数学3 定積分・面積 問題 144 解説

方針・初手
(1)は、差をとって微分し関数の増減を調べるか、グラフの凸性を利用して不等式を証明する。
(2)は、(1)で示した不等式を用いて被積分関数を評価し、はさみうちの原理を用いて極限を求める。定積分で表された数列の極限における典型的な手法である。
解法1
(1)
$f(x) = \sin x - \frac{2}{\pi}x$ とおき、$0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{2}$ において $f(x) \geqq 0$ であることを示す。
$x$ で微分すると
$$f'(x) = \cos x - \frac{2}{\pi}$$
さらに微分すると
$$f''(x) = -\sin x$$
$0 < x < \frac{\pi}{2}$ において $f''(x) < 0$ であるから、この区間で $f'(x)$ は単調に減少する。
また、$f'(0) = 1 - \frac{2}{\pi} > 0$、$f'\left(\frac{\pi}{2}\right) = -\frac{2}{\pi} < 0$ であるから、$f'(\alpha) = 0$ を満たす $\alpha$ が $0 < \alpha < \frac{\pi}{2}$ の範囲にただ一つ存在する。
これより、$0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{2}$ における $f(x)$ の増減は以下のようになる。
$0 \leqq x < \alpha$ のとき $f'(x) > 0$ であり、$f(x)$ は単調増加する。
$x = \alpha$ のとき極大となる。
$\alpha < x \leqq \frac{\pi}{2}$ のとき $f'(x) < 0$ であり、$f(x)$ は単調減少する。
したがって、区間 $0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{2}$ における $f(x)$ の最小値は、端点における値 $f(0)$ または $f\left(\frac{\pi}{2}\right)$ のいずれかである。
端点の値を計算すると
$$f(0) = \sin 0 - 0 = 0$$
$$f\left(\frac{\pi}{2}\right) = \sin\frac{\pi}{2} - \frac{2}{\pi} \cdot \frac{\pi}{2} = 1 - 1 = 0$$
よって、最小値は $0$ であり、$0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{2}$ において常に $f(x) \geqq 0$ が成り立つ。
ゆえに、$\sin x \geqq \frac{2}{\pi}x$ が示された。
(2)
$n$ は自然数とする。
$0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{2}$ のとき、(1) の結果より
$$\sin x \geqq \frac{2}{\pi}x$$
両辺に $-n$ ($< 0$)を掛けると
$$-n \sin x \leqq -\frac{2n}{\pi}x$$
底 $e$ は $1$ より大きいので
$$e^{-n \sin x} \leqq e^{-\frac{2n}{\pi}x}$$
また、指数関数は常に正であるから
$$0 < e^{-n \sin x} \leqq e^{-\frac{2n}{\pi}x}$$
区間 $0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{2}$ で各辺を $x$ について定積分すると
$$0 < \int_0^{\frac{\pi}{2}} e^{-n \sin x} dx \leqq \int_0^{\frac{\pi}{2}} e^{-\frac{2n}{\pi}x} dx$$
ここで、右辺の定積分を計算する。
$$\int_0^{\frac{\pi}{2}} e^{-\frac{2n}{\pi}x} dx = \left[ -\frac{\pi}{2n} e^{-\frac{2n}{\pi}x} \right]_0^{\frac{\pi}{2}}$$
$$= -\frac{\pi}{2n} \left( e^{-n} - 1 \right)$$
$$= \frac{\pi}{2n} \left( 1 - e^{-n} \right)$$
したがって、次の不等式が成り立つ。
$$0 < \int_0^{\frac{\pi}{2}} e^{-n \sin x} dx \leqq \frac{\pi}{2n} \left( 1 - e^{-n} \right)$$
ここで、$n \to \infty$ のとき $e^{-n} \to 0$ であり、$\frac{\pi}{2n} \to 0$ であるから
$$\lim_{n \to \infty} \frac{\pi}{2n} \left( 1 - e^{-n} \right) = 0 \cdot (1 - 0) = 0$$
はさみうちの原理により
$$\lim_{n \to \infty} \int_0^{\frac{\pi}{2}} e^{-n \sin x} dx = 0$$
が成り立つことが示された。
解法2
(1)
$y = \sin x$ について、$y'' = -\sin x$ である。
$0 < x < \frac{\pi}{2}$ において $y'' < 0$ となるため、この区間で曲線 $y = \sin x$ のグラフは上に凸である。
したがって、$0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{2}$ において、曲線 $y = \sin x$ は原点 $(0,0)$ と点 $\left(\frac{\pi}{2}, 1\right)$ を結ぶ線分の上側(境界を含む)にある。
この線分の方程式は
$$y = \frac{1 - 0}{\frac{\pi}{2} - 0} x = \frac{2}{\pi}x$$
である。
よって、$0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{2}$ において次が成り立つ。
$$\sin x \geqq \frac{2}{\pi}x$$
(2)
解法1の (2) と同様であるため、評価の手順を簡潔に示す。
(1) の結果より、$0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{2}$ において $-n \sin x \leqq -\frac{2n}{\pi}x$ であり、$e > 1$ より
$$0 < e^{-n \sin x} \leqq e^{-\frac{2n}{\pi}x}$$
各辺を区間 $0 \leqq x \leqq \frac{\pi}{2}$ で定積分すると
$$0 < \int_0^{\frac{\pi}{2}} e^{-n \sin x} dx \leqq \int_0^{\frac{\pi}{2}} e^{-\frac{2n}{\pi}x} dx$$
右辺を計算し極限をとると
$$\lim_{n \to \infty} \int_0^{\frac{\pi}{2}} e^{-\frac{2n}{\pi}x} dx = \lim_{n \to \infty} \frac{\pi}{2n} \left( 1 - e^{-n} \right) = 0$$
はさみうちの原理により
$$\lim_{n \to \infty} \int_0^{\frac{\pi}{2}} e^{-n \sin x} dx = 0$$
が成り立つ。
解説
(1)で証明した不等式は「ジョルダンの不等式」として広く知られている。解法1のように関数を定義して微分し、増減を調べる方法が最も確実で汎用的なアプローチであるが、解法2のようにグラフの凸性を用いて図形的に証明する方法も直感的で素早く、入試では十分に通用する。
(2)は、直接積分できない関数の定積分で表された数列の極限を求める問題である。積分区間全体で成り立つ不等式を用いて被積分関数を評価し(はさみうち)、計算可能な積分に置き換える手法は、理系数学において非常に頻出である。
答え
(1) 題意の通り証明された。
(2) 題意の通り証明された。
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