名古屋大学 2012年 理系 第4問 解説

方針・初手
(1) は二項定理の基本公式を用いて一般項から係数を特定します。 (2), (3) も $(p-1)^m$ に対して二項定理を適用し、各項が $p$ や $p^2$ で何回割り切れるかを評価します。$m$ が奇数であること、$p$ で割り切れないことがそれぞれの証明の鍵となります。 (4) は $p=3$ の特別な場合であり、(2) の結果を足がかりにして、正の整数 $r$ についての数学的帰納法で証明します。その際、$x^3+1 = (x+1)(x^2-x+1)$ の因数分解を利用します。
解法1
(1)
$(x-1)^{101}$ の展開式における一般項は、二項定理より
$${}_{101}\mathrm{C}_{k} x^{101-k} (-1)^k$$
と表せる。$x^2$ の項となるのは $101-k = 2$ すなわち $k = 99$ のときである。 その係数は、
$${}_{101}\mathrm{C}_{99} (-1)^{99} = - {}_{101}\mathrm{C}_{2}$$
$$= - \frac{101 \cdot 100}{2 \cdot 1}$$
$$= -5050$$
(2)
二項定理を用いて $(p-1)^m$ を展開する。
$$(p-1)^m = \sum_{k=0}^{m} {}_m\mathrm{C}_{k} p^{m-k} (-1)^k$$
$m$ は奇数であるから、 $k=m$ のときの項 $(-1)^m = -1$ である。 展開式のうち、$k=m$(定数項) および $k=m-1$($p$ の1次項)を取り出して書くと、
$$(p-1)^m = \left( \sum_{k=0}^{m-2} {}_m\mathrm{C}_{k} p^{m-k} (-1)^k \right) + {}_m\mathrm{C}_{m-1} p (-1)^{m-1} + (-1)^m$$
$$= p^2 \left( \sum_{k=0}^{m-2} {}_m\mathrm{C}_{k} p^{m-k-2} (-1)^k \right) + mp - 1$$
ここで、$M = \sum_{k=0}^{m-2} {}_m\mathrm{C}_{k} p^{m-k-2} (-1)^k$ とおくと、$p$ や $m$ は整数であるから $M$ も整数である。
$$(p-1)^m = p^2 M + mp - 1$$
この両辺に $1$ を加えると、
$$(p-1)^m + 1 = p^2 M + mp = p(pM + m)$$
$pM + m$ は整数であるから、$(p-1)^m + 1$ は $p$ で割り切れる。
(3)
(2) の結果より、
$$(p-1)^m + 1 = p^2 M + mp$$
もし $(p-1)^m + 1$ が $p^2$ で割り切れると仮定すると、ある整数 $N$ を用いて
$$p^2 M + mp = p^2 N$$
と表せる。$p \ge 3$ より $p \neq 0$ であるから、両辺を $p$ で割ると、
$$pM + m = pN$$
$$m = p(N - M)$$
$N - M$ は整数であるから、これは $m$ が $p$ で割り切れることを意味する。 しかし、これは問題の条件「$m$ は $p$ で割り切れない」に矛盾する。 したがって、$(p-1)^m + 1$ は $p^2$ で割り切れない。
(4)
「$2^{3^{r-1}m} + 1$ が $3^r$ で割り切れる」という命題を $P(r)$ とし、数学的帰納法で証明する。
(I) $r=1$ のとき
$s = 3^0 m = m$ であり、
$$2^s + 1 = 2^m + 1 = (3-1)^m + 1$$
ここで $p=3$ とすると、「$m$ は3以上の奇数で、3で割り切れない」となるため、(2)の条件をすべて満たす。 よって、(2)より $(3-1)^m + 1$ は $p=3$ で割り切れる。 ゆえに、$r=1$ のとき $P(1)$ は成り立つ。
(II) $r=k$ ($k$ は正の整数) のとき、$P(k)$ が成り立つと仮定する。
すなわち、$2^{3^{k-1}m} + 1$ が $3^k$ で割り切れると仮定し、ある整数 $L$ を用いて
$$2^{3^{k-1}m} + 1 = 3^k L$$
と表せるとする。 $r=k+1$ のときを考える。$s = 3^k m$ であるから、
$$2^{3^k m} + 1 = \left( 2^{3^{k-1}m} \right)^3 + 1$$
ここで、$X = 2^{3^{k-1}m}$ とおくと、
$$X^3 + 1 = (X+1)(X^2 - X + 1)$$
帰納法の仮定より、$X + 1 = 3^k L$ である。 また、$X = 3^k L - 1$ であるから、2つ目の括弧内は
$$X^2 - X + 1 = (3^k L - 1)^2 - (3^k L - 1) + 1$$
$$= (3^{2k} L^2 - 2 \cdot 3^k L + 1) - 3^k L + 1 + 1$$
$$= 3^{2k} L^2 - 3 \cdot 3^k L + 3$$
$$= 3 (3^{2k-1} L^2 - 3^k L + 1)$$
$k \ge 1$ より $2k-1 \ge 1$ である。また $L$ は整数であるから、括弧の中の $3^{2k-1} L^2 - 3^k L + 1$ は整数である。 よって、$X^2 - X + 1$ は 3 で割り切れる。 これらを代入すると、
$$2^{3^k m} + 1 = (X+1)(X^2 - X + 1)$$
$$= 3^k L \cdot 3 (3^{2k-1} L^2 - 3^k L + 1)$$
$$= 3^{k+1} L (3^{2k-1} L^2 - 3^k L + 1)$$
となり、$L (3^{2k-1} L^2 - 3^k L + 1)$ は整数であるから、これは $3^{k+1}$ で割り切れる。 ゆえに、$r=k+1$ のときも $P(k+1)$ が成り立つ。
(I), (II) より、すべての正の整数 $r$ について $2^s + 1$ は $3^r$ で割り切れることが示された。
解説
二項定理を利用して整数の割り切れ(剰余)に関する性質を証明する、典型的な論証問題です。 (2)(3) は合同式を用いても記述できますが、ここでは「割り切れない」ことまで明確に示すために、あえて等式で記述し、着目する次数より小さい項をまとめて整数 $M$ とおく手法が有効です。(3) は背理法を用いた論証の良い練習になります。 (4) は $a^3+b^3 = (a+b)(a^2-ab+b^2)$ の因数分解と数学的帰納法を組み合わせることで鮮やかに示せます。これは大学数学で学ぶ「LTEの補題 (Lifting The Exponent Lemma)」の背景にある基本的な考え方でもあり、難関大でしばしば題材になる手法です。
答え
(1) $$-5050$$
(2) $(p-1)^m + 1$ は $p$ で割り切れる。
(3) $(p-1)^m + 1$ は $p^2$ では割り切れない。
(4) $s = 3^{r-1}m$ とすると、$2^s + 1$ は $3^r$ で割り切れる。
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