数学3 定積分・面積 問題 252 解説

方針・初手
反復試行における確率を場合の数を用いて立式し、その極限を区分求積法を用いて計算する。
事象 $A_k$ は、$k$ 回目に引いた数がそれ以前に引いたすべての数より大きいことを表す。注目すべきは $k$ 回目に引く数であるため、これを変数として固定し、残りの試行における数の選び方を数え上げる方針を取る。
解法1
(1)
1回目と2回目に引いたカードの数をそれぞれ $X_1, X_2$ とする。
事象 $A_2$ は最初の2回の試行結果のみに依存し、その条件は $X_1 < X_2$ となることである。
$X_2 = k$($1 \le k \le n$)と固定すると、$X_1$ の選び方は $1, 2, \dots, k-1$ の $k-1$ 通りある。
全体の場合の数は $n^2$ であるから、事象 $A_2$ の確率 $p_n$ は、
$$p_n = \frac{1}{n^2} \sum_{k=1}^n (k-1) = \frac{1}{n^2} \cdot \frac{1}{2}n(n-1) = \frac{n-1}{2n}$$
したがって、求める極限は、
$$\lim_{n\to\infty} p_n = \lim_{n\to\infty} \frac{1}{2} \left( 1 - \frac{1}{n} \right) = \frac{1}{2}$$
(2)
1回目から5回目に引いたカードの数をそれぞれ $X_1, X_2, X_3, X_4, X_5$ とする。
事象 $A_5$ は $X_i < X_5$($i=1, 2, 3, 4$)となることである。
$X_5 = k$($1 \le k \le n$)と固定すると、$X_1, X_2, X_3, X_4$ はそれぞれ独立に $1$ から $k-1$ までの $k-1$ 通りの選び方がある。
全体の場合の数は $n^5$ であるから、事象 $A_5$ の確率 $q_n$ は、
$$q_n = \frac{1}{n^5} \sum_{k=1}^n (k-1)^4$$
求める極限は、区分求積法を用いると、
$$\lim_{n\to\infty} q_n = \lim_{n\to\infty} \frac{1}{n} \sum_{k=1}^n \left( \frac{k-1}{n} \right)^4 = \int_0^1 x^4 dx = \left[ \frac{1}{5} x^5 \right]_0^1 = \frac{1}{5}$$
(3)
事象 $A_2 \cap A_5$ は、$X_1 < X_2$ かつ $X_i < X_5$($i=1, 2, 3, 4$)となることである。
これは、$X_1 < X_2 < X_5$ かつ $X_3 < X_5$ かつ $X_4 < X_5$ と同値である。
$X_5 = k$($1 \le k \le n$)と固定する。
$X_1 < X_2 < k$ を満たす組 $(X_1, X_2)$ は、$1$ から $k-1$ までの数の中から異なる2つを選ぶ選び方に等しく、${}_{k-1}\mathrm{C}_2 = \frac{(k-1)(k-2)}{2}$ 通りある。
$X_3, X_4$ はそれぞれ $1$ から $k-1$ までの $k-1$ 通りの選び方がある。
全体の場合の数は $n^5$ であるから、事象 $A_2 \cap A_5$ の確率 $r_n$ は、
$$r_n = \frac{1}{n^5} \sum_{k=1}^n \frac{(k-1)(k-2)}{2} \cdot (k-1) \cdot (k-1) = \frac{1}{n^5} \sum_{k=1}^n \frac{(k-1)^3(k-2)}{2}$$
ここで分子を展開し、区分求積法を利用できるように式を変形する。
$$r_n = \frac{1}{2n^5} \sum_{k=1}^n \{ (k-1)^4 - (k-1)^3 \}$$
$$r_n = \frac{1}{2n} \sum_{k=1}^n \left( \frac{k-1}{n} \right)^4 - \frac{1}{2n^2} \cdot \frac{1}{n} \sum_{k=1}^n \left( \frac{k-1}{n} \right)^3$$
$n \to \infty$ としたときの各項の極限を計算する。第1項の極限は、
$$\lim_{n\to\infty} \frac{1}{2n} \sum_{k=1}^n \left( \frac{k-1}{n} \right)^4 = \frac{1}{2} \int_0^1 x^4 dx = \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{5} = \frac{1}{10}$$
第2項の極限は、
$$\lim_{n\to\infty} \frac{1}{2n^2} \cdot \frac{1}{n} \sum_{k=1}^n \left( \frac{k-1}{n} \right)^3 = 0 \cdot \int_0^1 x^3 dx = 0$$
したがって、求める極限は、
$$\lim_{n\to\infty} r_n = \frac{1}{10} - 0 = \frac{1}{10}$$
解法2
対称性を用いた確率の極限の導出を示す。
$n \to \infty$ のとき、5回引いた数がすべて異なる確率は $1$ に収束する。したがって極限においては、異なる5つの数が等確率の全順列($5! = 120$ 通り)で現れるとして確率を計算してよい。
(1)
事象 $A_2$ は $X_1 < X_2$ である。異なる $X_1, X_2$ において、$X_1 < X_2$ と $X_1 > X_2$ は対称性から等確率である。
したがって、
$$\lim_{n\to\infty} p_n = \frac{1}{2}$$
(2)
事象 $A_5$ は、$X_5$ が $X_1, X_2, X_3, X_4, X_5$ の中で最大となることである。
異なる5つの数の最大値が $X_1, \dots, X_5$ のいずれになるかは、対称性から等確率である。したがって、$X_5$ が最大となる確率は、
$$\lim_{n\to\infty} q_n = \frac{1}{5}$$
(3)
事象 $A_2 \cap A_5$ は、$X_1 < X_2$ かつ $X_5$ が最大となることである。
全順列 $5! = 120$ 通りのうち、$X_5$ が最大となる順列は $4! = 24$ 通りある。
この $24$ 通りの順列のうち、$X_1 < X_2$ となるものは、対称性により半分である。
条件を満たす順列は $24 \times \frac{1}{2} = 12$ 通りとなるため、求める極限は、
$$\lim_{n\to\infty} r_n = \frac{12}{120} = \frac{1}{10}$$
解説
確率は場合の数の比で処理できるが、累乗の和の極限を求めるときには、区分求積法の形を作るのが定石である。(3) では分母が $n^5$ であるのに対し、分子の和の中身が $k^4$ のオーダーであることから、極限値が残る項と $0$ になる項を明確に分けて計算することがポイントである。
別解として示したように、無限大における対称性を利用すると答えのみを短時間で求めることができる。極限の世界では「同じカードを2回引く確率」が $0$ に収束するため、5つの相異なるカードを引いた順に並べる事象として捉えることが可能である。これはマークシート式の試験や、記述式における検算手段として非常に強力な考え方である。
答え
$\lim_{n\to\infty} p_n = \frac{1}{2}$
$\lim_{n\to\infty} q_n = \frac{1}{5}$
$\lim_{n\to\infty} r_n = \frac{1}{10}$
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