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東京大学 1974年 文系 第3問 解説

数学1/立体図形数学3/積分法テーマ/空間図形テーマ/面積・体積
東京大学 1974年 文系 第3問 解説

方針・初手

立体を適切な座標軸に設定し、平面で切断したときの断面積を定積分して体積を求める。 円柱の軸を $z$ 軸、球の中心を原点にとり、$z$ 軸に垂直な平面 $z=t$ での切り口を考えるのが標準的である。また、回転体とみて円筒分割積分(バームクーヘン積分)を用いる方針も有効である。

解法1

球の中心を原点 $O$ とし、くり抜く円柱の軸を $z$ 軸とする空間座標を考える。 球の半径は $a$ であるから、球の内部の領域は以下の不等式で表される。

$$ x^2 + y^2 + z^2 \leqq a^2 $$

円柱の半径を $r$ とすると、円柱の内部は $x^2 + y^2 \leqq r^2$ である。 環状部分の高さが $2h$ であり、図形は $xy$ 平面について対称であるから、環状部分の $z$ 座標の範囲は $-h \leqq z \leqq h$ となる。 円柱の側面と球面の交線の $z$ 座標が $z = \pm h$ であることから、 $x^2 + y^2 = r^2$ と $z = \pm h$ を球面の方程式に代入して、以下の関係式を得る。

$$ r^2 + h^2 = a^2 $$

すなわち、くり抜かれる円柱の半径の2乗は $r^2 = a^2 - h^2$ である。

この環状部分を、 $z$ 軸に垂直な平面 $z = t$ ($-h \leqq t \leqq h$)で切断したときの断面について考える。 この断面は、球の断面である半径 $\sqrt{a^2 - t^2}$ の円から、円柱の断面である半径 $r = \sqrt{a^2 - h^2}$ の円を除いた、ドーナツ状の領域(円環)になる。 したがって、断面積 $S(t)$ は外側の円の面積から内側の円の面積を引いて、次のように計算できる。

$$ \begin{aligned} S(t) &= \pi (a^2 - t^2) - \pi r^2 \\ &= \pi (a^2 - t^2) - \pi (a^2 - h^2) \\ &= \pi (h^2 - t^2) \end{aligned} $$

求める環状部分の体積 $V$ は、この断面積 $S(t)$ を $-h$ から $h$ まで定積分すればよい。

$$ \begin{aligned} V &= \int_{-h}^h S(t) dt \\ &= \int_{-h}^h \pi (h^2 - t^2) dt \end{aligned} $$

被積分関数は $t$ の偶関数であるから、積分区間を $0$ から $h$ までにして2倍にする。

$$ \begin{aligned} V &= 2\pi \int_0^h (h^2 - t^2) dt \\ &= 2\pi \left[ h^2 t - \frac{1}{3} t^3 \right]_0^h \\ &= 2\pi \left( h^3 - \frac{1}{3} h^3 \right) \\ &= \frac{4}{3} \pi h^3 \end{aligned} $$

解法2

円筒分割積分(バームクーヘン積分)を用いて体積を求める。

解法1と同様に座標軸を設定する。くり抜かれる円柱の半径は $r = \sqrt{a^2 - h^2}$ である。 環状部分は、 $xy$ 平面上の領域 $D$ を $z$ 軸の周りに1回転させてできる回転体とみなすことができる。領域 $D$ は、 $xz$ 平面($x \geqq 0$)において、 $r \leqq x \leqq a$ かつ $-\sqrt{a^2 - x^2} \leqq z \leqq \sqrt{a^2 - x^2}$ を満たす領域である。

中心軸($z$ 軸)からの距離が $x$ ($\sqrt{a^2 - h^2} \leqq x \leqq a$)の位置にある、微小な厚さ $dx$ の円筒を考える。 この円筒の高さは $2\sqrt{a^2 - x^2}$ であり、円周の長さは $2\pi x$ であるから、その微小体積 $dV$ は以下のようになる。

$$ dV = 2\pi x \cdot 2\sqrt{a^2 - x^2} dx = 4\pi x \sqrt{a^2 - x^2} dx $$

求める体積 $V$ は、これを $x = \sqrt{a^2 - h^2}$ から $x = a$ まで定積分することで得られる。

$$ V = \int_{\sqrt{a^2 - h^2}}^a 4\pi x \sqrt{a^2 - x^2} dx $$

ここで、$u = a^2 - x^2$ と置換積分を行う。 $du = -2x dx$ であり、積分区間は $x$ が $\sqrt{a^2 - h^2}$ から $a$ に変化するとき、$u$ は $h^2$ から $0$ へ変化する。

$$ \begin{aligned} V &= \int_{h^2}^0 4\pi \sqrt{u} \left( -\frac{1}{2} \right) du \\ &= 2\pi \int_0^{h^2} u^{\frac{1}{2}} du \\ &= 2\pi \left[ \frac{2}{3} u^{\frac{3}{2}} \right]_0^{h^2} \\ &= 2\pi \cdot \frac{2}{3} (h^2)^{\frac{3}{2}} \\ &= \frac{4}{3} \pi h^3 \end{aligned} $$

解説

本問は「ナプキンリング問題」として広く知られている有名な問題である。 最大の特徴は、計算の途中で球の半径 $a$ が相殺され、最終的な体積が「残った部分の高さの半分」である $h$ のみで決まる点にある。すなわち、元の球がどれほど巨大であっても、高さが $2h$ になるようにくり抜いた環状部分の体積は、常に半径 $h$ の球の体積 $\frac{4}{3}\pi h^3$ に等しくなる。 計算方針としては、$z$ 軸に垂直な平面での切断面を考える解法1が最も平易であり、無理関数の積分を避けることができる。バームクーヘン積分を用いる解法2も、置換積分の手順に習熟していれば見通しよく計算を進められる。

答え

$$ \frac{4}{3} \pi h^3 $$

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