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東京大学 1966年 理系 第1問 解説

数学1/方程式不等式数学A/整数問題テーマ/場合分け
東京大学 1966年 理系 第1問 解説

方針・初手

「10円未満の端数は10円に切り上げる」という操作を不等式を用いて定式化する。計算上の運賃を $y$ 円とし、切り上げ後の実際の運賃が $Y$ 円($10$ の倍数)であるとき、その条件は $Y - 10 < y \leqq Y$ と表せる。 これを用いて問題文の条件を2つの不等式に翻訳し、$a, b$ が $0.1$ の整数倍であるという条件を活用して候補を絞り込む。

解法1

距離 $x \text{ km} \ (x > 300)$ に対する計算上の運賃 $y$ 円は、問題の規則より以下のように表される。

$$ y = 300a + (x - 300)b $$

計算結果 $y$ の $10$ 円未満の端数を $10$ 円に切り上げた実際の運賃が $Y$ 円であるとき、以下の不等式が成り立つ。

$$ Y - 10 < y \leqq Y $$

距離が $319\text{km}$ のとき $Y = 970$ であるから、

$$ 960 < 300a + 19b \leqq 970 \quad \cdots \text{①} $$

距離が $349\text{km}$ のとき $Y = 1010$ であるから、

$$ 1000 < 300a + 49b \leqq 1010 \quad \cdots \text{②} $$

が成り立つ。不等式①の各辺に $-1$ を掛けると、不等号の向きが反転して以下のようになる。

$$ -970 \leqq -300a - 19b < -960 \quad \cdots \text{①}' $$

不等式②と①'の辺々を足し合わせることで $a$ を消去し、$b$ の範囲を評価する。

$$ 1000 - 970 < (300a + 49b) - (300a + 19b) < 1010 - 960 $$

$$ 30 < 30b < 50 $$

$$ 1 < b < \frac{5}{3} $$

$b$ は $0.1$ の整数倍であるから、$b = \frac{B}{10}$ ($B$ は整数)とおくことができる。

$$ 1 < \frac{B}{10} < \frac{5}{3} $$

$$ 10 < B < 16.6\cdots $$

これを満たす整数 $B$ は $11, 12, 13, 14, 15, 16$ のいずれかである。

また、$a$ も $0.1$ の整数倍であるから、$a = \frac{A}{10}$ ($A$ は整数)とおく。このとき $300a = 30A$ となり、$300a$ は $30$ の倍数となる。 不等式①を変形すると、以下のようになる。

$$ 960 - 19b < 300a \leqq 970 - 19b $$

$$ 960 - 19b < 30A \leqq 970 - 19b $$

先ほど求めた $b$ の各候補について、$30A$ が $30$ の倍数として存在するかを調べる。

(i)

$b = 1.1 \ (B=11)$ のとき $960 - 20.9 < 30A \leqq 970 - 20.9$ より $939.1 < 30A \leqq 949.1$ この範囲に $30$ の倍数は存在しない。

(ii)

$b = 1.2 \ (B=12)$ のとき $960 - 22.8 < 30A \leqq 970 - 22.8$ より $937.2 < 30A \leqq 947.2$ この範囲に $30$ の倍数は存在しない。

(iii)

$b = 1.3 \ (B=13)$ のとき $960 - 24.7 < 30A \leqq 970 - 24.7$ より $935.3 < 30A \leqq 945.3$ この範囲に $30$ の倍数は存在しない。

(iv)

$b = 1.4 \ (B=14)$ のとき $960 - 26.6 < 30A \leqq 970 - 26.6$ より $933.4 < 30A \leqq 943.4$ この範囲に $30$ の倍数は存在しない。

(v)

$b = 1.5 \ (B=15)$ のとき $960 - 28.5 < 30A \leqq 970 - 28.5$ より $931.5 < 30A \leqq 941.5$ この範囲に $30$ の倍数は存在しない。

(vi)

$b = 1.6 \ (B=16)$ のとき $960 - 30.4 < 30A \leqq 970 - 30.4$ より $929.6 < 30A \leqq 939.6$ この範囲には $30$ の倍数である $930$ が存在する。 よって $30A = 930$ となり、$A = 31$ すなわち $a = 3.1$ を得る。

以上より、$a = 3.1, b = 1.6$ である。このとき、 $300 \times 3.1 + 19 \times 1.6 = 930 + 30.4 = 960.4$ (切り上げて $970$) $300 \times 3.1 + 49 \times 1.6 = 930 + 78.4 = 1008.4$ (切り上げて $1010$) となり、元の条件をすべて満たす。

解説

「切り上げ」「切り捨て」「四捨五入」といった端数処理は、不等式を用いて値の範囲を評価するのが数学における定石である。本問では「$10$ 円未満の端数を $10$ 円に切り上げる」という操作を $Y - 10 < y \leqq Y$ と正確に立式できるかが最大のポイントとなる。 立式後は、連立不等式から片方の文字を消去して変域を絞り込む。得られた必要条件の中から「$0.1$ の整数倍」という離散的な条件を利用してしらみつぶしに調べることで、確実に唯一の解に辿り着くことができる。

答え

$a = 3.1, b = 1.6$

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