数学3 接線・極限との複合 問題 41 解説

方針・初手
被積分関数が三角関数の累乗となっている定積分、いわゆる「ウォリス積分(Wallis積分)」に関する有名な頻出問題である。
(1) は基本的な積分計算である。半角の公式や、$\sin^2 x + \cos^2 x = 1$ を用いた変形を利用する。
(2) は積分区間における被積分関数の大小関係を評価し、積分の性質を用いて不等式を示す。
(3) は $\sin^{n+2} x = \sin^{n+1} x \sin x$ と分割し、部分積分法を用いることで漸化式を導出する。
(4) は (2) の不等式と (3) の漸化式を組み合わせ、「はさみうちの原理」を用いて極限を求める定石の流れとなっている。
解法1
(1)
それぞれの定積分を計算する。
まず、$I_1$ について、
$$I_1 = \int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin x dx = \Big[ -\cos x \Big]_0^{\frac{\pi}{2}} = -\cos\frac{\pi}{2} - (-\cos 0) = 1$$
次に、$I_2$ について、半角の公式を用いると、
$$I_2 = \int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^2 x dx = \int_0^{\frac{\pi}{2}} \frac{1 - \cos 2x}{2} dx$$
$$= \left[ \frac{1}{2}x - \frac{1}{4}\sin 2x \right]_0^{\frac{\pi}{2}} = \frac{\pi}{4}$$
最後に、$I_3$ について、$\sin^3 x = \sin x (1 - \cos^2 x)$ の変形を用いると、
$$I_3 = \int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^3 x dx = \int_0^{\frac{\pi}{2}} (1 - \cos^2 x)\sin x dx$$
$$= \int_0^{\frac{\pi}{2}} (\sin x - \cos^2 x \sin x) dx$$
$$= \left[ -\cos x + \frac{1}{3}\cos^3 x \right]_0^{\frac{\pi}{2}} = 0 - \left( -1 + \frac{1}{3} \right) = \frac{2}{3}$$
(2)
積分区間 $0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{2}$ において、$0 \leqq \sin x \leqq 1$ が成り立つ。
この各辺に $\sin^n x \geqq 0$ を掛けると、次の不等式が得られる。
$$0 \leqq \sin^{n+1} x \leqq \sin^n x$$
積分区間において被積分関数の大小関係が常に成り立つため、その定積分の値についても同じ大小関係が成り立つ。すなわち、
$$\int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^n x dx \geqq \int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^{n+1} x dx$$
定義より、$I_n \geqq I_{n+1}$ が示された。
(3)
$I_{n+2}$ の被積分関数を分割して部分積分を行う。
$$I_{n+2} = \int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^{n+2} x dx = \int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^{n+1} x \sin x dx$$
ここで、$\sin x = (-\cos x)'$ とみて部分積分法を適用すると、
$$I_{n+2} = \Big[ \sin^{n+1} x (-\cos x) \Big]_0^{\frac{\pi}{2}} - \int_0^{\frac{\pi}{2}} (n+1)\sin^n x \cos x (-\cos x) dx$$
第1項について、$x = \frac{\pi}{2}$ のとき $\cos \frac{\pi}{2} = 0$、$x = 0$ のとき $\sin 0 = 0$ であるから、値は $0$ となる。したがって、
$$I_{n+2} = (n+1) \int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^n x \cos^2 x dx$$
$\cos^2 x = 1 - \sin^2 x$ を代入して展開すると、
$$I_{n+2} = (n+1) \int_0^{\frac{\pi}{2}} \sin^n x (1 - \sin^2 x) dx$$
$$= (n+1) \int_0^{\frac{\pi}{2}} (\sin^n x - \sin^{n+2} x) dx$$
積分の線形性より、
$$I_{n+2} = (n+1) (I_n - I_{n+2})$$
この等式を展開して整理すると、
$$I_{n+2} = (n+1)I_n - (n+1)I_{n+2}$$
$$(n+2)I_{n+2} = (n+1)I_n$$
$n$ は自然数であるから $n+2 \neq 0$ であり、両辺を $n+2$ で割ることで求める漸化式が得られる。
$$I_{n+2} = \frac{n+1}{n+2} I_n$$
(4)
(2) で証明した不等式 $I_n \geqq I_{n+1}$ より、数列 $\{I_n\}$ は単調減少数列である。したがって、$2n$ 番目から $2n+2$ 番目の項について、次の大小関係が成り立つ。
$$I_{2n} \geqq I_{2n+1} \geqq I_{2n+2}$$
また、積分区間 $(0, \frac{\pi}{2})$ において常に $\sin x > 0$ であるから、その積分値である $I_{2n}$ は正の値をとる($I_{2n} > 0$)。
不等式のすべての辺を正の数 $I_{2n}$ で割ると、
$$1 \geqq \frac{I_{2n+1}}{I_{2n}} \geqq \frac{I_{2n+2}}{I_{2n}}$$
ここで、(3) で示した漸化式において $n$ を $2n$ に置き換えると、
$$I_{2n+2} = \frac{2n+1}{2n+2} I_{2n}$$
両辺を $I_{2n}$ で割ることで、次が成り立つ。
$$\frac{I_{2n+2}}{I_{2n}} = \frac{2n+1}{2n+2}$$
これを先ほどの不等式に代入すると、
$$1 \geqq \frac{I_{2n+1}}{I_{2n}} \geqq \frac{2n+1}{2n+2}$$
右辺の極限を求めると、
$$\lim_{n \to \infty} \frac{2n+1}{2n+2} = \lim_{n \to \infty} \frac{2 + \frac{1}{n}}{2 + \frac{2}{n}} = \frac{2 + 0}{2 + 0} = 1$$
左辺の極限も $1$ であるから、はさみうちの原理より、
$$\lim_{n \to \infty} \frac{I_{2n+1}}{I_{2n}} = 1$$
解説
大学入試において非常に頻出である「ウォリス積分」の標準的な導入問題である。
このようなタイプの極限問題では、まず「関数の大小評価から積分値の不等式(単調性)を作る」、次に「部分積分を用いて2つ飛ばしの漸化式を作る」という手順が定石となっている。そして、求めた漸化式と不等式を組み合わせることで、直接計算することが困難な式の極限を「はさみうちの原理」で求めることができる。
(4) で不等式を $I_{2n}$ で割る際、$I_{2n}$ が正の値であることを明記する必要がある点に注意したい。
答え
(1)
$I_1 = 1$, $I_2 = \frac{\pi}{4}$, $I_3 = \frac{2}{3}$
(2)
$I_n \geqq I_{n+1}$ が成り立つ(証明は解法1を参照)
(3)
$I_{n+2} = \frac{n+1}{n+2} I_n$ が成り立つ(証明は解法1を参照)
(4)
$1$
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