数学2 不等式の証明 問題 8 解説

方針・初手
複数変数を含む不等式が常に成り立つ条件を求める問題である。特定の1つの変数に注目して2次式とみなし、それが常に $0$ 以上となるための条件を考えるのが基本方針である。 まずは $x$ についての2次不等式とみなして、判別式 $D \leqq 0$ または平方完成を利用し、その後残りの変数についても同様の操作を繰り返す。
解法1
与えられた不等式を $x$ について整理すると、
$$x^2 - t(y - z)x + y^2 + z^2 \geqq 0$$
これがすべての実数 $x$ について成り立つための条件は、 $x$ についての2次方程式 $x^2 - t(y - z)x + y^2 + z^2 = 0$ の判別式を $D_x$ とするとき、$D_x \leqq 0$ が成り立つことである。
$$D_x = \{-t(y - z)\}^2 - 4(y^2 + z^2) \leqq 0$$
これを整理すると、
$$t^2(y^2 - 2yz + z^2) - 4y^2 - 4z^2 \leqq 0$$
$$(t^2 - 4)y^2 - 2t^2yz + (t^2 - 4)z^2 \leqq 0$$
これがすべての実数 $y, z$ について成り立つ必要がある。さらに $y$ について整理した2次不等式として考える。 この不等式がすべての実数 $y$ について成り立つための条件は、 $y^2$ の係数が負であり、かつ $y$ についての判別式を $D_y$ とするとき $D_y \leqq 0$ となること、または $y^2$ の係数が $0$ であり不等式が常に成り立つことである。
(i) $t^2 - 4 = 0$ すなわち $t = \pm 2$ のとき
不等式は $-8yz \leqq 0$ となる。これがすべての実数 $y, z$ に対して成り立つことはない(例えば $y=1, z=-1$ のとき不成立)。
(ii) $t^2 - 4 < 0$ すなわち $-2 < t < 2$ のとき
条件は、 $y$ の2次方程式 $(t^2 - 4)y^2 - 2t^2yz + (t^2 - 4)z^2 = 0$ の判別式 $D_y \leqq 0$ が成り立つことである。
$$\frac{D_y}{4} = (-t^2z)^2 - (t^2 - 4)^2z^2 \leqq 0$$
$$\{t^4 - (t^2 - 4)^2\}z^2 \leqq 0$$
これがすべての実数 $z$ について成り立つための条件は、
$$t^4 - (t^2 - 4)^2 \leqq 0$$
左辺を因数分解して解くと、
$$\{t^2 + (t^2 - 4)\}\{t^2 - (t^2 - 4)\} \leqq 0$$
$$(2t^2 - 4) \cdot 4 \leqq 0$$
$$t^2 - 2 \leqq 0$$
$$-\sqrt{2} \leqq t \leqq \sqrt{2}$$
これは前提条件である $-2 < t < 2$ を満たしている。
(i), (ii) より、求める $t$ の値の範囲は $-\sqrt{2} \leqq t \leqq \sqrt{2}$ である。
解法2
与式を $x$ について整理し、平方完成を用いて解く。
$$x^2 - t(y - z)x + y^2 + z^2 \geqq 0$$
$$\left\{ x - \frac{t(y - z)}{2} \right\}^2 - \frac{t^2(y - z)^2}{4} + y^2 + z^2 \geqq 0$$
$$\left\{ x - \frac{t(y - z)}{2} \right\}^2 + \left( 1 - \frac{t^2}{4} \right)y^2 + \frac{t^2}{2}yz + \left( 1 - \frac{t^2}{4} \right)z^2 \geqq 0$$
第1項は常に $0$ 以上であるため、これがすべての実数 $x$ に対して成り立つとき、残りの部分がすべての実数 $y, z$ について $0$ 以上であればよい。
$$\frac{4 - t^2}{4} y^2 + \frac{t^2}{2}yz + \frac{4 - t^2}{4} z^2 \geqq 0$$
ここで、 $4 - t^2 \leqq 0$ とすると、 $y^2$ の係数が $0$ 以下となる。 $4 - t^2 < 0$ のときは $y$ の絶対値を十分大きくすると式全体が負の値をとるため不適である。 $4 - t^2 = 0$ (すなわち $t = \pm 2$)のときは、不等式が $2yz \geqq 0$ となり、すべての $y, z$ で成り立つとは限らないため不適である。 よって、 $4 - t^2 > 0$ すなわち $-2 < t < 2$ が必要である。 このとき、さらに $y$ について平方完成を行う。
$$\frac{4 - t^2}{4} \left( y^2 + \frac{2t^2}{4 - t^2} yz \right) + \frac{4 - t^2}{4} z^2 \geqq 0$$
$$\frac{4 - t^2}{4} \left( y + \frac{t^2}{4 - t^2} z \right)^2 - \frac{4 - t^2}{4} \cdot \frac{t^4}{(4 - t^2)^2} z^2 + \frac{4 - t^2}{4} z^2 \geqq 0$$
$$\frac{4 - t^2}{4} \left( y + \frac{t^2}{4 - t^2} z \right)^2 + \frac{(4 - t^2)^2 - t^4}{4(4 - t^2)} z^2 \geqq 0$$
$$\frac{4 - t^2}{4} \left( y + \frac{t^2}{4 - t^2} z \right)^2 + \frac{16 - 8t^2}{4(4 - t^2)} z^2 \geqq 0$$
第1項は常に $0$ 以上であるから、これがすべての実数 $y, z$ で成り立つための条件は、第2項の $z^2$ の係数が $0$ 以上となることである。 $4 - t^2 > 0$ であるから分母は正であり、分子について、
$$16 - 8t^2 \geqq 0$$
$$t^2 \leqq 2$$
$$-\sqrt{2} \leqq t \leqq \sqrt{2}$$
これは $-2 < t < 2$ を満たす。
解説
- 複数の変数が含まれる不等式が「すべての実数について成り立つ(絶対不等式)」ための条件を求める典型的な問題である。
- 1つの文字に注目して2次式とみなし、判別式 $D \leqq 0$ または平方完成を利用して常に $0$ 以上となる条件を連鎖的に導くのが定石の手法である。
- 判別式を使う際、最高次の係数が文字式になる場合は、その係数が $0$ になる場合と負になる場合(上に凸になる場合)の吟味を漏らさないことが重要である。
答え
$-\sqrt{2} \leqq t \leqq \sqrt{2}$
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