_{0}^{n\pi} |\sin t|e^{-t} dt$ とおくと、これは $k=0$ から $n-1$ までの $I_k$ の和である。数列 $\{I_k\}$ は初項 $\frac{1 + e^{-\pi}}{2}$、公比 $e^{-\pi}$ の等比数列であるから、
$$S_n = \sum_{k=0}^{n-1} I_k = \frac{1 + e^{-\pi}}{2} \cdot \frac{1 - (e^{-\pi})^n}{1 - e^{-\pi}}$$
となる。$x \to \infty$ のとき、$n \to \infty$ であり、$0 < e^{-\pi} < 1$ より $(e^{-\pi})^n \to 0$ である。したがって、
$$\lim_{n\to\infty} S_n = \frac{1 + e^{-\pi}}{2(1 - e^{-\pi})} = \frac{e^{\pi} + 1}{2(e^{\pi} - 1)}$$
となる。また、$S_{n+1}$ についても $n \to \infty$ の極限値は同じであるため、
$$\lim_{n\to\infty} S_{n+1} = \frac{e^{\pi} + 1}{2(e^{\pi} - 1)}$$
が成り立つ。
最初にはさみこんだ不等式において、$x \to \infty$ としたとき $n \to \infty$ となるから、はさみうちの原理より、
$$\lim_{x\to\infty} \int_{0}^{x} |\sin t|e^{-t} dt = \frac{e^{\pi} + 1}{2(e^{\pi} - 1)}$$
となる。
解説
周期関数と指数関数の積からなる関数の広義積分を求める、大学入試の典型かつ重要な問題です。以下の2点が大きなポイントになります。
- 積分区間の分割と置換積分 絶対値を外すために、$0$ から $x$ までの積分を長さ $\pi$ の区間ごとに分割します。各区間を $t = u + k\pi$ と平行移動させるように置換積分することで、すべての区間の積分を「同一の定積分 $J$」と「等比数列の項」の積として表すことができます。
- 連続変数 $x$ の極限とはさみうちの原理 $x$ は実数として連続的に無限大へ向かいます。数列の和の極限(つまり $n\pi \to \infty$ の場合)だけを求めて答えとする答案は、論理的な飛躍があるとみなされ減点対象になることが多いです。「被積分関数が常に $0$ 以上である」という条件を明記し、積分値の単調性を利用して $n\pi \leqq x < (n+1)\pi$ ではさみうちの原理を適用する記述を忘れないようにしましょう。
答え
$$\frac{e^{\pi} + 1}{2(e^{\pi} - 1)}$$
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