数学2 最大最小・解の個数 問題 71 解説

方針・初手
内接円の中心(内心)と各頂点を結ぶ線分は、対応する内角を二等分するという性質を利用する。また、内心から各辺に下ろした垂線の長さは内接円の半径に等しいことを用いて、直角三角形における三角比から線分の長さを表す。(2)では、三角形の面積 $S$ を求めるために、内接円の半径 $r$ と周の長さを用いる公式 $S = \frac{1}{2}r(a+b+c)$ に着目すると計算が簡明になる。(3)は、(2)で得られた1変数の関数の最小値を求める問題に帰着されるため、微分法を用いて増減を調べるか、相加平均と相乗平均の大小関係を工夫して用いる。
解法1
(1) 内接円の中心を $\text{I}$ とすると、$\text{I}$ は $\triangle \text{ABC}$ の各内角の二等分線の交点である。 したがって、直線 $\text{AI}$ は $\angle \text{A}$ を二等分し、直線 $\text{CI}$ は $\angle \text{C}$ を二等分する。 内接円と辺 $\text{AC}$ の接点が $\text{Q}$ であるから、$\text{IQ} \perp \text{AC}$ であり、$\text{IQ} = 1$ である。
直角三角形 $\text{AIQ}$ において、$\angle \text{IAQ} = \frac{\alpha}{2}$ であるから、
$$\tan \frac{\alpha}{2} = \frac{\text{IQ}}{\text{AQ}} = \frac{1}{\text{AQ}}$$
よって、
$$\text{AQ} = \frac{1}{\tan \frac{\alpha}{2}}$$
また、$\triangle \text{ABC}$ は $\text{AB} = \text{AC}$ の二等辺三角形であるから、$\angle \text{C} = \angle \text{B} = \beta$ である。 直角三角形 $\text{CIQ}$ において、$\angle \text{ICQ} = \frac{\beta}{2}$ であるから、
$$\tan \frac{\beta}{2} = \frac{\text{IQ}}{\text{QC}} = \frac{1}{\text{QC}}$$
よって、
$$\text{QC} = \frac{1}{\tan \frac{\beta}{2}}$$
(2) $\triangle \text{ABC}$ の内角の和は $\pi$ であるから、$\alpha + 2\beta = \pi$ が成り立つ。 これより、$\frac{\alpha}{2} = \frac{\pi}{2} - \beta$ となる。 (1) の結果より、
$$\text{AQ} = \frac{1}{\tan \left( \frac{\pi}{2} - \beta \right)} = \tan \beta$$
ここで、$\tan \beta$ を $t = \tan \frac{\beta}{2}$ を用いて表す。正接の2倍角の公式より、
$$\tan \beta = \frac{2\tan \frac{\beta}{2}}{1 - \tan^2 \frac{\beta}{2}} = \frac{2t}{1 - t^2}$$
したがって、$\text{AQ} = \frac{2t}{1 - t^2}$ となる。 また、(1) より $\text{QC} = \frac{1}{t}$ である。
$\triangle \text{ABC}$ の面積 $S$ は、各辺と内接円の接点までの距離を用いて表すことができる。 円外の点から引いた接線の長さは等しいので、$\text{AR} = \text{AQ}$、$\text{BR} = \text{BP}$、$\text{CP} = \text{CQ}$ である。 さらに、$\triangle \text{ABC}$ は $\text{AB} = \text{AC}$ の二等辺三角形であるから、対称性より $\text{BR} = \text{CQ}$ となる。 したがって、三角形の周の長さの半分を $s$ とすると、
$$s = \frac{1}{2}(\text{AB} + \text{BC} + \text{CA}) = \text{AQ} + \text{CQ} + \text{CQ} = \text{AQ} + 2\text{QC}$$
面積 $S$ は $S = (\text{内接円の半径}) \times s$ であるから、
$$S = 1 \cdot (\text{AQ} + 2\text{QC}) = \frac{2t}{1 - t^2} + \frac{2}{t}$$
これを通分して整理する。
$$S = \frac{2t^2 + 2(1 - t^2)}{t(1 - t^2)} = \frac{2t^2 + 2 - 2t^2}{t(1 - t^2)} = \frac{2}{t(1 - t^2)}$$
(3) $\triangle \text{ABC}$ において $\alpha > 0$ より $2\beta < \pi$ であるから、$0 < \beta < \frac{\pi}{2}$ である。 したがって、$0 < \frac{\beta}{2} < \frac{\pi}{4}$ となり、$t = \tan \frac{\beta}{2}$ のとり得る値の範囲は $0 < t < 1$ である。
$f(t) = t(1 - t^2) = t - t^3$ とおく。 $S = \frac{2}{f(t)}$ であり、$S$ が最小となるのは $f(t)$ が最大となるときである。 $f(t)$ を微分すると、
$$f'(t) = 1 - 3t^2 = (1 - \sqrt{3}t)(1 + \sqrt{3}t)$$
$0 < t < 1$ における $f(t)$ の符号の変化を調べると、$t = \frac{1}{\sqrt{3}}$ で $f'(t) = 0$ となり、その前後で正から負へ変化する。 したがって、$f(t)$ は $t = \frac{1}{\sqrt{3}}$ のとき極大かつ最大となる。 その最大値は、
$$f\left(\frac{1}{\sqrt{3}}\right) = \frac{1}{\sqrt{3}} - \left(\frac{1}{\sqrt{3}}\right)^3 = \frac{1}{\sqrt{3}} - \frac{1}{3\sqrt{3}} = \frac{2}{3\sqrt{3}}$$
ゆえに、面積 $S$ は、
$$S = \frac{2}{f(t)} \ge \frac{2}{\frac{2}{3\sqrt{3}}} = 3\sqrt{3}$$
となり、不等式 $S \ge 3\sqrt{3}$ が成り立つ。
等号が成立するのは、$t = \frac{1}{\sqrt{3}}$ のときである。 このとき、$\tan \frac{\beta}{2} = \frac{1}{\sqrt{3}}$ であり、$0 < \frac{\beta}{2} < \frac{\pi}{4}$ より $\frac{\beta}{2} = \frac{\pi}{6}$ となる。 ゆえに、$\beta = \frac{\pi}{3} = 60^\circ$ である。 $\triangle \text{ABC}$ は $\text{AB} = \text{AC}$ の二等辺三角形であり、底角が $60^\circ$ であるから、頂角 $\alpha$ も $60^\circ$ となり、$\triangle \text{ABC}$ は正三角形である。 よって、等号が成立するのは三角形 $\text{ABC}$ が正三角形のときに限ることが示された。
解法2
(3) の別解(相加平均と相乗平均の大小関係を用いる方法)
(2) より、$S = \frac{2}{t(1 - t^2)}$ ($0 < t < 1$) である。 分母の最大化を考える。$t(1 - t^2) > 0$ であるため、$t^2(1 - t^2)^2$ の最大値を考えることと同値である。 ここで、正の数 $2t^2, 1 - t^2, 1 - t^2$ に対して相加平均と相乗平均の大小関係を用いると、
$$\frac{2t^2 + (1 - t^2) + (1 - t^2)}{3} \ge \sqrt[3]{2t^2 \cdot (1 - t^2) \cdot (1 - t^2)}$$
が成り立つ。左辺を整理すると、
$$\frac{2}{3} \ge \sqrt[3]{2t^2(1 - t^2)^2}$$
両辺を3乗して整理すると、
$$\frac{8}{27} \ge 2t^2(1 - t^2)^2$$
$$t^2(1 - t^2)^2 \le \frac{4}{27}$$
$t(1 - t^2) > 0$ より、両辺の正の平方根をとると、
$$t(1 - t^2) \le \frac{2}{3\sqrt{3}}$$
したがって、
$$S = \frac{2}{t(1 - t^2)} \ge \frac{2}{\frac{2}{3\sqrt{3}}} = 3\sqrt{3}$$
等号が成立するのは、相加平均と相乗平均の大小関係の等号成立条件より、
$$2t^2 = 1 - t^2$$
のときである。これを解くと $3t^2 = 1$ となり、$t > 0$ より $t = \frac{1}{\sqrt{3}}$ となる。 このとき $\tan \frac{\beta}{2} = \frac{1}{\sqrt{3}}$ であり、解法1と同様に $\beta = 60^\circ$ となるため、$\triangle \text{ABC}$ は正三角形となる。
解説
内接円の半径が与えられた三角形の面積や線分を三角比で表現する典型的な問題である。(2)で面積を求める際、$S = \frac{1}{2}r(a+b+c)$ を用いると、接線の長さの性質と相まって非常に計算が楽になる。(3)は微分の計算も容易であるが、解法2のように等分した式を作って相加平均と相乗平均の大小関係を利用する手法は、計算ミスを減らし手早く解くための有効な発想である。
答え
(1) $\text{AQ} = \frac{1}{\tan \frac{\alpha}{2}}$, $\text{QC} = \frac{1}{\tan \frac{\beta}{2}}$
(2) $S = \frac{2}{t(1 - t^2)}$
(3) 証明略。等号成立条件は $\triangle \text{ABC}$ が正三角形のとき。
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