数学2 不等式の証明 問題 4 解説

方針・初手
絶対値を含む不等式の証明では、両辺を $2$ 乗して差をとるのが定石の一つである。しかし、本問では左辺の $(a-b)(c-d)$ が負になる可能性があるため、無条件に両辺を $2$ 乗することはできない。
そこで、左辺の符号によって場合分けを行う。左辺が $0$ 以下の場合は、右辺が絶対値であり常に $0$ 以上となるため、自明に不等式が成立する。したがって、左辺が正となる場合、すなわち $a-b$ と $c-d$ が同符号となる場合について、絶対値の中身の符号を判定して不等式を証明すればよい。
解法1
左辺 $(a-b)(c-d)$ の符号によって場合分けを行う。
(i) $(a-b)(c-d) \leqq 0$ のとき
左辺は $0$ 以下であり、右辺は絶対値であるから $|ac-bd| \geqq 0$ である。
したがって、$(a-b)(c-d) \leqq |ac-bd|$ は常に成立する。
(ii) $(a-b)(c-d) > 0$ のとき
$a-b$ と $c-d$ は同符号である。
(ア) $a-b > 0$ かつ $c-d > 0$ のとき
$a > b > 0$ かつ $c > d > 0$ であるから、$ac > bd$ が成り立つ。
よって、右辺の絶対値はそのまま外れて $|ac-bd| = ac-bd$ となる。
右辺と左辺の差をとると、
$$ (ac-bd) - (a-b)(c-d) = ac - bd - (ac - ad - bc + bd) = ad + bc - 2bd $$
ここで、$a > b$ と $d > 0$ より $ad > bd$ であり、$c > d$ と $b > 0$ より $bc > bd$ である。これらを辺々加えると、
$$ ad + bc > 2bd $$
したがって、$ad + bc - 2bd > 0$ となり、不等式は成立する。
(イ) $a-b < 0$ かつ $c-d < 0$ のとき
$0 < a < b$ かつ $0 < c < d$ であるから、$ac < bd$ が成り立つ。
よって、右辺の絶対値はマイナスがついて外れ、$|ac-bd| = bd-ac$ となる。
右辺と左辺の差をとると、
$$ (bd-ac) - (a-b)(c-d) = bd - ac - (ac - ad - bc + bd) = ad + bc - 2ac $$
ここで、$b > a$ と $c > 0$ より $bc > ac$ であり、$d > c$ と $a > 0$ より $ad > ac$ である。これらを辺々加えると、
$$ ad + bc > 2ac $$
したがって、$ad + bc - 2ac > 0$ となり、不等式は成立する。
以上 (i), (ii) より、すべての正数 $a, b, c, d$ において与えられた不等式が成立する。
解法2
$a, b, c, d$ はすべて正数であるから、$bd > 0$ である。
与えられた不等式の両辺を $bd$ で割ると、次のように変形できる。
$$ \frac{(a-b)(c-d)}{bd} \leqq \frac{|ac-bd|}{bd} $$
$$ \left(\frac{a}{b}-1\right)\left(\frac{c}{d}-1\right) \leqq \left|\frac{a}{b}\cdot\frac{c}{d}-1\right| $$
ここで、$x = \frac{a}{b}$, $y = \frac{c}{d}$ とおくと、$a, b, c, d$ が正数であることから $x > 0, y > 0$ であり、示すべき不等式は以下のようになる。
$$ (x-1)(y-1) \leqq |xy-1| $$
(i) $(x-1)(y-1) \leqq 0$ のとき
左辺は $0$ 以下、右辺は $|xy-1| \geqq 0$ であるから、不等式は成立する。
(ii) $(x-1)(y-1) > 0$ のとき
$x-1$ と $y-1$ は同符号である。
(ア) $x-1 > 0$ かつ $y-1 > 0$ のとき
$x > 1$ かつ $y > 1$ であるから、$xy > 1$ となり、$|xy-1| = xy-1$ である。
右辺と左辺の差をとると、
$$ (xy-1) - (x-1)(y-1) = xy - 1 - (xy - x - y + 1) = x + y - 2 $$
$x > 1$ かつ $y > 1$ より $x+y > 2$ であるから、右辺 $-$ 左辺 $> 0$ となり成立する。
(イ) $x-1 < 0$ かつ $y-1 < 0$ のとき
$0 < x < 1$ かつ $0 < y < 1$ であるから、$0 < xy < 1$ となり、$|xy-1| = 1-xy$ である。
右辺と左辺の差をとると、
$$ (1-xy) - (x-1)(y-1) = 1 - xy - (xy - x - y + 1) = x + y - 2xy $$
ここで、$y < 1$ と $x > 0$ より $x > xy$ であり、$x < 1$ と $y > 0$ より $y > xy$ である。
これらを辺々加えると $x+y > 2xy$ となるため、右辺 $-$ 左辺 $> 0$ となり成立する。
以上より、すべての正数 $x, y$ において $(x-1)(y-1) \leqq |xy-1|$ が成立するため、元の不等式も成立する。
解説
不等式の証明において、絶対値が含まれている場合の基本的なアプローチを問う問題である。
左辺が負の値を取り得ることに気づき、左辺の符号で場合分けを行うことが最初の関門となる。左辺が正となる場合は、「$2$ つの因数がともに正」または「ともに負」のいずれかであり、その条件から絶対値の中身の符号が確定するという論理の流れが美しい。
また、解法2のように各変数を比に置き換えて文字数を減らす手法は、式を見やすくし、見通しを良くするうえで非常に有効である。多変数の不等式で同次式に近い形をしている場合は、この置き換えのテクニックを覚えておくとよい。
答え
与えられた不等式が成立することが示された。
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