東京大学 2010年 理系 第1問 解説

方針・初手
- (1) 回転軸に垂直な平面で直方体を切断し、その断面(長方形)が回転して描く図形の面積を求める方針をとる。直方体は軸方向に一様なので、体積は「断面積 $\times$ 軸方向の長さ」で求まる。長方形の回転軌跡は、各頂点や辺の偏角に注目して図形を分割することで面積を計算できる。
- (2) (1)で求めた体積 $V$ の式と、条件 $a+b+c=1$ を用いる。変数が $a, b, c$ の3つあるため、まずは $b$ を固定し、$a+c$ が一定のもとで $ac$ を動かす「1文字固定(予選決勝法)」の考え方を用いて、$V$ のとりうる値の範囲を絞り込む。
解法1
(1)
直方体を、長さ $b$ の辺を回転軸として $90^\circ$($\frac{\pi}{2}$)回転させる。 この回転軸に垂直な平面で直方体を切断したときの断面は、縦 $a$、横 $c$ の長方形である。立体 $V$ の体積は、この長方形が回転して通過する領域の面積 $S$ に、軸方向の長さ $b$ を掛けたものになる。
断面の平面上に原点 $O$ をとり、回転の軸を原点とする。初期状態の長方形の頂点を $O(0,0)$、$A(a,0)$、$B(a,c)$、$C(0,c)$ とし、原点周りに反時計回りに $\frac{\pi}{2}$ 回転させるときの通過領域を考える。
点 $B(a,c)$ の極座標を $(r, \alpha)$ とすると、原点からの距離は $r = \sqrt{a^2+c^2}$ であり、偏角 $\alpha$ は $\cos\alpha = \frac{a}{\sqrt{a^2+c^2}}$、$\sin\alpha = \frac{c}{\sqrt{a^2+c^2}}$ (ただし $0 < \alpha < \frac{\pi}{2}$)を満たす。
長方形 $OABC$ は、対角線 $OB$ によって直角三角形 $OAB$ と直角三角形 $OBC$ に分割できる。回転によって長方形内の各点が通過する領域を、偏角 $\theta$ の範囲で分けて考える。
(i)
$0 \le \theta \le \alpha$ の範囲 この範囲にあるのは、初期状態の直角三角形 $OAB$ である。回転方向が反時計回りであるため、他の点が回転してきてこの領域を覆うことはない。 この領域の面積は $\frac{1}{2}ac$ である。
(ii)
$\alpha \le \theta \le \alpha + \frac{\pi}{2}$ の範囲 この範囲では、長方形内で原点から最も遠い頂点 $B$ の回転軌跡が、通過領域の外側の境界となる。頂点 $B$ は半径 $\sqrt{a^2+c^2}$ の円弧を描くため、この領域は中心角 $\frac{\pi}{2}$、半径 $\sqrt{a^2+c^2}$ の扇形となる。 この領域の面積は $\frac{1}{4}\pi(a^2+c^2)$ である。
(iii)
$\alpha + \frac{\pi}{2} \le \theta \le \pi$ の範囲 この範囲にあるのは、初期状態の直角三角形 $OBC$ が $\frac{\pi}{2}$ 回転して移動した後の領域である。移動後の頂点を $B', C'$ とすると、直角三角形 $OB'C'$ となる。 図形は合同であるため、この領域の面積は $\frac{1}{2}ac$ である。
これらの3つの領域は境界のみを共有し、互いに重ならない。したがって、通過領域全体の面積 $S$ はこれらの和となる。
$$ S = \frac{1}{2}ac + \frac{1}{4}\pi(a^2+c^2) + \frac{1}{2}ac = ac + \frac{\pi}{4}(a^2+c^2) $$
立体 $V$ の体積はこれに $b$ を掛けたものであるから、以下のようになる。
$$ V = bS = b \left\{ ac + \frac{\pi}{4}(a^2+c^2) \right\} = abc + \frac{\pi}{4}b(a^2+c^2) $$
(2)
(1)の結果を変形すると、以下のようになる。
$$ V = b \left\{ ac + \frac{\pi}{4}((a+c)^2 - 2ac) \right\} = \frac{\pi}{4}b(a+c)^2 + \left(1-\frac{\pi}{2}\right)bac $$
条件より $a>0, b>0, c>0$ であり、$a+b+c=1$ であるから、$a+c = 1-b$ かつ $0 < b < 1$ である。 これを $V$ の式に代入する。
$$ V = \frac{\pi}{4}b(1-b)^2 + \left(1-\frac{\pi}{2}\right)bac $$
ここで、$b$ を $0 < b < 1$ の範囲で固定して考える。 $a>0, c>0$ かつ $a+c = 1-b$ であるとき、$ac$ のとりうる値の範囲は、相加・相乗平均の関係より以下のようになる。
$$ 0 < ac \le \left(\frac{a+c}{2}\right)^2 = \frac{(1-b)^2}{4} $$
(等号成立は $a=c=\frac{1-b}{2}$ のときである)
$\pi > 2$ より $1-\frac{\pi}{2} < 0$ であるため、$V$ は $ac$ が最大値をとるときに最小となり、$ac$ が $0$ に近づくときに上限に近づく。
$ac = \frac{(1-b)^2}{4}$ のとき、
$$ V = \frac{\pi}{4}b(1-b)^2 + \left(1-\frac{\pi}{2}\right)b \frac{(1-b)^2}{4} = b(1-b)^2 \left( \frac{\pi}{4} + \frac{1}{4} - \frac{\pi}{8} \right) = \frac{\pi+2}{8}b(1-b)^2 $$
$ac \to +0$ のとき、
$$ V \to \frac{\pi}{4}b(1-b)^2 $$
したがって、$b$ を固定したときの $V$ のとりうる値の範囲は以下の区間となる。
$$ \frac{\pi+2}{8}b(1-b)^2 \le V < \frac{\pi}{4}b(1-b)^2 $$
次に、$b$ を動かして全体の範囲を求めるために、関数 $f(b) = b(1-b)^2$ の $0 < b < 1$ における増減を調べる。
$$ f'(b) = 1 \cdot (1-b)^2 + b \cdot 2(1-b)(-1) = (1-b)(1-3b) $$
$f'(b) = 0$ となるのは $b=1, \frac{1}{3}$ である。 $0 < b < \frac{1}{3}$ のとき $f'(b) > 0$、$\frac{1}{3} < b < 1$ のとき $f'(b) < 0$ であるから、$f(b)$ は $b = \frac{1}{3}$ で最大値をとる。
$$ f\left(\frac{1}{3}\right) = \frac{1}{3} \left(1-\frac{1}{3}\right)^2 = \frac{4}{27} $$
また、$b \to +0$ および $b \to 1-0$ のとき $f(b) \to 0$ である。 したがって、$f(b)$ のとりうる値の範囲は $0 < f(b) \le \frac{4}{27}$ である。
これより、$V$ の上限と下限について考察する。 関数 $g(b) = \frac{\pi}{4}f(b)$、$h(b) = \frac{\pi+2}{8}f(b)$ とおくと、$b$ を固定したときの $V$ のとりうる範囲は $h(b) \le V < g(b)$ である。 $g(b)$ は $0 < g(b) \le \frac{\pi}{27}$ の値をとり、$h(b)$ は $0 < h(b) \le \frac{\pi+2}{54}$ の値をとる。
上限について、$V < g(b) \le \frac{\pi}{27}$ であるから、$V$ が $\frac{\pi}{27}$ 以上の値をとることはない。 下限について、$V \ge h(b) > 0$ であるから、$V$ が $0$ 以下の値をとることはない。 任意の $v \in \left(0, \frac{\pi}{27}\right)$ に対して、$v$ が $V$ の値として実現可能であることを確認する。$g(b)$ は連続関数であり、$g\left(\frac{1}{3}\right) = \frac{\pi}{27}$、$\lim_{b \to +0} g(b) = 0$ であるため、中間値の定理より $g(b_0) > v$ を満たす $b_0 \in \left(0, \frac{1}{3}\right)$ が存在する。
この $b_0$ について、もし $h(b_0) \le v$ ならば、$v$ は区間 $[h(b_0), g(b_0))$ に含まれるため実現可能である。
もし $h(b_0) > v$ ならば、$h(b)$ は連続関数で $\lim_{b \to +0} h(b) = 0$ であるから、中間値の定理より $h(b_1) = v$ を満たす $b_1 \in (0, b_0)$ が存在する。このとき $v$ は区間 $[h(b_1), g(b_1))$ に含まれるため実現可能である。
以上より、$V$ は区間 $\left(0, \frac{\pi}{27}\right)$ に含まれるすべての値をとることができるため、求める $V$ の範囲は以下のようになる。
$$ 0 < V < \frac{\pi}{27} $$
解説
- (1)は回転体の体積計算の基本である、回転軸に垂直な平面で切断して断面積を求める方針で解決できる。本問では直方体の軸に平行な辺を中心とする回転であるため、断面の長方形の回転を平面図形として処理する問題に帰着する。偏角で領域を分割する考え方は、回転の通過領域を求める際の定石である。
- (2)は多変数関数の値域を求める問題である。独立な変数が2つあるため、「1文字を定数とみなして固定し、もう1つの変数を動かす(予選)」を行った後、「固定していた文字を動かす(決勝)」という手順を踏むのが効果的である。本問では式が $a, c$ の対称式であることに気づけば、$a+c$ を $b$ で表し、$ac$ を動かすという見通しが立ちやすくなる。
答え
(1)
$$ V = abc + \frac{\pi}{4}b(a^2+c^2) $$
(2)
$$ 0 < V < \frac{\pi}{27} $$
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