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名古屋大学 1975年 文系 第1問 解説

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名古屋大学 1975年 文系 第1問 解説

方針・初手

(1) は「~でないことを証明せよ」という形式から、背理法の利用を第一に考えます。$a = b$ と仮定して矛盾を導きます。$a, b$ の積が $10!$(1から10までの整数の積)になることに着目し、$10!$ が平方数になるかを素因数分解を利用して確認します。

(2)(1) の結果と対称性を利用します。5個の整数の積に対して、必ず「選ばれなかった残りの5個の整数の積」がペアとして存在します。重複する値がある可能性も考慮し、「5個の積として表される値」の集合において1対1の対応(全単射)が作れることを論証します。

解法1

(1)

1から10までの10個の整数から相異なる5個を選び、その積を $a$、残りの5個の積を $b$ とする。 $a = b$ と仮定する。 $a$ と $b$ の積は、1から10までのすべての整数を1回ずつ掛けたものに等しいから、

$$ a \times b = 10! $$

が成り立つ。仮定より $a = b$ であるから、

$$ a^2 = 10! $$

となる。ここで、$10!$ を素因数分解すると、

$$ 10! = 1 \cdot 2 \cdot 3 \cdot 4 \cdot 5 \cdot 6 \cdot 7 \cdot 8 \cdot 9 \cdot 10 $$

$$ = 2 \cdot 3 \cdot 2^2 \cdot 5 \cdot (2 \cdot 3) \cdot 7 \cdot 2^3 \cdot 3^2 \cdot (2 \cdot 5) $$

$$ = 2^8 \cdot 3^4 \cdot 5^2 \cdot 7 $$

となる。 素因数 $7$ の指数は $1$ であり、奇数であるから、$10!$ は平方数ではない。 しかし、これは $a$ が整数であり、$a^2$ が平方数であることに矛盾する。 したがって、仮定は誤りであり、

$$ a \neq b $$

が成り立つ。

(2)

1から10までの10個の整数のうち、相異なる5個の積として表される整数の集合を $A$ とする。 任意の要素 $x \in A$ に対して、$x$ を構成する5個の整数の積に対応する「残りの5個の整数の積」を $y$ とする。 $y$ もまた1から10までの整数のうちの相異なる5個の整数の積であるから、$y \in A$ である。 また、$x$ と $y$ は合わせて1から10までのすべての整数の積となるから、

$$ x \cdot y = 10! $$

すなわち、

$$ y = \frac{10!}{x} $$

が成り立つ。 ここで、関数 $f: A \to A$ を

$$ f(x) = \frac{10!}{x} $$

と定義する。すると、

$$ f(f(x)) = \frac{10!}{\frac{10!}{x}} = x $$

が成り立つため、$f$ は集合 $A$ 上の全単射である。 (1) の結果より、いかなる5個の積とその残りの5個の積も等しくならないため、任意の $x \in A$ について $x \neq f(x)$ である。 したがって、集合 $A$ の要素は $x$ と $f(x)$ の互いに異なる2つの値からなるペアに過不足なく分割できる。

各ペア $(x, f(x))$ において、$x \cdot f(x) = 10!$ が成り立つため、$x$ と $f(x)$ のうち一方は必ず $\sqrt{10!}$ より小さく、もう一方は必ず $\sqrt{10!}$ より大きくなる。 $f$ が全単射であることから、集合 $A$ に属する要素のうち $\sqrt{10!}$ より小さい要素の集合と、$\sqrt{10!}$ より大きい要素の集合の間には1対1の対応関係が成立する。 ゆえに、$\sqrt{10!}$ より小さいものの個数 $p$ と、大きいものの個数 $q$ は等しくなる。 よって、

$$ p = q $$

が成り立つ。

解説

(1) は整数の基本性質を問う問題です。積の全体が $10!$ になることと、平方数の素因数分解における各素数の指数がすべて偶数になるという性質を利用すれば、素因数 $7$ に着目して直ちに矛盾を導けます。

(2) は集合の要素間の1対1対応(全単射によるペアリング)を利用する論証問題です。選び方 ${}_{10}\mathrm{C}_{5}$ 通りに対してではなく、「積として表される整数」という値の種類(集合)について問われていることに注意が必要です。積の組合せによって同じ値が複数回現れる可能性があっても、要素 $x$ に対して $f(x) = \frac{10!}{x}$ という対応を考えれば、値の集合全体できれいにペアが作れることが証明の肝となります。

答え

(1) 背理法を用い、$a=b$ と仮定すると $a^2=10!$ となるが、$10!$ の素因数分解において素因数 $7$ の指数が奇数であるため平方数にならず矛盾することを示した。

(2) 5個の積の集合に対して $x$ と $\frac{10!}{x}$ が全単射によってペアになることを構成し、各ペアについて一方が $\sqrt{10!}$ より小さく、もう一方が大きくなることから $p=q$ を示した。

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