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東京大学 2003年 理系 第6問 解説

数学1/図形計量数学1/三角比テーマ/不等式の証明テーマ/図形総合
東京大学 2003年 理系 第6問 解説

方針・初手

円周率 $\pi$ の定義や性質に立ち返り、円に内接する正多角形を利用して $\pi$ を下から評価する。 具体的には、半径 $1$ の円を考え、その円周の長さ($2\pi$)と内接する正多角形の周の長さを比較する、あるいは円の面積($\pi$)と内接する正多角形の面積を比較する方針をとる。 計算のしやすさと必要な精度を考慮して、適切な角数(正十二角形や正二十四角形など)を選択し、現れる平方根を不等式で正しく評価することが鍵となる。

解法1

半径 $1$ の円に内接する正十二角形を考える。

円周の長さは $2\pi$ である。 一方、正十二角形の $1$ 辺の長さを $L$ とすると、中心角は $\frac{360^\circ}{12} = 30^\circ$ であるから、余弦定理より以下が成り立つ。

$$ L^2 = 1^2 + 1^2 - 2 \cdot 1 \cdot 1 \cdot \cos 30^\circ = 2 - \sqrt{3} $$

正十二角形の周の長さは $12L$ であり、これは円周の長さよりも短い。したがって、

$$ 12L < 2\pi $$

$$ 6L < \pi $$

両辺ともに正であるから、平方して以下の不等式を得る。

$$ \pi^2 > 36L^2 = 36(2 - \sqrt{3}) $$

ここで、$\sqrt{3}$ の値を上から評価する。 $1.74^2 = 3.0276 > 3$ であるから、$\sqrt{3} < 1.74$ が成り立つ。 これを用いると、

$$ 36(2 - \sqrt{3}) > 36(2 - 1.74) = 36 \times 0.26 = 9.36 $$

となる。 さらに、$3.05$ を平方すると、

$$ 3.05^2 = 9.3025 $$

である。ゆえに、

$$ \pi^2 > 9.36 > 9.3025 = 3.05^2 $$

が成り立つ。$\pi > 0$ かつ $3.05 > 0$ であるから、$\pi > 3.05$ である。

解法2

半径 $1$ の円に内接する正二十四角形を考える。

この正二十四角形は、中心と各頂点を結ぶことで、中心角が $\frac{360^\circ}{24} = 15^\circ$ で等辺の長さが $1$ の二等辺三角形 $24$ 個に分割できる。 $1$ つの三角形の面積を $S_1$ とすると、

$$ S_1 = \frac{1}{2} \cdot 1 \cdot 1 \cdot \sin 15^\circ = \frac{1}{2} \sin 15^\circ $$

加法定理を用いて $\sin 15^\circ$ を求める。

$$ \sin 15^\circ = \sin(45^\circ - 30^\circ) = \sin 45^\circ \cos 30^\circ - \cos 45^\circ \sin 30^\circ $$

$$ \sin 15^\circ = \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} - \frac{\sqrt{2}}{2} \cdot \frac{1}{2} = \frac{\sqrt{6} - \sqrt{2}}{4} $$

したがって、正二十四角形の面積 $S$ は、

$$ S = 24 S_1 = 12 \sin 15^\circ = 3(\sqrt{6} - \sqrt{2}) $$

円に内接する正多角形の面積は、元の円の面積よりも小さい。半径 $1$ の円の面積は $\pi$ であるから、

$$ \pi > S = 3(\sqrt{6} - \sqrt{2}) $$

ここで、$\sqrt{6}$ と $\sqrt{2}$ を評価する。 $2.44^2 = 5.9536 < 6$ より、$\sqrt{6} > 2.44$ である。 $1.42^2 = 2.0164 > 2$ より、$\sqrt{2} < 1.42$ である。 これらを用いると、

$$ \sqrt{6} - \sqrt{2} > 2.44 - 1.42 = 1.02 $$

となる。したがって、

$$ \pi > 3(\sqrt{6} - \sqrt{2}) > 3 \times 1.02 = 3.06 $$

が成り立つ。$3.06 > 3.05$ であるから、$\pi > 3.05$ である。

解説

円周率の下界を求める有名な問題である。「円周率は $3.14$」という知識を前提とせず、円に内接する図形を用いて幾何学的に $\pi$ を評価する基本姿勢が問われている。 角数の少ない多角形(正六角形など)では $3.05$ を超える精度の近似が得られないため、正八角形、正十二角形、正二十四角形などと角数を増やして検証していく必要がある。 また、手計算のみで論証を完結させるため、$\sqrt{2}$ や $\sqrt{3}$ などの無理数に対して、自ら適切な有理数の2乗を計算し、不等式を厳密に成立させることがポイントである。

答え

$$ \pi > 3.05 $$

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