九州大学 2018年 文系 第3問 解説

方針・初手
(1) 与えられた式 $L$ の各項を、点 $O$ を始点とする位置ベクトルを用いて表します。ベクトルの大きさを2乗して展開し、整理することで目標の等式を導きます。
(2) (1) で得られた等式を動点 $P$ の位置ベクトル $\vec{x}$ についての2次式とみなし、平方完成を行います。平方完成された式から $L$ を最小にする $\vec{x}$ を特定し、それが重心の位置ベクトルと一致することを確認します。その後、そのときの最小値を計算し、目標の式と一致することを示します。
解法1
(1)
$P, A, B, C$ の点 $O$ を始点とする位置ベクトルはそれぞれ $\vec{x}, \vec{a}, \vec{b}, \vec{c}$ であるから、線分の長さの2乗は次のように表せる。
$$ PA^2 = |\overrightarrow{PA}|^2 = |\vec{a} - \vec{x}|^2 = |\vec{x}|^2 - 2\vec{a} \cdot \vec{x} + |\vec{a}|^2 $$
同様にして、$PB^2$ と $PC^2$ を計算する。
$$ PB^2 = |\overrightarrow{PB}|^2 = |\vec{b} - \vec{x}|^2 = |\vec{x}|^2 - 2\vec{b} \cdot \vec{x} + |\vec{b}|^2 $$
$$ PC^2 = |\overrightarrow{PC}|^2 = |\vec{c} - \vec{x}|^2 = |\vec{x}|^2 - 2\vec{c} \cdot \vec{x} + |\vec{c}|^2 $$
これらを辺々加えると、次のように整理できる。
$$ \begin{aligned} L &= PA^2 + PB^2 + PC^2 \\ &= \left( |\vec{x}|^2 - 2\vec{a} \cdot \vec{x} + |\vec{a}|^2 \right) + \left( |\vec{x}|^2 - 2\vec{b} \cdot \vec{x} + |\vec{b}|^2 \right) + \left( |\vec{x}|^2 - 2\vec{c} \cdot \vec{x} + |\vec{c}|^2 \right) \\ &= 3|\vec{x}|^2 - 2(\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}) \cdot \vec{x} + |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 + |\vec{c}|^2 \end{aligned} $$
したがって、題意の等式が示された。
(2)
(1) で得られた $L$ の式を $\vec{x}$ について平方完成する。
$$ \begin{aligned} L &= 3 \left( |\vec{x}|^2 - \frac{2}{3}(\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}) \cdot \vec{x} \right) + |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 + |\vec{c}|^2 \\ &= 3 \left| \vec{x} - \frac{\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}}{3} \right|^2 - 3 \left| \frac{\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}}{3} \right|^2 + |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 + |\vec{c}|^2 \end{aligned} $$
ここで、$|\vec{x} - \frac{\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}}{3}|^2 \geqq 0$ であるから、$L$ は
$$ \vec{x} = \frac{\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}}{3} $$
のときに最小となる。このとき、点 $P$ の位置ベクトルは三角形 $ABC$ の重心の位置ベクトルと一致するため、$L$ を最小にする点 $P$ は三角形 $ABC$ の重心であることが示された。
次に、このときの $L$ の最小値を $m$ とする。
$$ \begin{aligned} m &= -3 \left| \frac{\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}}{3} \right|^2 + |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 + |\vec{c}|^2 \\ &= -\frac{1}{3} |\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}|^2 + |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 + |\vec{c}|^2 \\ &= -\frac{1}{3} \left( |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 + |\vec{c}|^2 + 2\vec{a} \cdot \vec{b} + 2\vec{b} \cdot \vec{c} + 2\vec{c} \cdot \vec{a} \right) + |\vec{a}|^2 + |\vec{b}|^2 + |\vec{c}|^2 \\ &= \frac{1}{3} \left( 2|\vec{a}|^2 + 2|\vec{b}|^2 + 2|\vec{c}|^2 - 2\vec{a} \cdot \vec{b} - 2\vec{b} \cdot \vec{c} - 2\vec{c} \cdot \vec{a} \right) \end{aligned} $$
一方、目標の式の $(AB^2 + BC^2 + CA^2)$ の部分をベクトルを用いて計算する。
$$ \begin{aligned} AB^2 + BC^2 + CA^2 &= |\overrightarrow{AB}|^2 + |\overrightarrow{BC}|^2 + |\overrightarrow{CA}|^2 \\ &= |\vec{b} - \vec{a}|^2 + |\vec{c} - \vec{b}|^2 + |\vec{a} - \vec{c}|^2 \\ &= \left( |\vec{a}|^2 - 2\vec{a} \cdot \vec{b} + |\vec{b}|^2 \right) + \left( |\vec{b}|^2 - 2\vec{b} \cdot \vec{c} + |\vec{c}|^2 \right) + \left( |\vec{c}|^2 - 2\vec{c} \cdot \vec{a} + |\vec{a}|^2 \right) \\ &= 2|\vec{a}|^2 + 2|\vec{b}|^2 + 2|\vec{c}|^2 - 2\vec{a} \cdot \vec{b} - 2\vec{b} \cdot \vec{c} - 2\vec{c} \cdot \vec{a} \end{aligned} $$
これらを比較すると、
$$ m = \frac{1}{3} (AB^2 + BC^2 + CA^2) $$
となることが分かる。したがって、$L$ の最小値が $\frac{1}{3} (AB^2 + BC^2 + CA^2)$ であることが示された。
解説
ベクトルを用いた距離の2乗の和の最小化問題における典型的な解法です。 変数が $\vec{x}$ であることに着目し、$\vec{x}$ に関する2次式として扱うことで「ベクトルの絶対値の平方完成」を行うのが基本手順となります。 また、後半の最小値の表現については、$|\vec{a} + \vec{b} + \vec{c}|^2$ の展開式と、三角形の各辺の長さの2乗の和の展開式とを見比べることで、目標の式に到達することができます。
答え
(1) 題意の等式が成り立つことを示した。
(2) $L$ を最小にする点 $P$ が三角形 $ABC$ の重心であること、および最小値が $\frac{1}{3} (AB^2 + BC^2 + CA^2)$ であることを示した。
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