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京都大学 1986年 理系 第4問 解説

数学C/平面ベクトル数学A/図形の性質テーマ/図形総合テーマ/存在証明
京都大学 1986年 理系 第4問 解説

方針・初手

点 $M$ を基準(原点)とする位置ベクトルを設定して、条件を式で表すことが有効である。 2つの外接円の中心をそれぞれ $O, O'$ とすると、点 $M$ は線分 $OO'$ の中点となるため、ベクトルを用いると関係式が非常にシンプルに記述できる。 (1) はベクトルの三角不等式を用いて示す。 (2) は図形的な考察(「同じ半径の円がずれて重なっているとき、その共通部分に鋭角三角形は収まらないこと」)を挟むことで、中心が一致することを示し、そこから(1)の等号成立条件を用いて合同を導く。

解法1

空間(または平面)における任意の位置ベクトルを小文字の矢印で表す。 $\triangle ABC$ の外接円の中心を $O$、$\triangle A'B'C'$ の外接円の中心を $O'$ とし、これらの外接円の半径は共に $1$ であるとする。 線分 $OO'$ の中点 $M$ を原点とすると、$\vec{m} = \vec{0}$ であり、

$$ \frac{\vec{o} + \vec{o'}}{2} = \vec{0} \iff \vec{o'} = -\vec{o} $$

が成り立つ。 また、各頂点はそれぞれの外接円上にあるので、

$$ |\vec{a} - \vec{o}| = 1, \quad |\vec{b} - \vec{o}| = 1, \quad |\vec{c} - \vec{o}| = 1 $$

$$ |\vec{a'} - \vec{o'}| = 1, \quad |\vec{b'} - \vec{o'}| = 1, \quad |\vec{c'} - \vec{o'}| = 1 $$

を満たす。

(1)

点 $P$ は線分 $AA'$ の中点であるから、

$$ \vec{p} = \frac{\vec{a} + \vec{a'}}{2} $$

と表せる。ここで、$\vec{o} + \vec{o'} = \vec{0}$ を用いて $\vec{p}$ を変形すると、

$$ \begin{aligned} \vec{p} &= \frac{1}{2} \{ (\vec{a} - \vec{o}) + (\vec{a'} - \vec{o'}) + \vec{o} + \vec{o'} \} \\ &= \frac{1}{2} \{ (\vec{a} - \vec{o}) + (\vec{a'} - \vec{o'}) \} \end{aligned} $$

となる。両辺の絶対値をとり、ベクトルの三角不等式を用いると、

$$ \begin{aligned} MP &= |\vec{p}| \\ &= \left| \frac{1}{2} \{ (\vec{a} - \vec{o}) + (\vec{a'} - \vec{o'}) \} \right| \\ &\leqq \frac{1}{2} (|\vec{a} - \vec{o}| + |\vec{a'} - \vec{o'}|) \\ &= \frac{1}{2} (1 + 1) = 1 \end{aligned} $$

よって、$MP \leqq 1$ が示された。 点 $Q, R$ についても全く同様に、$\vec{q} = \frac{\vec{b} + \vec{b'}}{2}, \vec{r} = \frac{\vec{c} + \vec{c'}}{2}$ に対して変形し三角不等式を適用することで、$MQ \leqq 1, MR \leqq 1$ が示される。

(2)

$\triangle PQR$ の外接円を $C$ とし、その中心を $O''$ とする。 仮定より $C$ の半径は $1$ であり、$\triangle PQR$ は鋭角三角形である。 (1) より、点 $P, Q, R$ はすべて $M$ を中心とする半径 $1$ の円板 $D$(境界を含む)の内部に存在する。 ここで、もし $M \neq O''$ であると仮定する。 $M$ から $O''$ へ向かう方向を $x$ 軸の正の方向とする座標系を考えると、$M(0, 0)$、$O''(d, 0)$ (ただし $d > 0$)とおける。 円 $C$ の方程式は $(x-d)^2 + y^2 = 1$ であり、円板 $D$ の領域は $x^2 + y^2 \leqq 1$ である。 円 $C$ 上の点 $(x, y)$ が円板 $D$ に含まれる条件を求める。 $(x-d)^2 + y^2 = 1$ より $y^2 = 1 - (x-d)^2$ であり、これを $x^2 + y^2 \leqq 1$ に代入すると、

$$ x^2 + 1 - (x^2 - 2dx + d^2) \leqq 1 $$

$$ 2dx \leqq d^2 $$

$d > 0$ より、$x \leqq \frac{d}{2}$ を得る。 円 $C$ は中心 $O''(d, 0)$ の半径 $1$ の円であるから、その上の点で $x \leqq \frac{d}{2}$ を満たす部分は、中心 $x=d$ を通る直径よりも左側にある弦で切り取られた「半円より小さい弧(劣弧)」となる。 点 $P, Q, R$ は円 $C$ 上にあり、かつ円板 $D$ 内にあるため、すべてこの劣弧上に存在することになる。 1つの劣弧上に三角形の3頂点が存在する場合、真ん中にある頂点の角に対する弧は必ず半円より大きくなるため、円周角の定理よりその角は鈍角となる。 これは $\triangle PQR$ が鋭角三角形であるという仮定に矛盾する。 したがって、$M = O''$ でなければならない。すなわち、点 $M$ は $\triangle PQR$ の外接円の中心と一致する。

$M = O''$ のとき、点 $M$ は $\triangle PQR$ の外接円(半径 $1$)の中心であるから、

$$ MP = MQ = MR = 1 $$

となる。 (1) の不等式において $MP = 1$ の等号が成立することになるため、

$$ \left| \frac{1}{2} \{ (\vec{a} - \vec{o}) + (\vec{a'} - \vec{o'}) \} \right| = \frac{1}{2} (|\vec{a} - \vec{o}| + |\vec{a'} - \vec{o'}|) $$

が成り立つ。 $|\vec{a} - \vec{o}| = 1$ かつ $|\vec{a'} - \vec{o'}| = 1$ であるから、この等号が成立するのは、ベクトル $\vec{a} - \vec{o}$ と $\vec{a'} - \vec{o'}$ が同じ向きで大きさが等しいとき、すなわち

$$ \vec{a} - \vec{o} = \vec{a'} - \vec{o'} $$

となるときに限られる。 このとき、

$$ \vec{p} = \frac{1}{2} \{ (\vec{a} - \vec{o}) + (\vec{a'} - \vec{o'}) \} = \vec{a} - \vec{o} $$

と表せる。よって、$\vec{a} = \vec{p} + \vec{o}$ となる。 全く同様にして、等号成立条件から

$$ \vec{q} = \vec{b} - \vec{o}, \quad \vec{r} = \vec{c} - \vec{o} $$

$$ \vec{b} = \vec{q} + \vec{o}, \quad \vec{c} = \vec{r} + \vec{o} $$

が得られる。 これは、$\triangle ABC$ の各頂点 $A, B, C$ が、$\triangle PQR$ の各頂点 $P, Q, R$ を一律にベクトル $\vec{o}$ だけ平行移動した点であることを意味する。 したがって、$\triangle ABC \equiv \triangle PQR$ が成り立つ。

さらに、$\vec{p} = \vec{a'} - \vec{o'}$ でもあるため、

$$ \vec{a'} = \vec{p} + \vec{o'} $$

となり、$Q, R$ についても同様に

$$ \vec{b'} = \vec{q} + \vec{o'}, \quad \vec{c'} = \vec{r} + \vec{o'} $$

が成り立つ。 これは、$\triangle A'B'C'$ の各頂点も、$\triangle PQR$ の各頂点を一律にベクトル $\vec{o'}$ だけ平行移動した点であることを意味する。 したがって、$\triangle A'B'C' \equiv \triangle PQR$ が成り立つ。

以上より、$\triangle ABC$, $\triangle A'B'C'$, $\triangle PQR$ はすべて合同であることが示された。

解説

ベクトルの絶対値に関する三角不等式 $|\vec{x} + \vec{y}| \leqq |\vec{x}| + |\vec{y}|$ の応用と、その等号成立条件を活用する問題である。 中点をベクトルで立式し、与えられている中心 $O, O'$ を経由するように式変形を行う($\vec{o} + \vec{o'} = \vec{0}$ を紛れ込ませる)のが(1)の核心である。 (2) は図形的な直感を論理に落とし込む必要がある。「半径 $1$ の円に内接する鋭角三角形」は、中心を含んで広がるため、少しでもずれた半径 $1$ の円の中には収まりきらない、という事実を座標設定で証明している。後半の合同の証明は、(1) で示した三角不等式の等号成立条件に帰着させることで、平行移動の関係を鮮やかに導き出すことができる。

答え

略(解法1の証明を参照)

各解法に示した通り、(1) はベクトルの三角不等式を用いて $MP \leqq 1, MQ \leqq 1, MR \leqq 1$ が示される。(2) は2つの半径 $1$ の円の共通部分が半円未満の弧になることから中心 $M$ の一致が導かれ、その結果生じる(1)の等号成立条件から、各頂点が平行移動の関係にあることが示され、3つの三角形がすべて合同になることが証明された。

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