数学2 三角関数 問題 44 解説

方針・初手
点 $P$ を $x$ 軸上の正の部分にとり、$\angle APB$ の大きさを扱う問題である。図形における角を数式で処理するための主な方針として、以下の2つが考えられる。
- 座標軸となす角を設定し、正接($\tan$)の加法定理を用いる。
- ベクトルを設定し、内積から余弦($\cos$)を求める。
本問の場合、点 $A, B$ がともに $y$ 軸上にあり、点 $P$ が $x$ 軸上にあるという座標の設定から、直角三角形を利用して正接で角を表現する方針が計算の負担が少なく適している。以下では、正接の加法定理を利用する解法を主軸とし、ベクトルを利用する解法を別解として示す。
解法1
原点を $O(0, 0)$ とする。直角三角形 $OAP$ と $OBP$ について、$\angle APO = \alpha$、$\angle BPO = \beta$ とおく。
条件より点 $P$ の $x$ 座標は $x > 0$ であるから、$0 < \alpha < \beta < \frac{\pi}{2}$ である。 図より、
$$\tan \alpha = \frac{1}{x}, \quad \tan \beta = \frac{11}{x}$$
が成り立つ。
求める角を $\theta = \angle APB$ とおくと、$\theta = \beta - \alpha$ であり、$0 < \alpha < \beta < \frac{\pi}{2}$ より $0^\circ < \theta < 90^\circ$ である。 正接の加法定理より、
$$\tan \theta = \tan(\beta - \alpha) = \frac{\tan \beta - \tan \alpha}{1 + \tan \beta \tan \alpha}$$
それぞれの値を代入すると、
$$\tan \theta = \frac{\frac{11}{x} - \frac{1}{x}}{1 + \frac{11}{x} \cdot \frac{1}{x}} = \frac{\frac{10}{x}}{\frac{x^2+11}{x^2}} = \frac{10x}{x^2+11}$$
となる。
問題の条件より $\theta \ge 30^\circ$ である。$\theta$ は鋭角であるから、正接関数の単調増加性より $\tan \theta \ge \tan 30^\circ$ が成り立つ。 したがって、
$$\frac{10x}{x^2+11} \ge \frac{1}{\sqrt{3}}$$
$x > 0$ より $x^2+11 > 0$ であるから、両辺に $\sqrt{3}(x^2+11)$ を掛けて分母を払うと、
$$10\sqrt{3}x \ge x^2+11$$
$$x^2 - 10\sqrt{3}x + 11 \le 0$$
方程式 $x^2 - 10\sqrt{3}x + 11 = 0$ の解は、解の公式より
$$x = 5\sqrt{3} \pm \sqrt{(5\sqrt{3})^2 - 11} = 5\sqrt{3} \pm \sqrt{75 - 11} = 5\sqrt{3} \pm \sqrt{64} = 5\sqrt{3} \pm 8$$
よって、不等式の解は
$$5\sqrt{3} - 8 \le x \le 5\sqrt{3} + 8$$
となる。
ここで、$5\sqrt{3} = \sqrt{75} > \sqrt{64} = 8$ であるから、$5\sqrt{3} - 8 > 0$ となり、この範囲の $x$ は前提条件である $x > 0$ を満たす。
解法2
$\vec{PA} = (0 - x, 1 - 0) = (-x, 1)$、$\vec{PB} = (0 - x, 11 - 0) = (-x, 11)$ である。
$\theta = \angle APB$ とおく。条件より $30^\circ \le \theta < 180^\circ$ であるから、余弦関数の単調減少性により、
$$\cos \theta \le \cos 30^\circ = \frac{\sqrt{3}}{2}$$
が成り立つ。
ベクトルの内積の定義より、
$$\cos \theta = \frac{\vec{PA} \cdot \vec{PB}}{|\vec{PA}||\vec{PB}|} = \frac{(-x)(-x) + 1 \cdot 11}{\sqrt{(-x)^2 + 1^2} \sqrt{(-x)^2 + 11^2}} = \frac{x^2 + 11}{\sqrt{x^2+1}\sqrt{x^2+121}}$$
これを不等式に代入して、
$$\frac{x^2 + 11}{\sqrt{x^2+1}\sqrt{x^2+121}} \le \frac{\sqrt{3}}{2}$$
両辺は正であるから、両辺を2乗して整理しても同値である。
$$\frac{(x^2+11)^2}{(x^2+1)(x^2+121)} \le \frac{3}{4}$$
$$4(x^2+11)^2 \le 3(x^2+1)(x^2+121)$$
ここで、$X = x^2$ とおくと、$x > 0$ より $X > 0$ である。
$$4(X+11)^2 \le 3(X+1)(X+121)$$
$$4(X^2 + 22X + 121) \le 3(X^2 + 122X + 121)$$
$$4X^2 + 88X + 484 \le 3X^2 + 366X + 363$$
$$X^2 - 278X + 121 \le 0$$
方程式 $X^2 - 278X + 121 = 0$ の解は、
$$X = 139 \pm \sqrt{139^2 - 121} = 139 \pm \sqrt{19321 - 121} = 139 \pm \sqrt{19200} = 139 \pm 80\sqrt{3}$$
よって、不等式の解は
$$139 - 80\sqrt{3} \le X \le 139 + 80\sqrt{3}$$
$139^2 = 19321$、$(80\sqrt{3})^2 = 6400 \cdot 3 = 19200$ より、$139 > 80\sqrt{3}$ であるから、$139 - 80\sqrt{3} > 0$ となり $X > 0$ を満たす。 $X = x^2$ および $x > 0$ より、
$$\sqrt{139 - 80\sqrt{3}} \le x \le \sqrt{139 + 80\sqrt{3}}$$
ここで、根号内の二重根号を外す。
$$\sqrt{139 \pm 80\sqrt{3}} = \sqrt{139 \pm 2\sqrt{4800}}$$
足して $139$、掛けて $4800$ となる2つの正の数は $75$ と $64$ であるから、
$$\sqrt{139 \pm 2\sqrt{4800}} = \sqrt{75} \pm \sqrt{64} = 5\sqrt{3} \pm 8$$
以上より、$x$ の範囲は
$$5\sqrt{3} - 8 \le x \le 5\sqrt{3} + 8$$
解説
図形における角の大きさを扱う際、大きく分けてベクトルの内積($\cos$)を用いる手法と、座標軸とのなす角から正接の加法定理($\tan$)を用いる手法が存在する。
本問では、点 $P$ が $x$ 軸上にあり、点 $A, B$ が $y$ 軸上にあるという設定から、直角三角形が作りやすい状態となっている。そのため、解法1のように $\tan$ を利用する方針が自然であり、計算量も抑えられる。
一方で、解法2のようにベクトルを用いると、不等式を解く過程で高次方程式(4次式)の展開や、大きな数の計算、二重根号の処理が要求され、計算ミスのリスクが飛躍的に高まる。解法の見通しを立てた段階で、より処理が軽い解法を選択できるかが鍵となる。
答え
$$5\sqrt{3} - 8 \le x \le 5\sqrt{3} + 8$$
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