九州大学 1969年 理系 第2問 解説

方針・初手
(1) は二項定理を用いて展開式の一般項を書き下し、$x$ の次数が $0$ になる条件を調べる。 (2) は $\left\{1 + \left(x + \frac{1}{x^2}\right)\right\}^{10}$ のように2つの部分に分けて二項定理を適用し、(1) の結果を利用する。「(1)を利用して」と指定があるため、多項定理を直接使うのではなく、二項定理を2回適用して $x + \frac{1}{x^2}$ のかたまりを作る方針をとる。
解法1
(1)(イ)
二項定理により、$\left(x + \frac{1}{x^2}\right)^n$ の展開式における一般項は、
$${}_n\mathrm{C}_k x^{n-k} \left(\frac{1}{x^2}\right)^k = {}_n\mathrm{C}_k x^{n-3k} \quad (k = 0, 1, 2, \dots, n)$$
と表される。定数項となるのは、$x$ の次数が $0$ になるとき、すなわち
$$n - 3k = 0 \iff n = 3k$$
を満たす整数 $k$ ($0 \le k \le n$) が存在するときである。
$n$ は正の整数であるから、この条件を満たすとき $k \ge 1$ の整数となる。したがって、$n = 3k$ を満たす整数 $k$ が存在することは、$n$ が $3$ の倍数であることと同値である。 よって、展開式の中に定数項が含まれるのは、$n$ が $3$ の倍数であるときに限る。
(1)(ロ)
$n = 3m$ ($m$ は正の整数)のとき、定数項を与える $k$ は $k = m$ である。 したがって、求める定数項は一般項の式に $n = 3m, k = m$ を代入して、
$${}_{3m}\mathrm{C}_m$$
となる。階乗を用いて $\frac{(3m)!}{m!(2m)!}$ と表してもよい。
(2)
与式を $\left\{1 + \left(x + \frac{1}{x^2}\right)\right\}^{10}$ とみて二項定理を適用すると、展開式の一般項は、
$${}_{10}\mathrm{C}_r 1^{10-r} \left(x + \frac{1}{x^2}\right)^r = {}_{10}\mathrm{C}_r \left(x + \frac{1}{x^2}\right)^r \quad (r = 0, 1, 2, \dots, 10)$$
となる。 展開式の中の定数項は、各 $r$ に対する ${}_{10}\mathrm{C}_r \left(x + \frac{1}{x^2}\right)^r$ の展開式に含まれる定数項の総和となる。
$r = 0$ のとき、項は ${}_{10}\mathrm{C}_0 = 1$ となり、これは定数項である。
$r \ge 1$ のとき、(1) の結果を利用すると、$\left(x + \frac{1}{x^2}\right)^r$ の展開式に定数項が含まれるのは $r$ が $3$ の倍数であるときに限られる。 $1 \le r \le 10$ の範囲にある $3$ の倍数は $r = 3, 6, 9$ のみである。 また、そのときの定数項は (1)(ロ) の結果において $m = \frac{r}{3}$ としたものになるから、それぞれの $r$ において生じる定数項は以下の通り計算できる。
$r = 3$ ($m = 1$) のとき、定数項は ${}_{10}\mathrm{C}_3 \times {}_3\mathrm{C}_1 = \frac{10 \cdot 9 \cdot 8}{3 \cdot 2 \cdot 1} \times 3 = 120 \times 3 = 360$
$r = 6$ ($m = 2$) のとき、定数項は ${}_{10}\mathrm{C}_6 \times {}_6\mathrm{C}_2 = {}_{10}\mathrm{C}_4 \times 15 = 210 \times 15 = 3150$
$r = 9$ ($m = 3$) のとき、定数項は ${}_{10}\mathrm{C}_9 \times {}_9\mathrm{C}_3 = {}_{10}\mathrm{C}_1 \times \frac{9 \cdot 8 \cdot 7}{3 \cdot 2 \cdot 1} = 10 \times 84 = 840$
これらと $r = 0$ のときの定数項 $1$ をすべて足し合わせて、求める定数項は
$$1 + 360 + 3150 + 840 = 4351$$
となる。
解説
二項定理の基本性質を問う典型問題である。 (1) で一般項の次数に注目して定数項となる条件とその値を導き、(2) でそれを活用するという誘導構成になっている。 (2) は直接多項定理を用いても解くことはできるが、問題文に「(1)を利用して」と明記されているため、二項定理を2回用いる形で解答を構成することが求められている。 また、$r=0$ の場合は (1) の前提である「正の整数 $n$」に当てはまらないケースであるため、見落とさずに個別に処理するよう注意が必要である。
答え
(1)(イ) 展開式の一般項は ${}_n\mathrm{C}_k x^{n-3k}$ であり、定数項をもつ条件 $n - 3k = 0$ を満たす整数 $k$ ($0 \le k \le n$) が存在するのは $n$ が $3$ の倍数のときに限るため。(証明終)
(1)(ロ) ${}_{3m}\mathrm{C}_m$
(2) $4351$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











