数学2 コーシー・シュワルツの不等式 問題 5 解説

方針・初手
与えられた不等式は、コーシー・シュワルツの不等式と呼ばれる有名な形である。不等式の証明では、左辺から右辺を引いた式が $0$ 以上になることを示すのが基本方針となる。本問では分母を払って $(a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2) \geqq k^2$ を示すことと同値であるため、この差を計算して $(実数)^2 \geqq 0$ の形を作るか、あるいは任意の実数 $t$ に対する2次不等式を構成して判別式を利用する手法が有効である。
解法1
(1)
示すべき不等式の分母 $a^2+b^2+c^2$ は正であるから、両辺に $a^2+b^2+c^2$ を掛けても不等号の向きは変わらない。また、$k = ax+by+cz$ であるから、
$$ (a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2) \geqq (ax+by+cz)^2 $$
が成り立つことを示せばよい。左辺から右辺を引いた式を展開して整理する。
$$ \begin{aligned} & (a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2) - (ax+by+cz)^2 \\ &= (a^2x^2 + a^2y^2 + a^2z^2 + b^2x^2 + b^2y^2 + b^2z^2 + c^2x^2 + c^2y^2 + c^2z^2) \\ &\quad - (a^2x^2 + b^2y^2 + c^2z^2 + 2abxy + 2bcyz + 2cazx) \\ &= a^2y^2 - 2abxy + b^2x^2 + b^2z^2 - 2bcyz + c^2y^2 + c^2x^2 - 2cazx + a^2z^2 \\ &= (ay-bx)^2 + (bz-cy)^2 + (cx-az)^2 \end{aligned} $$
$a, b, c, x, y, z$ はすべて実数(正の定数)であるから、実数の平方は $0$ 以上である。したがって、
$$ (ay-bx)^2 + (bz-cy)^2 + (cx-az)^2 \geqq 0 $$
が成り立つ。よって、
$$ (a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2) - (ax+by+cz)^2 \geqq 0 $$
$$ (a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2) \geqq (ax+by+cz)^2 $$
ここで、$ax+by+cz=k$ であり、$a^2+b^2+c^2 > 0$ であるから、両辺を $a^2+b^2+c^2$ で割ることで、
$$ x^2+y^2+z^2 \geqq \frac{k^2}{a^2+b^2+c^2} $$
が成り立つことが証明された。
(2)
(1) の不等式において等号が成り立つのは、
$$ (ay-bx)^2 + (bz-cy)^2 + (cx-az)^2 = 0 $$
のときである。これが成り立つ条件は、
$$ ay-bx=0 \quad \text{かつ} \quad bz-cy=0 \quad \text{かつ} \quad cx-az=0 $$
すなわち、
$$ ay=bx \quad \text{かつ} \quad bz=cy \quad \text{かつ} \quad cx=az $$
である。$a, b, c$ は正の定数であるから、これを変形すると、
$$ \frac{x}{a} = \frac{y}{b} = \frac{z}{c} $$
となる。この比の値を $t$ とおくと、
$$ x = at, \quad y = bt, \quad z = ct $$
と表せる。これを与えられた関係式 $ax+by+cz=k$ に代入すると、
$$ a(at) + b(bt) + c(ct) = k $$
$$ (a^2+b^2+c^2)t = k $$
$a, b, c$ は正の定数より $a^2+b^2+c^2 \neq 0$ であるから、
$$ t = \frac{k}{a^2+b^2+c^2} $$
したがって、求める $x, y, z$ は、
$$ x = \frac{ak}{a^2+b^2+c^2}, \quad y = \frac{bk}{a^2+b^2+c^2}, \quad z = \frac{ck}{a^2+b^2+c^2} $$
となる。
解法2
(1)
任意の実数 $t$ に対して、次の式を考える。
$$ (at-x)^2 + (bt-y)^2 + (ct-z)^2 \geqq 0 $$
実数の平方は $0$ 以上であるため、この不等式は常に成り立つ。左辺を展開して整理すると、
$$ (a^2+b^2+c^2)t^2 - 2(ax+by+cz)t + (x^2+y^2+z^2) \geqq 0 $$
条件より $ax+by+cz=k$ であるから、
$$ (a^2+b^2+c^2)t^2 - 2kt + (x^2+y^2+z^2) \geqq 0 $$
$a, b, c$ は正の定数であるから $a^2+b^2+c^2 > 0$ である。したがって、左辺の $t$ についての2次式が常に $0$ 以上となるための条件は、この2次方程式の判別式を $D$ とすると $D \leqq 0$ となることである。
$$ \frac{D}{4} = (-k)^2 - (a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2) \leqq 0 $$
これより、
$$ (a^2+b^2+c^2)(x^2+y^2+z^2) \geqq k^2 $$
$a^2+b^2+c^2 > 0$ で両辺を割ることで、
$$ x^2+y^2+z^2 \geqq \frac{k^2}{a^2+b^2+c^2} $$
が証明された。
(2)
等号が成り立つのは、判別式 $D=0$ のときである。このとき、初めに設定した不等式で等号が成り立つ実数 $t$ が存在する。すなわち、
$$ (at-x)^2 + (bt-y)^2 + (ct-z)^2 = 0 $$
となる実数 $t$ が存在する。実数の平方の和が $0$ になることから、
$$ at-x=0 \quad \text{かつ} \quad bt-y=0 \quad \text{かつ} \quad ct-z=0 $$
すなわち、
$$ x=at, \quad y=bt, \quad z=ct $$
となる。これを $ax+by+cz=k$ に代入すると、
$$ a(at) + b(bt) + c(ct) = k $$
$$ (a^2+b^2+c^2)t = k $$
$$ t = \frac{k}{a^2+b^2+c^2} $$
これを代入し直すことで、求める $x, y, z$ は、
$$ x = \frac{ak}{a^2+b^2+c^2}, \quad y = \frac{bk}{a^2+b^2+c^2}, \quad z = \frac{ck}{a^2+b^2+c^2} $$
となる。
解説
本問は「コーシー・シュワルツの不等式」を直接証明し、その等号成立条件を導出する典型問題である。不等式の証明手法として、解法1のように差をとって平方の和を作る「ラグランジュの恒等式」を用いる方法は、変数の数が増えても応用が利く基本技法である。また、解法2のように任意の実数 $t$ の2次式の判別式に帰着させる発想も、内積の不等式を証明する際によく用いられる鮮やかな手法である。等号成立条件は、どちらの解法を用いても比が等しいという事実に辿り着く。
答え
(1) 題意の通り証明された。
(2)
$x = \frac{ak}{a^2+b^2+c^2}$
$y = \frac{bk}{a^2+b^2+c^2}$
$z = \frac{ck}{a^2+b^2+c^2}$
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