数学C 平面ベクトル 問題 3 解説

方針・初手
内心 $I$ は、三角形の三辺からの距離が等しい点である。したがって面積比を用いると、内心の重心座標は辺の長さ $a,b,c$ によって表せる。
まず $\overrightarrow{AI}$ を $\mathbf u,\mathbf v$ で表し、その後は内積
$$ \mathbf u\cdot \mathbf v=\frac{b^2+c^2-a^2}{2} $$
を用いて長さを計算する。
解法1
三角形 $ABC$ の内心を $I$ とする。内心から三辺への距離はすべて等しいので、三角形 $IBC,ICA,IAB$ の面積比はそれぞれ底辺の長さに比例する。よって
$$ [IBC]:[ICA]:[IAB]=a:b:c $$
である。したがって、内心 $I$ の重心座標は
$$ I=\frac{aA+bB+cC}{a+b+c} $$
で表される。
ここで $\overrightarrow{AB}=\mathbf u,\ \overrightarrow{AC}=\mathbf v$ であるから、
$$ \overrightarrow{AI} = \frac{b\overrightarrow{AB}+c\overrightarrow{AC}}{a+b+c} =\frac{b\mathbf u+c\mathbf v}{a+b+c} $$
となる。これで (1) が得られる。
次に $AI$ の長さを求める。まず
$$ |\mathbf u|=c,\qquad |\mathbf v|=b,\qquad |\mathbf v-\mathbf u|=a $$
であるから、
$$ a^2=|\mathbf v-\mathbf u|^2 =b^2+c^2-2\mathbf u\cdot\mathbf v $$
より
$$ \mathbf u\cdot\mathbf v=\frac{b^2+c^2-a^2}{2} $$
である。
したがって
$$ \begin{aligned} AI^2 &= \left|\frac{b\mathbf u+c\mathbf v}{a+b+c}\right|^2 [2mm] &= \frac{b^2|\mathbf u|^2+c^2|\mathbf v|^2+2bc\,\mathbf u\cdot\mathbf v}{(a+b+c)^2} [2mm] &= \frac{b^2c^2+c^2b^2+bc(b^2+c^2-a^2)}{(a+b+c)^2} [2mm] &= \frac{bc{(b+c)^2-a^2}}{(a+b+c)^2} [2mm] &= \frac{bc(b+c-a)(a+b+c)}{(a+b+c)^2} [2mm] &= \frac{bc(b+c-a)}{a+b+c}. \end{aligned} $$
よって
$$ AI=\sqrt{\frac{bc(b+c-a)}{a+b+c}} $$
である。これで (2) が得られる。
同様に、頂点を巡回させると
$$ BI^2=\frac{ca(c+a-b)}{a+b+c},\qquad CI^2=\frac{ab(a+b-c)}{a+b+c} $$
である。したがって
$$ \begin{aligned} AI^2+BI^2+CI^2 &= \frac{bc(b+c-a)+ca(c+a-b)+ab(a+b-c)}{a+b+c}. \end{aligned} $$
展開して整理すると、
$$ AI^2+BI^2+CI^2 = \frac{a^2b+a^2c+ab^2+b^2c+ac^2+bc^2-3abc}{a+b+c} $$
である。これで (3) が得られる。
次に (4) を考える。$b,c$ を固定し、$a=x$ とおく。三角形が存在するための条件は
$$ |b-c|<x<b+c $$
である。
(3)
より
$$ f(x) = \frac{bc(b+c-x)+cx(c+x-b)+xb(x+b-c)}{x+b+c} $$
である。分子を整理すると、
$$ \begin{aligned} f(x) &= \frac{(b+c)x^2+(b^2+c^2-3bc)x+bc(b+c)}{x+b+c}. \end{aligned} $$
これを微分すると、
$$ \begin{aligned} f'(x) &= \frac{(b+c){x^2+2(b+c)x+b^2+c^2-4bc}}{(x+b+c)^2}. \end{aligned} $$
したがって、$f'(x)=0$ となる候補は
$$ x^2+2(b+c)x+b^2+c^2-4bc=0 $$
を満たす $x$ である。この方程式を解くと、
$$ x=-(b+c)\pm\sqrt{6bc} $$
である。正の値になり得るのは
$$ x_0=\sqrt{6bc}-(b+c) $$
だけである。
$f(x)$ が三角形の存在範囲
$$ |b-c|<x<b+c $$
の内部で最小値をもつためには、
$$ |b-c|<x_0<b+c $$
が必要十分である。
右側の不等式 $x_0<b+c$ は
$$ \sqrt{6bc}<2(b+c) $$
と同値であり、
$$ 4(b+c)^2-6bc=4b^2+2bc+4c^2>0 $$
より常に成り立つ。
よって必要なのは左側の不等式
$$ |b-c|<\sqrt{6bc}-(b+c) $$
である。これは
$$ \sqrt{6bc}>b+c+|b-c| $$
と同値である。ここで
$$ b+c+|b-c|=2\max(b,c) $$
だから、
$$ \sqrt{6bc}>2\max(b,c) $$
である。両辺は正なので平方して
$$ 6bc>4\max(b,c)^2 $$
となる。
これは
$$ 3\min(b,c)>2\max(b,c) $$
と同値である。したがって
$$ \frac{2}{3}<\frac{b}{c}<\frac{3}{2} $$
が必要十分条件である。
この条件が成り立つとき、最小値を与える三角形は
$$ a=x_0=\sqrt{6bc}-(b+c) $$
によって定まる。
解説
内心の位置ベクトルは、面積比から重心座標で表すのが最も自然である。内心は三辺からの距離が等しいため、三角形 $IBC,ICA,IAB$ の面積比がそのまま辺の長さ $a:b:c$ になる。この一点を使えば、$\overrightarrow{AI}$ はすぐに求まる。
後半の最小値問題では、$a=x$ としたときの定義域が
$$ |b-c|<x<b+c $$
という開区間である点が重要である。微分して極小点があっても、それがこの開区間の内部に入らなければ、最小値を与える三角形は存在しない。したがって、単に $f'(x)=0$ を解くだけでは不十分であり、得られた $x_0$ が三角形の成立条件を満たすかまで確認する必要がある。
答え
(1)
$$ \overrightarrow{AI} = \frac{b\mathbf u+c\mathbf v}{a+b+c} $$
(2)
$$ AI=\sqrt{\frac{bc(b+c-a)}{a+b+c}} $$
(3)
$$ AI^2+BI^2+CI^2 = \frac{bc(b+c-a)+ca(c+a-b)+ab(a+b-c)}{a+b+c} $$
すなわち
$$ AI^2+BI^2+CI^2 = \frac{a^2b+a^2c+ab^2+b^2c+ac^2+bc^2-3abc}{a+b+c} $$
(4)
$f(x)$ が最小となる三角形 $ABC$ が存在するための必要十分条件は
$$ \frac{2}{3}<\frac{b}{c}<\frac{3}{2} $$
である。このとき、最小値を与える $a=x$ は
$$ x=\sqrt{6bc}-(b+c) $$
である。
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