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九州大学 1997年 理系 第4問 解説

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九州大学 1997年 理系 第4問 解説

方針・初手

命題の真偽を判定する問題である。真であると判断した場合は演繹的な証明を与え、偽であると判断した場合は反例を1つ挙げる。

(1) は不等式の証明の基本に従い、右辺と左辺の差をとって $0$ 以上になることを示す。 (2) は「すべての実数 $x$ について $ax^2+bx+c>0$」という条件から判別式を連想するが、$a=0$ の場合(すなわち2次式でない場合)が排除されていないことに注意する。 (3) は有理数解を $\frac{p}{q}$ ($p$ と $q$ は互いに素な整数)とおいて方程式に代入し、解が整数に限られることを示すか、解の公式を用いて根号の中身が平方数になる条件を考える。

解法1

(1)

真である。

以下、証明を示す。 右辺と左辺の差をとると、

$$\begin{aligned} (xy+1)^2 - (x+y)^2 &= (x^2y^2 + 2xy + 1) - (x^2 + 2xy + y^2) \\ &= x^2y^2 - x^2 - y^2 + 1 \\ &= x^2(y^2 - 1) - (y^2 - 1) \\ &= (x^2 - 1)(y^2 - 1) \end{aligned}$$

仮定より $|x| \leqq 1$ かつ $|y| \leqq 1$ であるから、両辺を2乗して

$$x^2 \leqq 1 \text{ かつ } y^2 \leqq 1$$

すなわち、

$$x^2 - 1 \leqq 0 \text{ かつ } y^2 - 1 \leqq 0$$

である。したがって、負の数(または $0$)同士の積であるから、

$$(x^2 - 1)(y^2 - 1) \geqq 0$$

が成り立つ。ゆえに、$(x+y)^2 \leqq (xy+1)^2$ は真である。(証明終)

(2)

偽である。

反例:$a = 0, b = 0, c = 1$

$a = 0, b = 0, c = 1$ のとき、与えられた式は $ax^2+bx+c = 1$ となる。 これはすべての実数 $x$ について $1 > 0$ となり、命題の仮定を満たしている。

しかし、このとき

$$b^2 - 4ac = 0^2 - 4 \cdot 0 \cdot 1 = 0$$

となり、$b^2 - 4ac < 0$ を満たさない。よって、命題は偽である。

(3)

真である。

以下、証明を示す。 2次方程式 $x^2+3x+a=0$ が有理数の解をもつと仮定し、その解を $x = \frac{p}{q}$ ($p, q$ は互いに素な整数、$q \geqq 1$)とおく。 これを方程式に代入すると、

$$\left(\frac{p}{q}\right)^2 + 3\left(\frac{p}{q}\right) + a = 0$$

両辺に $q^2$ を掛けると、

$$p^2 + 3pq + aq^2 = 0$$

移項して整理すると、

$$p^2 = -q(3p + aq)$$

$a, p, q$ は整数であるから、$3p+aq$ は整数であり、$p^2$ は $q$ の倍数である。 ここで $p$ と $q$ は互いに素であるから、$q = 1$ でなければならない。 したがって、有理数解 $x$ は整数である。この整数解を $n$ とおくと、

$$n^2 + 3n + a = 0$$

これを $a$ について解くと、

$$a = -n^2 - 3n = -n(n+3)$$

$n$ と $n+3$ の差は $3$ (奇数)であるから、一方は偶数であり、もう一方は奇数である。 よって、その積 $n(n+3)$ は必ず偶数となる。したがって、$a$ は偶数である。(証明終)

解法2

(3)の別解

真である。

2次方程式 $x^2+3x+a=0$ の解は、解の公式より

$$x = \frac{-3 \pm \sqrt{9-4a}}{2}$$

である。これが有理数となるためには、根号の中身である $9-4a$ がある $0$ 以上の整数 $k$ の平方でなければならない。

$$9-4a = k^2$$

これより、

$$4a = 9-k^2$$

$a$ は整数であるから、左辺の $4a$ は偶数である。 したがって、右辺の $9-k^2$ も偶数であり、$k^2$ は奇数となる。ゆえに $k$ 自身も奇数である。 $k$ は奇数であるから、$k = 2m+1$ ($m$ は整数)とおける。 これを代入すると、

$$4a = 9 - (2m+1)^2 = 9 - (4m^2 + 4m + 1) = -4m^2 - 4m + 8$$

両辺を $4$ で割ると、

$$a = -m^2 - m + 2 = -m(m+1) + 2$$

$m$ と $m+1$ は連続する整数であるから、その積 $m(m+1)$ は偶数である。 また、$2$ も偶数であるから、偶数同士の和や差から得られる $a$ は偶数となる。 したがって、命題は真である。(証明終)

解説

各命題のポイントは以下の通りである。

(1) 不等式の証明の基本通り、差の計算を行えばよい。2次式の展開と因数分解を用いて「2乗の差」の形に持ち込むことで、各変数の条件を適用しやすくなる。 (2) 問題文に「2次方程式」「2次関数」などの記述がなく、単に「$a, b, c$ を実数とする」とある点に注意する。最高次項の係数 $a$ が $0$ になる可能性(すなわち式が1次以下になる場合)を忘れないことが肝要であり、数学の論理問題における典型的な罠である。 (3) 最高次係数が $1$ である整数係数多項式において、有理数解が存在すればそれは整数解となるという事実(有理根定理の系)を利用するか、解の公式を用いて判別式が平方数となる条件を考えることで解決できる。整数の偶奇性に帰着させる論証力が問われている。

答え

(1)(2) 偽 (反例:$a=0, b=0, c=1$ など) (3)

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