大阪大学 2012年 文系 第3問 解説

方針・初手
(1) は絶対値を含む不等式の表す領域を図示する問題である。絶対値の中身の正負によって場合分けし、境界線を明確にすることが初手となる。(2) は放物線と直線で囲まれた面積を求める典型問題である。交点の $x$ 座標を求めて積分区間を定め、定積分を計算する。いわゆる「$\frac{1}{6}$公式」を活用して計算を簡略化する。(3) は (2) で求めた面積の最大化問題である。面積の式の中に現れる $a, b$ のまとまりに注目し、領域 $E$ における2変数関数の最大最小問題に帰着させる。
解法1
(1)
領域 $D$ は、放物線 $y = -x^2 + 16$ の下側の領域である(境界線を含まない)。
領域 $E$ を表す不等式 $|x - 1| + |y| \leqq 1$ について、絶対値の中身の正負で場合分けを行う。
(i)
$x - 1 \geqq 0$ かつ $y \geqq 0$ (すなわち $x \geqq 1, y \geqq 0$)のとき $x - 1 + y \leqq 1$ より、$y \leqq -x + 2$
(ii)
$x - 1 \geqq 0$ かつ $y < 0$ (すなわち $x \geqq 1, y < 0$)のとき $x - 1 - y \leqq 1$ より、$y \geqq x - 2$
(iii)
$x - 1 < 0$ かつ $y \geqq 0$ (すなわち $x < 1, y \geqq 0$)のとき $-(x - 1) + y \leqq 1$ より、$y \leqq x$
(iv)
$x - 1 < 0$ かつ $y < 0$ (すなわち $x < 1, y < 0$)のとき $-(x - 1) - y \leqq 1$ より、$y \geqq -x$
以上より、領域 $E$ は、4点 $(0, 0), (1, 1), (2, 0), (1, -1)$ を頂点とする正方形の内部および周である。
図示する際、領域 $D$ の境界となる放物線は頂点が $(0, 16)$ で、点 $(\pm 4, 0)$ を通る。領域 $E$ の $y$ 座標の最大値は $1$、最小値は $-1$ であり、放物線 $y = -x^2 + 16$ の $0 \leqq x \leqq 2$ における $y$ 座標は $12 \leqq y \leqq 16$ であるから、領域 $E$ は完全に領域 $D$ の内部に含まれる。解答用紙には、これらの位置関係が分かるように放物線と正方形を描き、それぞれの指定された領域を斜線等で示す。
(2)
点 $A(a, b)$ を通り、傾きが $-2a$ の直線の方程式は、
$$ y - b = -2a(x - a) $$
すなわち、
$$ y = -2ax + 2a^2 + b $$
である。この直線と放物線 $y = -x^2 + 16$ の交点の $x$ 座標は、次の方程式の解である。
$$ -x^2 + 16 = -2ax + 2a^2 + b $$
$$ x^2 - 2ax + 2a^2 + b - 16 = 0 \quad \cdots \text{①} $$
ここで、点 $A(a, b)$ は領域 $D$ に属するので、$b < -a^2 + 16$ が成り立つ。 方程式①の判別式を $D'$ とすると、
$$ \frac{D'}{4} = (-a)^2 - (2a^2 + b - 16) = 16 - a^2 - b $$
$b < -a^2 + 16$ より $16 - a^2 - b > 0$ であるから、$D' > 0$ となり、方程式①は異なる2つの実数解をもつ。 これらの解を $\alpha, \beta$ ($\alpha < \beta$) とすると、解の公式より
$$ x = a \pm \sqrt{16 - a^2 - b} $$
であるから、$\beta - \alpha = 2\sqrt{16 - a^2 - b}$ となる。
直線と放物線で囲まれた部分の面積 $S(a, b)$ は、区間 $\alpha \leqq x \leqq \beta$ において放物線が直線より上側にあるため、次のように計算できる。
$$ \begin{aligned} S(a, b) &= \int_{\alpha}^{\beta} \left\{ (-x^2 + 16) - (-2ax + 2a^2 + b) \right\} dx \\ &= -\int_{\alpha}^{\beta} (x^2 - 2ax + 2a^2 + b - 16) dx \\ &= -\int_{\alpha}^{\beta} (x - \alpha)(x - \beta) dx \\ &= \frac{1}{6} (\beta - \alpha)^3 \end{aligned} $$
ここに $\beta - \alpha = 2\sqrt{16 - a^2 - b}$ を代入して、
$$ \begin{aligned} S(a, b) &= \frac{1}{6} \left( 2\sqrt{16 - a^2 - b} \right)^3 \\ &= \frac{8}{6} (16 - a^2 - b)^{\frac{3}{2}} \\ &= \frac{4}{3} (16 - a^2 - b)^{\frac{3}{2}} \end{aligned} $$
(3)
$S(a, b)$ が最大となるのは、$16 - a^2 - b$ が最大となるとき、すなわち $a^2 + b$ が最小となるときである。 そこで、$k = a^2 + b$ とおき、点 $(a, b)$ が領域 $E$ を動くときの $k$ の最小値を求める。
$b = -a^2 + k$ と変形できる。これは $ab$ 平面上において、頂点が $(0, k)$ で上に凸の放物線を表す。 $k$ の値を小さくすることは、この放物線を $b$ 軸の負の方向へ平行移動させることに対応する。この放物線が領域 $E$ と共有点をもつような最小の $k$ を探せばよい。
領域 $E$ の下側の境界は、以下の2つの線分である。
- 線分 $L_1$: $b = -a$ ($0 \leqq a \leqq 1$)
- 線分 $L_2$: $b = a - 2$ ($1 \leqq a \leqq 2$)
放物線 $b = -a^2 + k$ が線分 $L_1$ と接するとき、
$$ -a^2 + k = -a $$
$$ a^2 - a - k = 0 $$
この2次方程式の判別式を $D_1$ とすると、$D_1 = 1 + 4k = 0$ より $k = -\frac{1}{4}$ である。 このとき、接点の $a$ 座標は $a = \frac{1}{2}$ となり、$0 \leqq a \leqq 1$ を満たすため、放物線は線分 $L_1$ 上で接する。
放物線 $b = -a^2 + k$ が線分 $L_2$ と接するとき、
$$ -a^2 + k = a - 2 $$
$$ a^2 + a - 2 - k = 0 $$
この2次方程式の判別式を $D_2$ とすると、$D_2 = 1 - 4(-2 - k) = 9 + 4k = 0$ より $k = -\frac{9}{4}$ である。 このとき、接点の $a$ 座標は $a = -\frac{1}{2}$ となり、$1 \leqq a \leqq 2$ を満たさないため、放物線は線分 $L_2$ とは接しない。
また、領域 $E$ の頂点のうち下側にある点 $(1, -1)$ を放物線が通るとき、 $-1 = -1^2 + k$ より $k = 0$ となり、接するときの $k = -\frac{1}{4}$ よりも大きい。
以上より、放物線が領域 $E$ と共有点をもつための $k$ の最小値は $-\frac{1}{4}$ である。 したがって、$16 - a^2 - b$ の最大値は、
$$ 16 - \left( -\frac{1}{4} \right) = \frac{65}{4} $$
となる。よって、$S(a, b)$ の最大値は、
$$ \begin{aligned} S(a, b) &= \frac{4}{3} \left( \frac{65}{4} \right)^{\frac{3}{2}} \\ &= \frac{4}{3} \cdot \frac{65\sqrt{65}}{8} \\ &= \frac{65\sqrt{65}}{6} \end{aligned} $$
解説
(1) は絶対値を含む不等式の基本処理であり、丁寧に場合分けをして図示することが求められる。 (2) は放物線と直線の交点から面積を求める定石通りの問題である。交点の $x$ 座標が複雑な式になるため、解を $\alpha, \beta$ とおいて解と係数の関係や解の公式から $\beta - \alpha$ を求め、定積分の計算にはいわゆる $\frac{1}{6}$ 公式を利用すると計算ミスのリスクを大きく減らすことができる。 (3) は $a, b$ の2変数関数の最大・最小問題である。$S(a, b)$ の式全体を扱うのではなく、根号の中身である $16 - a^2 - b$ の最大化、ひいては $a^2 + b$ の最小化に帰着させるのがポイントである。これを $b = -a^2 + k$ という放物線と領域の共有点条件として視覚的に捉える(線形計画法の非線形版)ことで、見通しよく最小値を特定できる。境界線との接点を調べる際は、接点が線分の定義域内に収まっているかどうかの確認を忘れないようにしたい。
答え
(1)
領域 $D$ は放物線 $y = -x^2 + 16$ の下側(境界を含まない)。 領域 $E$ は4点 $(0, 0), (1, 1), (2, 0), (1, -1)$ を頂点とする正方形の内部および周。 (図は省略するが、領域 $E$ は完全に領域 $D$ の内部に含まれる)
(2)
$$ S(a, b) = \frac{4}{3} (16 - a^2 - b)^{\frac{3}{2}} $$
(3)
$$ \frac{65\sqrt{65}}{6} $$
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