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京都大学 2008年 理系 第6問(乙) 解説

数学1/立体図形数学2/三角関数テーマ/空間図形テーマ/速度・距離テーマ/不等式の証明
京都大学 2008年 理系 第6問(乙) 解説

方針・初手

地球の中心を原点とする空間座標(またはベクトル)を設定し、2つの経路の長さをそれぞれ地球の半径 $R$ を用いて表します。

経路 $R_1$ は緯度 $60^\circ$ の小円上の弧、経路 $R_2$ は大円上の弧です。大円上の弧の長さを求めるためには、2地点と地球の中心がなす角(中心角)を知る必要があるため、位置ベクトルの内積を利用して中心角の余弦($\cos$)の値を求めます。

最後に、三角関数表の値を利用して中心角の大きさを評価し、飛行距離の短縮率が3%以上であることを示します。

解法1

地球の半径を $R$ とし、地球の中心を原点 $O$ とする空間座標を設定する。赤道面を $xy$ 平面、北極方向を $z$ 軸の正の向きとし、極座標表示を考える。

(i) 経路 $R_1$ の長さ $L_1$

地点 $A, B$ はともに北緯 $60^\circ$ であるため、経路 $R_1$ は半径 $r = R \cos 60^\circ = \dfrac{1}{2}R$ の小円上の弧である。

$A, B$ の経度の差は $135^\circ - 75^\circ = 60^\circ = \dfrac{\pi}{3}$ ラジアンであるから、$R_1$ の長さ $L_1$ は、

$$ L_1 = r \times \frac{\pi}{3} = \frac{1}{2}R \times \frac{\pi}{3} = \frac{\pi}{6}R $$

これは、大円(半径 $R$ の円)上の弧に換算すると中心角 $30^\circ$ に相当する距離である。

(ii) 経路 $R_2$ の長さ $L_2$

地点 $A, B$ の位置ベクトル $\vec{OA}, \vec{OB}$ の成分をそれぞれ表すと、

$$ \vec{OA} = (R \cos 60^\circ \cos 135^\circ,\ R \cos 60^\circ \sin 135^\circ,\ R \sin 60^\circ) $$

$$ \vec{OB} = (R \cos 60^\circ \cos 75^\circ,\ R \cos 60^\circ \sin 75^\circ,\ R \sin 60^\circ) $$

2つのベクトルの内積を計算する。

$$ \vec{OA} \cdot \vec{OB} = R^2 \left\{ \cos^2 60^\circ (\cos 135^\circ \cos 75^\circ + \sin 135^\circ \sin 75^\circ) + \sin^2 60^\circ \right\} $$

加法定理 $\cos(\theta - \phi) = \cos\theta\cos\phi + \sin\theta\sin\phi$ より、$\cos 135^\circ \cos 75^\circ + \sin 135^\circ \sin 75^\circ = \cos(135^\circ - 75^\circ) = \cos 60^\circ$ であるから、

$$ \vec{OA} \cdot \vec{OB} = R^2 (\cos^3 60^\circ + \sin^2 60^\circ) = R^2 \left\{ \left(\frac{1}{2}\right)^3 + \left(\frac{\sqrt{3}}{2}\right)^2 \right\} = R^2 \left( \frac{1}{8} + \frac{3}{4} \right) = \frac{7}{8}R^2 $$

$\angle AOB = \alpha$ とおくと、

$$ \cos\alpha = \frac{\vec{OA} \cdot \vec{OB}}{|\vec{OA}||\vec{OB}|} = \frac{\frac{7}{8}R^2}{R \cdot R} = \frac{7}{8} = 0.875 $$

経路 $R_2$ は大円上の弧であるから、その長さ $L_2$ は $L_2 = R \times \alpha$(ラジアン)である。

(iii) 飛行距離の比較

飛行距離が短くなる割合は、

$$ \frac{L_1 - L_2}{L_1} = 1 - \frac{L_2}{L_1} $$

$L_1$ は中心角 $30^\circ$ の大円弧長、$L_2$ は中心角 $\alpha^\circ$ の大円弧長に等しいため、割合は $1 - \dfrac{\alpha^\circ}{30^\circ}$ と表せる。

三角関数表より、$\cos 29^\circ \approx 0.8746$ である。

$\cos\alpha = 0.875$ であるから、$\cos\alpha > \cos 29^\circ$ が成り立つ。

$0^\circ < x < 90^\circ$ において $\cos x$ は単調減少であるため、$\alpha^\circ < 29^\circ$ とわかる。

したがって、

$$ 1 - \frac{\alpha^\circ}{30^\circ} > 1 - \frac{29^\circ}{30^\circ} = \frac{1}{30} \approx 0.0333\cdots $$

$\dfrac{1}{30} > 0.03$(3%)であるから、$\dfrac{L_1 - L_2}{L_1} > 0.03$ が成り立つ。

以上より、$R_1$ に比べて $R_2$ は飛行距離が3%以上短くなることが示された。

解説

地球上の2地点間の距離を求める典型的な空間ベクトル問題と、三角比の評価を組み合わせた問題です。

メルカトル図法の地図などでは「同一緯度に沿ってまっすぐ進む(等角航路)」のが最短に見えがちですが、実際の球面上の最短距離は「大圏コース(大円上の弧)」となります。この事実を数学的に証明しています。

空間図形として各地点の座標を設定し、内積からなす角を求める処理は、共通テストや二次試験でも頻出の定石です。最後に示された $\cos\alpha = 0.875$ を、三角関数表と照らし合わせて $\alpha^\circ < 29^\circ$ と評価できれば、あっさりと結論に到達できます。

答え

題意の通り、$R_1$ に比べて $R_2$ は飛行距離が3%以上短くなることが示された。

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