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数学2 不等式の証明 問題 32 解説

数学2 不等式の証明 問題 32 解説

方針・初手

与えられた不等式がすべての実数 $x, y, z$ について成り立つことを示す問題である。 多変数の2次式の不等式証明では、式を変形して $(実数)^2 \geqq 0$ の形を作り出し、それらの和として表現するのが定石である。 (1) と (2) は乗法公式や有名な恒等式を利用して容易に平方の和にできる。 (3) は、(1) と (2) の結果が誘導になっていることに着目し、(1) と (2) の左辺の式を定数倍して足し合わせることで証明する方針が最も見通しがよい。また、特定の文字について整理して平方完成を繰り返すことでも証明できる。

解法1

(1)

$k=2$ のとき、不等式の左辺は次のように因数分解できる。

$$x^2 + y^2 + z^2 + 2(xy + yz + zx) = (x+y+z)^2$$

$x, y, z$ は実数であるから、$(x+y+z)^2 \geqq 0$ が成り立つ。 よって、不等式 $x^2 + y^2 + z^2 + 2(xy + yz + zx) \geqq 0$ は成り立つ。 等号が成り立つのは、$x+y+z=0$ のときである。

(2)

$k=-1$ のとき、不等式の左辺の式を2倍して2で割る変形を行うと、次のように平方の和を作ることができる。

$$x^2 + y^2 + z^2 - (xy + yz + zx) = \frac{1}{2} \{ 2x^2 + 2y^2 + 2z^2 - 2(xy + yz + zx) \}$$

$$= \frac{1}{2} \{ (x^2 - 2xy + y^2) + (y^2 - 2yz + z^2) + (z^2 - 2zx + x^2) \}$$

$$= \frac{1}{2} \{ (x-y)^2 + (y-z)^2 + (z-x)^2 \}$$

$x, y, z$ は実数であるから、$(x-y)^2 \geqq 0$、$(y-z)^2 \geqq 0$、$(z-x)^2 \geqq 0$ である。 よって、不等式 $x^2 + y^2 + z^2 - (xy + yz + zx) \geqq 0$ は成り立つ。 等号が成り立つのは、$x-y=0$ かつ $y-z=0$ かつ $z-x=0$、すなわち $x=y=z$ のときである。

(3)

(1) と (2) の左辺の式をそれぞれ $A, B$ とおく。

$$A = x^2 + y^2 + z^2 + 2(xy + yz + zx)$$

$$B = x^2 + y^2 + z^2 - (xy + yz + zx)$$

(1), (2) の結果より、$A \geqq 0$ かつ $B \geqq 0$ である。 ここで、与えられた不等式の左辺 $x^2 + y^2 + z^2 + k(xy + yz + zx)$ を $A$ と $B$ を用いて $\alpha A + \beta B$ の形で表すことを考える。

$$\alpha A + \beta B = (\alpha + \beta)(x^2 + y^2 + z^2) + (2\alpha - \beta)(xy + yz + zx)$$

これが $x^2 + y^2 + z^2 + k(xy + yz + zx)$ と一致するための条件は、係数を比較して以下の連立方程式を満たすことである。

$$\begin{cases} \alpha + \beta = 1 \\ 2\alpha - \beta = k \end{cases}$$

これを解くと、$\alpha = \frac{k+1}{3}$、$\beta = \frac{2-k}{3}$ を得る。したがって、左辺は次のように表せる。

$$x^2 + y^2 + z^2 + k(xy + yz + zx) = \frac{k+1}{3} A + \frac{2-k}{3} B$$

ここで、$-1 < k < 2$ のとき、$\frac{k+1}{3} > 0$ かつ $\frac{2-k}{3} > 0$ である。 また、$A \geqq 0$ かつ $B \geqq 0$ であるから、

$$\frac{k+1}{3} A + \frac{2-k}{3} B \geqq 0$$

が成り立つ。よって、不等式 $x^2 + y^2 + z^2 + k(xy + yz + zx) \geqq 0$ は示された。

等号が成り立つのは、係数がともに正であるため、$A=0$ かつ $B=0$ のときである。 (1) と (2) で求めた等号成立条件より、$x+y+z=0$ かつ $x=y=z$ となる。 $x=y=z$ を $x+y+z=0$ に代入すると $3x=0$ より $x=0$ となる。 したがって、等号が成り立つのは $x=y=z=0$ のときである。

解法2

(3) について、$x, y, z$ のうちの1文字について整理し、平方完成を繰り返すことでも証明できる。以下に (3) の別解を示す。(1) および (2) は解法1と同様である。

(3)

与式の左辺を $x$ についての2次式とみて平方完成する。

$$x^2 + k(y+z)x + y^2 + z^2 + kyz = \left( x + \frac{k}{2}(y+z) \right)^2 - \frac{k^2}{4}(y+z)^2 + y^2 + z^2 + kyz$$

$$= \left( x + \frac{k}{2}(y+z) \right)^2 + \left(1 - \frac{k^2}{4}\right)y^2 + \left(1 - \frac{k^2}{4}\right)z^2 + \left(k - \frac{k^2}{2}\right)yz$$

$$= \left( x + \frac{k}{2}(y+z) \right)^2 + \frac{4-k^2}{4} \left( y^2 + \frac{2k(2-k)}{4-k^2} yz + z^2 \right)$$

ここで、$-1 < k < 2$ より $4-k^2 > 0$ であり、$k \neq 2, -2$ であるから $\frac{2k(2-k)}{4-k^2} = \frac{2k(2-k)}{(2-k)(k+2)} = \frac{2k}{k+2}$ となる。 かっこの中身をさらに $y$ について平方完成する。

$$y^2 + \frac{2k}{k+2} yz + z^2 = \left( y + \frac{k}{k+2}z \right)^2 - \frac{k^2}{(k+2)^2}z^2 + z^2$$

$$= \left( y + \frac{k}{k+2}z \right)^2 + \frac{(k+2)^2 - k^2}{(k+2)^2} z^2$$

$$= \left( y + \frac{k}{k+2}z \right)^2 + \frac{4(k+1)}{(k+2)^2} z^2$$

以上より、与式は次のように変形できる。

$$\left( x + \frac{k}{2}(y+z) \right)^2 + \frac{4-k^2}{4} \left( y + \frac{k}{k+2}z \right)^2 + \frac{(4-k^2)(k+1)}{(k+2)^2} z^2$$

第3項の係数を整理すると、

$$\frac{4-k^2}{4} \cdot \frac{4(k+1)}{(k+2)^2} = \frac{(2-k)(k+2)(k+1)}{(k+2)^2} = \frac{(2-k)(k+1)}{k+2}$$

となる。$-1 < k < 2$ のとき、

$$\frac{4-k^2}{4} > 0$$

$$\frac{(2-k)(k+1)}{k+2} > 0$$

であるから、すべての項が $0$ 以上となり、不等式が成り立つことが示された。 等号が成り立つのは、

$$x + \frac{k}{2}(y+z) = 0 \quad \text{かつ} \quad y + \frac{k}{k+2}z = 0 \quad \text{かつ} \quad z = 0$$

のときである。$z=0$ から順に代入して解くと、$y=0, x=0$ を得る。 よって等号が成り立つのは $x=y=z=0$ のときである。

解説

多変数の不等式証明において、「平方の和を作る」ことは最も基本かつ強力な手法である。(1) は乗法公式そのものであり、(2) は対称性を保ちながら平方の和を作る頻出の変形である。 (3) は文字について平方完成を繰り返すことでも解けるが(解法2)、(1) と (2) の証明が (3) の特殊な場合であることを踏まえると、(1) と (2) の式を組み合わせる解法(解法1)を第一感として持てるとよい。前の小問を後の小問の誘導として利用する姿勢は、入試数学において非常に重要である。

答え

(1): 題意は示された。等号成立は $x+y+z=0$ のとき。

(2): 題意は示された。等号成立は $x=y=z$ のとき。

(3): 題意は示された。等号成立は $x=y=z=0$ のとき。

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