東京大学 1974年 文系 第2問 解説

方針・初手
線分の両端を放物線上の2点として設定し、その長さが $l$ であるという条件式を立てる。求めるのは中点 $M$ の座標であるため、両端の座標を用いて中点 $M$ の $x$ 座標($X$)と $y$ 座標($Y$)を表す。
$M$ が $x$ 軸にもっとも近いということは、$Y$ が最小になるということである。基本対称式を用いて変数を消去し、$Y$ を $X$ の関数として表すことで、関数の最小値を求める問題に帰着させる。
解法1
線分の両端の点を $\mathrm{P}(p, p^2), \mathrm{Q}(q, q^2)$ とおく。$\mathrm{P}$ と $\mathrm{Q}$ は異なる点なので $p \neq q$ である。
線分 $\mathrm{PQ}$ の長さが $l$ であることから、以下の関係式が成り立つ。
$$ (p-q)^2 + (p^2-q^2)^2 = l^2 $$
$$ (p-q)^2 \{ 1 + (p+q)^2 \} = l^2 $$
線分 $\mathrm{PQ}$ の中点を $M(X,Y)$ とすると、$X, Y$ は次のように表される。
$$ X = \frac{p+q}{2} \iff p+q = 2X $$
$$ Y = \frac{p^2+q^2}{2} \iff p^2+q^2 = 2Y $$
これらから $p, q$ の基本対称式の値を $X, Y$ で表す。
$$ (p+q)^2 - 2pq = 2Y $$
$$ (2X)^2 - 2pq = 2Y $$
$$ pq = 2X^2 - Y $$
ここで、$(p-q)^2$ を $X, Y$ で表すと以下のようになる。
$$ (p-q)^2 = (p+q)^2 - 4pq = 4X^2 - 4(2X^2 - Y) = 4(Y - X^2) $$
このとき、$p, q$ が異なる実数として存在するための条件は $(p-q)^2 > 0$、すなわち $Y > X^2$ であることに注意する。
得られた式を線分の長さの条件式に代入する。
$$ 4(Y - X^2) \{ 1 + (2X)^2 \} = l^2 $$
$1+4X^2 > 0$ であるため、両辺を割って $Y$ について解くことができる。
$$ Y - X^2 = \frac{l^2}{4(1+4X^2)} $$
$$ Y = X^2 + \frac{l^2}{4(1+4X^2)} $$
ここで、$Y - X^2 = \frac{l^2}{4(1+4X^2)} > 0$ は常に成り立つため、$p, q$ の実数条件は満たされている。
$M$ が $x$ 軸にもっとも近いとき、$Y$ は最小となる。上記の式を次のように変形する。
$$ Y = \frac{1}{4}(1+4X^2) + \frac{l^2}{4(1+4X^2)} - \frac{1}{4} $$
$1+4X^2 > 0$ であるから、相加平均と相乗平均の大小関係を用いると以下の不等式が成り立つ。
$$ \frac{1}{4}(1+4X^2) + \frac{l^2}{4(1+4X^2)} \geqq 2 \sqrt{\frac{1}{4}(1+4X^2) \cdot \frac{l^2}{4(1+4X^2)}} = 2 \cdot \frac{l}{4} = \frac{l}{2} $$
($l \geqq 1 > 0$ より $\sqrt{l^2} = l$ となる)
したがって、$Y$ の範囲は次のように求まる。
$$ Y \geqq \frac{l}{2} - \frac{1}{4} = \frac{2l-1}{4} $$
等号が成立するのは、次が成り立つときである。
$$ \frac{1}{4}(1+4X^2) = \frac{l^2}{4(1+4X^2)} $$
$$ (1+4X^2)^2 = l^2 $$
$1+4X^2 > 0$ かつ $l \geqq 1 > 0$ より、以下のようになる。
$$ 1+4X^2 = l $$
$$ 4X^2 = l - 1 $$
$l \geqq 1$ であるから $l-1 \geqq 0$ となり、これを満たす実数 $X$ は存在して以下のように求まる。
$$ X = \pm \frac{\sqrt{l-1}}{2} $$
このとき $Y$ は最小値 $\frac{2l-1}{4}$ をとる。
よって、求める $M$ の座標は $\left( \pm \frac{\sqrt{l-1}}{2}, \frac{2l-1}{4} \right)$ である。
解法2
線分の両端を $\mathrm{P}(p, p^2), \mathrm{Q}(q, q^2)$ ($p \neq q$)、中点を $M(X,Y)$ とおく。
$$ p+q = 2X, \quad p^2+q^2 = 2Y $$
より、$pq = 2X^2 - Y, \quad (p-q)^2 = 4(Y-X^2)$ となる。$\mathrm{PQ}^2 = l^2$ より、
$$ (p-q)^2 + (p^2-q^2)^2 = l^2 $$
$$ (p-q)^2 \{ 1 + (p+q)^2 \} = l^2 $$
これらを代入して整理すると、$Y$ は $X$ の関数として次のように表せる(実数条件を満たすことは解法1と同様である)。
$$ Y = X^2 + \frac{l^2}{4(1+4X^2)} $$
これを $f(X)$ とおき、微分して増減を調べる。
$$ \begin{aligned} f'(X) &= 2X + \frac{l^2}{4} \cdot \frac{-8X}{(1+4X^2)^2} \\ &= 2X \left\{ 1 - \frac{l^2}{(1+4X^2)^2} \right\} \\ &= \frac{2X}{(1+4X^2)^2} \left\{ (1+4X^2)^2 - l^2 \right\} \\ &= \frac{2X}{(1+4X^2)^2} (1+4X^2 - l)(1+4X^2 + l) \end{aligned} $$
ここで、$l \geqq 1$ および $X^2 \geqq 0$ より、$1+4X^2+l > 0$ は常に成り立つ。 したがって、$f'(X) = 0$ となるのは、$X=0$ または $1+4X^2-l=0$ のときである。
$1+4X^2-l=0$ を解くと、$X^2 = \frac{l-1}{4}$ となる。 $l \geqq 1$ より右辺は $0$ 以上であるため、
$$ X = \pm \frac{\sqrt{l-1}}{2} $$
$\alpha = \frac{\sqrt{l-1}}{2}$ とおく($\alpha \geqq 0$)。
$l=1$ のときは $\alpha = 0$ となり、$f'(X)=0$ の解は $X=0$ のみである。このとき $X=0$ で最小値をとる。 $l > 1$ のときは、増減表は以下のようになる。
| $X$ | $\cdots$ | $-\alpha$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ | $\alpha$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $f'(X)$ | $-$ | $0$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
| $f(X)$ | $\searrow$ | 極小 | $\nearrow$ | 極大 | $\searrow$ | 極小 | $\nearrow$ |
増減表より、$X = \pm \alpha$ のときに極小かつ最小となる。 このときの最小値は次のように計算できる。
$$ \begin{aligned} f(\pm \alpha) &= \frac{l-1}{4} + \frac{l^2}{4 \left( 1 + 4 \cdot \frac{l-1}{4} \right)} \\ &= \frac{l-1}{4} + \frac{l^2}{4l} \\ &= \frac{l-1}{4} + \frac{l}{4} \\ &= \frac{2l-1}{4} \end{aligned} $$
これは $l=1$ のときも満たす。 よって求める $M$ の座標は、$\left( \pm \frac{\sqrt{l-1}}{2}, \frac{2l-1}{4} \right)$ である。
解説
放物線上の2点の関係を扱う典型的な軌跡・最大最小問題である。点の座標を直接求めるのではなく、基本対称式(和と積)を利用して計算量を減らすのがポイントである。
軌跡の方程式や変数の消去を行った際は、消去された文字が実数として存在するための条件(判別式や $(p-q)^2 > 0$ など)を必ず確認する必要がある。本問では結果的に常に満たされる形になるが、記述式解答ではこの言及の有無が評価を分ける。
最小値を求めるにあたっては、微分の利用(解法2)も確実な方法であるが、式の形から相加平均と相乗平均の大小関係(解法1)を見抜けると非常に鮮やかに解くことができる。問題文にある「$l \geqq 1$」という条件は、等号成立条件(極小値をもつ条件)を満たすための重要な伏線となっている。
答え
$$ \left( \pm \frac{\sqrt{l-1}}{2}, \frac{2l-1}{4} \right) $$
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