北海道大学 2003年 理系 第5問 解説

方針・初手
正 $n$ 角形を転がしたときに点 $A$ が描く軌跡は、各頂点を中心とした円弧の連続になります。したがって、各回転において「回転の中心となる頂点と点 $A$ の距離(回転の半径)」と「回転角」を正しく立式することが第一歩です。 これらを $n$ と回転回数 $k$ を用いて表し、すべての円弧の長さを足し合わせて軌跡の全長 $L(n)$ を立式します。
解法1
正 $n$ 角形の頂点を、反時計回りに $A=P_0, B=P_1, P_2, \dots, P_{n-1}$ とする。 初期状態では辺 $P_0 P_1$ が $x$ 軸上にあり、$P_0$ の右側に $P_1$ があるとする。
正 $n$ 角形を転がしていくとき、点 $P_0$ が再び $x$ 軸に重なるまでに $n-1$ 回の回転が行われる。 $k$ 回目($1 \leqq k \leqq n-1$)の回転では、頂点 $P_k$ が回転の中心となり、辺 $P_k P_{k+1}$(ただし $P_n = P_0$ とする)が $x$ 軸に接するまで転がる。 このときの回転角は正 $n$ 角形の1つの外角に等しいため、常に $\frac{2\pi}{n}$ である。
また、回転の半径は線分 $P_0 P_k$ の長さである。 正 $n$ 角形は半径 $1$ の円に内接しているため、その外接円の中心を $O$ とすると、三角形 $OP_0 P_k$ は $OP_0 = OP_k = 1$ の二等辺三角形となる。 中心角 $\angle P_0 O P_k$ は $\frac{2k\pi}{n}$ であるから、線分 $P_0 P_k$ の長さは以下のように求まる。
$$ P_0 P_k = 2 \times 1 \times \sin \left( \frac{1}{2} \cdot \frac{2k\pi}{n} \right) = 2 \sin \frac{k\pi}{n} $$
したがって、$k$ 回目の回転で点 $P_0$(すなわち点 $A$)が描く円弧の長さ $l_k$ は、
$$ l_k = (\text{半径}) \times (\text{回転角}) = 2 \sin \frac{k\pi}{n} \times \frac{2\pi}{n} = \frac{4\pi}{n} \sin \frac{k\pi}{n} $$
となる。軌跡の全長 $L(n)$ は、これら $n-1$ 個の円弧の長さの和であるため、
$$ L(n) = \sum_{k=1}^{n-1} l_k = \sum_{k=1}^{n-1} \frac{4\pi}{n} \sin \frac{k\pi}{n} $$
と表せる。
(1)
上で求めた式に $n=6$ を代入して計算する。
$$ L(6) = \sum_{k=1}^{5} \frac{4\pi}{6} \sin \frac{k\pi}{6} = \frac{2\pi}{3} \sum_{k=1}^{5} \sin \frac{k\pi}{6} $$
具体的な三角比の値を代入すると、
$$ \begin{aligned} \sum_{k=1}^{5} \sin \frac{k\pi}{6} &= \sin \frac{\pi}{6} + \sin \frac{2\pi}{6} + \sin \frac{3\pi}{6} + \sin \frac{4\pi}{6} + \sin \frac{5\pi}{6} \\ &= \frac{1}{2} + \frac{\sqrt{3}}{2} + 1 + \frac{\sqrt{3}}{2} + \frac{1}{2} \\ &= 2 + \sqrt{3} \end{aligned} $$
となる。したがって、
$$ L(6) = \frac{2\pi}{3} (2 + \sqrt{3}) $$
である。
(2)
$L(n)$ の式を、区分求積法が適用できるように変形する。
$$ L(n) = 4 \sum_{k=1}^{n-1} \sin \left( \frac{k\pi}{n} \right) \frac{\pi}{n} $$
ここで $n \to \infty$ とすると、右辺は定積分を用いて表すことができる。
$$ \begin{aligned} \lim_{n \to \infty} L(n) &= 4 \lim_{n \to \infty} \sum_{k=1}^{n-1} \sin \left( \frac{k\pi}{n} \right) \frac{\pi}{n} \\ &= 4 \int_{0}^{\pi} \sin x \, dx \end{aligned} $$
この定積分を計算すると、
$$ \int_{0}^{\pi} \sin x \, dx = \Big[ -\cos x \Big]_{0}^{\pi} = -(-1) - (-1) = 2 $$
となる。よって求める極限値は、
$$ \lim_{n \to \infty} L(n) = 4 \times 2 = 8 $$
である。
解説
多角形の転がり問題における典型的な処理と、区分求積法の基本を問う良問です。 軌跡が複数の円弧のつなぎ合わせになることを正しくイメージし、一般の $k$ 回目の操作において「どこを中心に」「どれだけの半径で」「どれだけの角度」回転するのかを数式化する力が問われます。 また、(2)の極限には幾何学的な意味があります。正 $n$ 角形の頂点の数を無限に増やしていくと、図形は内接する半径 $1$ の円そのものに近づきます。したがって、この極限値は「半径 $1$ の円が直線上を滑らずに転がるとき、円周上の1点が描く曲線(サイクロイド)の1周期分の長さ」と一致します。サイクロイドの弧長は $8r$($r$ は半径)として知られており、本問の結果と符号していることが確認できます。
答え
(1) $\frac{2\pi(2 + \sqrt{3})}{3}$
(2) $8$
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