北海道大学 1992年 文系 第1問 解説

方針・初手
点 $(x, y)$ が円 $C_a$ の通過領域に含まれる条件は、与えられた $C_a$ の方程式を $a$ についての方程式とみなしたとき、それが指定された範囲((1) ではすべての実数、(2) では $0$ 以上の実数)に実数解をもつことである。 方程式を展開して $a$ について整理し、2次方程式の解の配置問題(実数解の存在条件)に帰着させる。
解法1
(1)
円 $C_a$ の方程式を展開して $a$ について整理する。
$$ (x - a)^2 + (y - a)^2 = a^2 + 1 $$
$$ x^2 - 2ax + a^2 + y^2 - 2ay + a^2 = a^2 + 1 $$
$$ a^2 - 2(x + y)a + x^2 + y^2 - 1 = 0 $$
点 $(x, y)$ が、$a$ がすべての実数を動くときの $C_a$ の通過領域に含まれるための条件は、上の $a$ についての2次方程式が実数解をもつことである。 この方程式の判別式を $D$ とすると、$D \geqq 0$ となればよい。
$$ \frac{D}{4} = (x + y)^2 - 1 \cdot (x^2 + y^2 - 1) \geqq 0 $$
$$ x^2 + 2xy + y^2 - x^2 - y^2 + 1 \geqq 0 $$
$$ 2xy + 1 \geqq 0 $$
$$ xy \geqq -\frac{1}{2} $$
したがって、求める領域は、双曲線 $xy = -\frac{1}{2}$ (すなわち $y = -\frac{1}{2x}$)を境界とし、原点を含む側の領域である。境界線も含む。
(2)
点 $(x, y)$ が、$a \geqq 0$ のときの $C_a$ の通過領域に含まれるための条件は、$a$ についての2次方程式
$$ a^2 - 2(x + y)a + x^2 + y^2 - 1 = 0 $$
が $a \geqq 0$ の範囲に少なくとも1つの実数解をもつことである。 左辺を $f(a)$ とおく。$y = f(a)$ のグラフは下に凸の放物線であり、その軸は直線 $a = x + y$、$y$ 切片は $f(0) = x^2 + y^2 - 1$ である。 方程式 $f(a) = 0$ が $a \geqq 0$ に少なくとも1つの実数解をもつ条件を、以下のように場合分けして求める。
(i) $f(0) \leqq 0$ のとき
すなわち $x^2 + y^2 - 1 \leqq 0$ のとき、放物線 $y = f(a)$ は $y$ 軸との交点が原点または負の領域にある。 グラフは下に凸であるため、軸の位置に関わらず、放物線は $a \geqq 0$ の部分で必ず $a$ 軸と1つ以上交わる。 したがって、$x^2 + y^2 \leqq 1$ を満たす点 $(x, y)$ は条件を満たす。
(ii) $f(0) > 0$ のとき
すなわち $x^2 + y^2 - 1 > 0$ のとき、放物線の $y$ 切片は正である。 このとき、方程式が $a \geqq 0$ に実数解をもつためには、グラフが $a$ 軸と接するか交わり、かつその共有点が $a > 0$ の範囲にある必要がある。 よって、以下の条件がすべて成り立つ。
・実数解をもつ(頂点の $y$ 座標が $0$ 以下): $\frac{D}{4} = 2xy + 1 \geqq 0$ ・軸が $a > 0$ の範囲にある: $x + y > 0$
(i), (ii) より、求める条件は「$x^2 + y^2 \leqq 1$」または「$x^2 + y^2 > 1$ かつ $x + y > 0$ かつ $2xy + 1 \geqq 0$」である。
ここで、領域の境界となる円 $x^2 + y^2 = 1$ と双曲線 $2xy + 1 = 0$ の関係を調べる。 2式を辺々足し合わせると、以下のようになる。
$$ x^2 + y^2 + 2xy = 0 $$
$$ (x + y)^2 = 0 $$
$$ x + y = 0 $$
このとき、交点は $(x, y) = \left(\frac{1}{\sqrt{2}}, -\frac{1}{\sqrt{2}}\right), \left(-\frac{1}{\sqrt{2}}, \frac{1}{\sqrt{2}}\right)$ であり、これら2点で円と双曲線は接している。 直線 $x + y = 0$ の右上側($x + y > 0$ の領域)においては、円の内部 $x^2 + y^2 \leqq 1$ は常に $2xy + 1 \geqq 0$ の領域に完全に含まれる。 したがって、場合分けによって得られた領域の和集合は、直線 $x + y = 0$ を境目として整理できる。
・$x + y > 0$ の領域では、条件は $2xy + 1 \geqq 0$ に集約される。 ・$x + y \leqq 0$ の領域では、条件 (ii) は成り立たないため、条件 (i) の $x^2 + y^2 \leqq 1$ となる。
解法2
(2) について、方程式 $f(a) = 0$ が実数解をもち、かつその解が「すべて負」となる条件を求め、全体から除外する(余事象の考え方)。
(1) より、実数解をもつ条件は $2xy + 1 \geqq 0$ である。 実数解がすべて負になるための条件は、放物線 $y = f(a)$ について以下の2条件が同時に成り立つことである。
・軸が負: $x + y < 0$ ・$y$ 切片が正: $f(0) = x^2 + y^2 - 1 > 0$
したがって、求める領域は、(1) で求めた実数解をもつ領域 $2xy + 1 \geqq 0$ から、この「解がすべて負となる領域」を除外した部分である。 これを論理式で表すと、以下のようになる。
$$ 2xy + 1 \geqq 0 \quad \text{かつ} \quad \text{「} x + y \geqq 0 \quad \text{または} \quad x^2 + y^2 - 1 \leqq 0 \text{」} $$
これを直線 $x + y = 0$ で分けて考えると、 ・$x + y > 0$ のときは、$2xy + 1 \geqq 0$ を満たせばよい。 ・$x + y \leqq 0$ のときは、$x^2 + y^2 \leqq 1$ を満たせばよい(このとき $2xy + 1 \geqq 0$ は自動的に満たされる)。 境界線同士が直線 $x + y = 0$ 上で接することの確認は解法1と同様である。
解説
図形の通過領域を求める際の典型的な解法である「逆手流(存在条件の追求)」を用いる問題である。 (1) は実数解の存在条件として単なる判別式を処理するだけでよいが、(2) では $a \geqq 0$ という制約が加わるため、2次方程式の解の配置(グラフの $a$ 切片の位置)に帰着させて処理する必要がある。 解の配置問題では、「判別式」「軸の位置」「端点の符号」の3要素に注目して場合分けを行うのが定石である。解法2のように、条件を満たさない部分(余事象)を考えて全体から除外するアプローチも、場合分けが整理されて見通しが良くなることがあるため有効である。 また、図示の際に境界となる円と双曲線が接することを式から見抜き、正確な図形上の関係を把握することが求められる。
答え
(1)
不等式 $xy \geqq -\frac{1}{2}$ が表す領域。 (境界となる双曲線 $xy = -\frac{1}{2}$ を含み、原点を含む側の領域)
(2)
以下の2つの連立不等式が表す領域の和集合。
$$ \begin{cases} x + y > 0 \\ xy \geqq -\frac{1}{2} \end{cases} \quad \text{または} \quad \begin{cases} x + y \leqq 0 \\ x^2 + y^2 \leqq 1 \end{cases} $$
(境界線を含む。直線 $x + y = 0$ を境目として、右上側は双曲線の原点を含む側、左下側は原点を中心とする半径 $1$ の円の内部および周となる)
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