九州大学 2016年 文系 第3問 解説

方針・初手
袋の中から各色の玉を取り出す確率を求め、さらに $n$ 回の操作で赤玉、青玉、白玉をそれぞれ何回取り出すかを変数でおいて、到達点の座標を数式で表すことから始める。各色の玉の取り出し回数の組と、到達点の座標が1対1に対応するかどうかを確認することが(2)以降の鍵となる。また、(3)および(4)では、正方形の領域の条件から玉の取り出し回数を絞り込む。
解法1
袋の中から各色の玉を1回取り出す確率は、赤玉が $\frac{15}{30} = \frac{1}{2}$、青玉が $\frac{10}{30} = \frac{1}{3}$、白玉が $\frac{5}{30} = \frac{1}{6}$ である。
操作を $n$ 回繰り返したとき、赤玉を $k$ 回、青玉を $l$ 回、白玉を $m$ 回取り出したとする。ただし、$k, l, m$ は $k \geqq 0$、$l \geqq 0$、$m \geqq 0$ かつ $k+l+m=n$ を満たす整数である。 このとき、到達点の座標 $(x, y)$ は、各操作の移動量がそれぞれ $(1, 0)$、$(0, 1)$、$(-1, -1)$ であることから、次のように表される。
$$ \begin{cases} x = k - m \\ y = l - m \end{cases} $$
(1)
白玉を1度だけ取り出したとき、$m = 1$ である。 このとき、$k+l+1 = n$ より $l = n-1-k$ となる。$k$ のとり得る値の範囲は $0 \leqq k \leqq n-1$ である。 これらを座標の式に代入すると、
$$ \begin{cases} x = k - 1 \\ y = (n-1-k) - 1 = n - k - 2 \end{cases} $$
$k = x + 1$ を $y$ の式に代入すると、$y = n - (x + 1) - 2 = n - 3 - x$ となる。 $k$ が $0 \leqq k \leqq n-1$ の整数全体を動くとき、$x$ は $-1 \leqq x \leqq n-2$ の整数全体を動く。 したがって、到達点となり得る点は、$(x, n-3-x)$(ただし、$x$ は $-1 \leqq x \leqq n-2$ を満たす整数)である。
(2)
到達点の座標 $(x, y)$ と、取り出した回数の組 $(k, l, m)$ の対応関係について調べる。 $x = k - m$、$y = l - m$ の両辺を足すと、
$$ x + y = k + l - 2m $$
ここで、$k+l = n-m$ を用いると、
$$ x + y = (n - m) - 2m = n - 3m $$
となる。これより $3m = n - (x + y)$ が得られる。 したがって、到達点 $(x, y)$ が1つ決まれば、$m$ がただ1つに定まる。$m$ が決まれば、$k = x + m$、$l = y + m$ により $k$ と $l$ もただ1つに定まる。 すなわち、到達点 $(x, y)$ と条件を満たす整数の組 $(k, l, m)$ は1対1に対応する。
ゆえに、到達点となり得る点の個数は、$k+l+m=n$($k \geqq 0$、$l \geqq 0$、$m \geqq 0$)を満たす整数の組 $(k, l, m)$ の個数に等しい。 これは異なる3つのものから重複を許して $n$ 個を選ぶ重複組合せの総数であるから、求める個数は、
$$ {}_3\mathrm{H}_n = {}_{n+2}\mathrm{C}_2 = \frac{(n+2)(n+1)}{2} $$
(3)
操作を3回繰り返したとき、到達点 $(x, y)$ が正方形 $D$ の内部または辺上にある条件は、$-1 \leqq x \leqq 1$ かつ $-1 \leqq y \leqq 1$ である。 このとき、$x+y$ のとり得る範囲は $-2 \leqq x+y \leqq 2$ となる。 (2)で導いた関係式 $x+y = 3 - 3m = 3(1-m)$ を代入すると、
$$ -2 \leqq 3(1-m) \leqq 2 $$
これを満たす整数 $m$ は $m = 1$ のみである。 $m = 1$ のとき、$x+y = 0$ となり、条件 $-1 \leqq x \leqq 1$ を満たす $(x, y)$ の組は、以下の3つに限られる。
(ア) $(x, y) = (-1, 1)$ のとき $m=1$ より、$k = -1+1 = 0$、$l = 1+1 = 2$ となる。 この確率は、
$$ \frac{3!}{0!2!1!} \left(\frac{1}{2}\right)^0 \left(\frac{1}{3}\right)^2 \left(\frac{1}{6}\right)^1 = 3 \times 1 \times \frac{1}{9} \times \frac{1}{6} = \frac{1}{18} $$
(イ) $(x, y) = (0, 0)$ のとき $m=1$ より、$k = 0+1 = 1$、$l = 0+1 = 1$ となる。 この確率は、
$$ \frac{3!}{1!1!1!} \left(\frac{1}{2}\right)^1 \left(\frac{1}{3}\right)^1 \left(\frac{1}{6}\right)^1 = 6 \times \frac{1}{2} \times \frac{1}{3} \times \frac{1}{6} = \frac{1}{6} $$
(ウ) $(x, y) = (1, -1)$ のとき $m=1$ より、$k = 1+1 = 2$、$l = -1+1 = 0$ となる。 この確率は、
$$ \frac{3!}{2!0!1!} \left(\frac{1}{2}\right)^2 \left(\frac{1}{3}\right)^0 \left(\frac{1}{6}\right)^1 = 3 \times \frac{1}{4} \times 1 \times \frac{1}{6} = \frac{1}{8} $$
これらは互いに排反であるから、求める確率 $P_3$ は、
$$ P_3 = \frac{1}{18} + \frac{1}{6} + \frac{1}{8} = \frac{4}{72} + \frac{12}{72} + \frac{9}{72} = \frac{25}{72} $$
(4)
(3)と同様に考える。操作を $3N$ 回繰り返したとき、到達点 $(x, y)$ が $D$ の内部または辺上にあるならば、$-2 \leqq x+y \leqq 2$ である。 $x+y = 3N - 3m = 3(N-m)$ であるから、
$$ -2 \leqq 3(N-m) \leqq 2 $$
これを満たす整数 $N-m$ は $0$ のみであり、$m = N$ と定まる。 このとき $x+y = 0$ となり、条件を満たす $(x, y)$ の組は (3) と同様に $(-1, 1)$、$(0, 0)$、$(1, -1)$ の3つである。 対応する $(k, l, m)$ の組とそれぞれの確率は以下のようになる。
(A) $(x, y) = (-1, 1)$ のとき、$(k, l, m) = (N-1, N+1, N)$ この事象の確率は、
$$ \frac{(3N)!}{(N-1)!(N+1)!N!} \left(\frac{1}{2}\right)^{N-1} \left(\frac{1}{3}\right)^{N+1} \left(\frac{1}{6}\right)^N $$
(B) $(x, y) = (0, 0)$ のとき、$(k, l, m) = (N, N, N)$ この事象の確率は、
$$ P_{(0,0)} = \frac{(3N)!}{N!N!N!} \left(\frac{1}{2}\right)^N \left(\frac{1}{3}\right)^N \left(\frac{1}{6}\right)^N = \frac{(3N)!}{(N!)^3} \left(\frac{1}{36}\right)^N $$
(C) $(x, y) = (1, -1)$ のとき、$(k, l, m) = (N+1, N-1, N)$ この事象の確率は、
$$ \frac{(3N)!}{(N+1)!(N-1)!N!} \left(\frac{1}{2}\right)^{N+1} \left(\frac{1}{3}\right)^{N-1} \left(\frac{1}{6}\right)^N $$
ここで、(A) の確率と (C) の確率を、(B) の確率 $P_{(0,0)}$ を用いて表す。 (A) の確率は、
$$ P_{(0,0)} \times \frac{N}{N+1} \times \left(\frac{1}{2}\right)^{-1} \times \left(\frac{1}{3}\right)^1 = \frac{2N}{3(N+1)} P_{(0,0)} $$
(C) の確率は、
$$ P_{(0,0)} \times \frac{N}{N+1} \times \left(\frac{1}{2}\right)^1 \times \left(\frac{1}{3}\right)^{-1} = \frac{3N}{2(N+1)} P_{(0,0)} $$
これらは互いに排反であるから、求める確率 $P_{3N}$ は、
$$ \begin{aligned} P_{3N} &= \left\{ \frac{2N}{3(N+1)} + 1 + \frac{3N}{2(N+1)} \right\} P_{(0,0)} \\ &= \frac{4N + 6(N+1) + 9N}{6(N+1)} P_{(0,0)} \\ &= \frac{19N + 6}{6(N+1)} \frac{(3N)!}{(N!)^3} \left(\frac{1}{36}\right)^N \end{aligned} $$
解説
反復試行によって点が移動する確率・場合の数の問題では、各移動の回数を文字でおき、点の座標をそれらの文字の式で表すことが定石である。本問では、到達点の座標が決まれば各玉を取り出した回数が一意に定まること(1対1対応)を示すのがポイントとなる。これが保証されることで、単なる「座標が条件を満たす確率」を「回数の組合せが条件を満たす確率」に言い換えることができる。 後半の(3)と(4)では、$x+y$ の値に着目することで、考えるべき回数の組合せを大きく絞り込めるように作られており、見通しよく計算を進められるかが問われている。確率の和を計算する際は、基準となる項(今回は対称性の高い $(N, N, N)$ の項)でくくって整理すると計算ミスを防ぎやすい。
答え
(1) $(x, n-3-x)$ (ただし、$x$ は $-1 \leqq x \leqq n-2$ を満たす整数)
(2) $\frac{(n+1)(n+2)}{2}$ 個
(3) $P_3 = \frac{25}{72}$
(4) $P_{3N} = \frac{19N + 6}{6(N+1)} \frac{(3N)!}{(N!)^3} \left(\frac{1}{36}\right)^N$
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