東京工業大学 2020年 理系 第1問 解説

方針・初手
(1) では、式 $x^2 - x - 23$ の $3$ を法とする余りに着目する。絶対値がついているため、中身の正負によって式の値がどう変わるかを場合分けして考える必要がある。
(2) では、(1) の結果を利用して「$x$ を $3$ で割って $2$ 余るとき、$|x^2 - x - 23|$ は $3$ の倍数になる」ことを見抜く。「素数かつ $3$ の倍数である数は $3$ しかない」という整数問題の定石から条件を満たす $x$ が極めて限定されることに気づくのが鍵となる。
解法1
(1)
$f(x) = x^2 - x - 23$ とおく。 $3$ を法とする合同式で考えると、整数 $x$ に対して、
$$ x^2 - x - 23 \equiv x(x-1) - (-1) \equiv x(x-1) + 1 \pmod 3 $$
である。$x$ を $3$ で割った余りで場合分けする。
(i) $x \equiv 0 \pmod 3$ または $x \equiv 1 \pmod 3$ のとき
$x(x-1)$ は $3$ の倍数であるから、
$$ f(x) \equiv 1 \pmod 3 $$
となる。
(ii) $x \equiv 2 \pmod 3$ のとき
$x(x-1) \equiv 2 \cdot 1 = 2 \pmod 3$ であるから、
$$ f(x) \equiv 2 + 1 = 3 \equiv 0 \pmod 3 $$
となる。
さて、求めるのは $|f(x)| \equiv 2 \pmod 3$ となる正の整数 $x$ である。 $f(x) \geqq 0$ のとき、$|f(x)| = f(x)$ であるから、(i), (ii) より $|f(x)|$ は $3$ を法として $1$ または $0$ に合同であり、$2$ に合同になることはない。 したがって、$|f(x)| \equiv 2 \pmod 3$ となるためには、
$$ f(x) < 0 $$
であることが必要である。このとき、$|f(x)| = -f(x)$ であるから、
- (i) の場合:$|f(x)| \equiv -1 \equiv 2 \pmod 3$
- (ii) の場合:$|f(x)| \equiv 0 \pmod 3$
となり、(i) の場合のみ条件を満たす。 以上より、条件を満たす $x$ は
$$ x^2 - x - 23 < 0 \quad \text{かつ} \quad (x \equiv 0 \pmod 3 \text{ または } x \equiv 1 \pmod 3) $$
を満たす正の整数である。 不等式 $x(x-1) < 23$ を満たす正の整数 $x$ は $x = 1, 2, 3, 4, 5$ であり、このうち $x \equiv 0 \pmod 3$ または $x \equiv 1 \pmod 3$ を満たすものは
$$ x = 1, 3, 4 $$
である。
(2)
(1) の考察より、$x \equiv 2 \pmod 3$ のとき $|x^2 - x - 23|$ は $3$ の倍数になる。 これが素数となるためには、値が $3$ 自身でなければならない。 すなわち、
$$ |x^2 - x - 23| = 3 $$
である。これを解くと
$$ x^2 - x - 23 = 3 \quad \text{または} \quad x^2 - x - 23 = -3 $$
となる。 $x^2 - x - 23 = 3$ のとき、$x^2 - x - 26 = 0$ となるが、これを満たす整数 $x$ は存在しない。 $x^2 - x - 23 = -3$ のとき、$x^2 - x - 20 = 0$ より $(x-5)(x+4) = 0$ であり、$x$ は正の整数なので $x = 5$ を得る。 よって、$x \equiv 2 \pmod 3$ となる正の整数のうち、$|x^2 - x - 23|$ が素数になるのは $x = 5$ のみである。
正の整数の列 $1, 2, 3, 4, \dots$ の中には、$3$ 個連続するごとに $3$ で割って $2$ 余る数が必ず $1$ つ含まれる。 もし、連続する正の整数が $k \geqq 6$ 個あったとすると、その中には $3$ で割って $2$ 余る数が必ず $2$ 個以上含まれる。 しかし、そのうち式の値が素数になるのは $x = 5$ に限られるため、もう一方に対する式の値は合成数になってしまう。 したがって、$k \leqq 5$ でなければならない。
$k = 5$ のとき、連続する $5$ 個の整数の中に $3$ で割って $2$ 余る数がただ $1$ つ($x=5$)だけ含まれるような組合せは、
$$ x = 3, 4, 5, 6, 7 $$
のみである。 (例えば $2, 3, 4, 5, 6$ には $x=2$ が、$4, 5, 6, 7, 8$ には $x=8$ が含まれ、それらに対する値は素数にならないため不適)
実際に $x = 3, 4, 5, 6, 7$ のとき、$|x^2 - x - 23|$ の値を計算すると、
- $x=3$ のとき $|9 - 3 - 23| = 17$ (素数)
- $x=4$ のとき $|16 - 4 - 23| = 11$ (素数)
- $x=5$ のとき $|25 - 5 - 23| = 3$ (素数)
- $x=6$ のとき $|36 - 6 - 23| = 7$ (素数)
- $x=7$ のとき $|49 - 7 - 23| = 19$ (素数)
となり、すべて素数となる。 以上より、$k$ の最大値は $5$ であり、そのときの整数の列は $x_1, \dots, x_5 = 3, 4, 5, 6, 7$ である。
解説
絶対値と合同式 絶対値のついた式を合同式で扱う際は、中身の正負によって符号が変わることに注意する。(1)で $x^2 - x - 23 \geqq 0$ の範囲では絶対に条件を満たさないことに気づければ、調べる範囲を一気に絞り込むことができる。
素数の絞り込み 「ある素数 $p$ の倍数であり、かつ素数である数は $p$ 自身のみ」という整数問題の定石を用いる。本問では (1) の結果が誘導となっており、(2) で式が $3$ の倍数になる条件を漏れなく拾い上げるための足場となる。
連続する整数の性質 $k$ 個の連続した整数の中に $m$ の倍数(あるいは $m$ で割って $r$ 余る数)がいくつ含まれるかを考えることで、最大個数 $k$ の上限を論理的に評価する手法がポイントである。鳩の巣原理的な発想が問われている。
答え
(1) $x = 1, 3, 4$
(2) $k$ の最大値:$5$ 連続した正の整数:$3, 4, 5, 6, 7$
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