数学3 定積分・面積 問題 176 解説

方針・初手
定積分で表された関数を含む等式の問題である。被積分関数の中に積分変数 $t$ 以外の変数 $x$ が含まれているため、まずは展開して $x$ を積分の外に出してから両辺を $x$ で微分する。これが初手となる。 後半の面積計算では、(1) で導いた関係式を原始関数として利用することで積分計算を簡略化できる。また、$\frac{1}{1+x^2}$ を含む定積分は $x = \tan\theta$ の置換積分を用いる。
解法1
(1)
与えられた等式
$$\int_0^x (x-t)f(t) dt = \log(1+x^2)$$
の左辺を展開し、$x$ を積分の外にくくり出すと、
$$x \int_0^x f(t) dt - \int_0^x t f(t) dt = \log(1+x^2)$$
となる。両辺を $x$ で微分すると、積の微分公式より
$$\left( 1 \cdot \int_0^x f(t) dt + x f(x) \right) - x f(x) = \frac{2x}{1+x^2}$$
すなわち、
$$\int_0^x f(t) dt = \frac{2x}{1+x^2}$$
が得られる。さらに両辺を $x$ で微分すると、商の微分公式より
$$f(x) = \frac{2(1+x^2) - 2x \cdot 2x}{(1+x^2)^2}$$
整理して、
$$f(x) = \frac{2(1-x^2)}{(1+x^2)^2}$$
となる。
次に、$f(x)$ のグラフの概形をかくために増減を調べる。導関数 $f'(x)$ は、
$$f'(x) = \frac{-4x(1+x^2)^2 - 2(1-x^2) \cdot 2(1+x^2) \cdot 2x}{(1+x^2)^4}$$
$$f'(x) = \frac{-4x(1+x^2) - 8x(1-x^2)}{(1+x^2)^3}$$
$$f'(x) = \frac{-4x - 4x^3 - 8x + 8x^3}{(1+x^2)^3}$$
$$f'(x) = \frac{4x^3 - 12x}{(1+x^2)^3}$$
$$f'(x) = \frac{4x(x^2 - 3)}{(1+x^2)^3}$$
$f'(x) = 0$ となるのは、$x = 0, \pm \sqrt{3}$ のときである。 また、$\lim_{x \to \pm \infty} f(x) = 0$ であり、$x$ 軸が漸近線となる。 増減表は以下のようになる。
| $x$ | $\cdots$ | $-\sqrt{3}$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ | $\sqrt{3}$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $f'(x)$ | $-$ | $0$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
| $f(x)$ | $\searrow$ | $-\frac{1}{4}$ | $\nearrow$ | $2$ | $\searrow$ | $-\frac{1}{4}$ | $\nearrow$ |
極大値は $f(0) = 2$、極小値は $f(\pm \sqrt{3}) = -\frac{1}{4}$ である。 また、$x$ 軸との交点は $f(x)=0$ より $x=\pm 1$ となる。 グラフは、$y$ 軸対称(偶関数)であり、上記の極値と交点を通り、両側で $x$ 軸に近づく曲線となる。
(2)
(1) より、曲線 $y=f(x)$ と $x$ 軸との交点の $x$ 座標は、$f(x) = 0$ を解いて、
$$\frac{2(1-x^2)}{(1+x^2)^2} = 0$$
$$x^2 = 1$$
$$x = \pm 1$$
となる。交点を $\mathrm{P}(a, 0)$, $\mathrm{Q}(b, 0)$ で $a<b$ としているため、
$$a = -1, b = 1$$
である。
(3)
$-1 \leqq x \leqq 1$ において、$1-x^2 \geqq 0$ であるから $f(x) \geqq 0$ となる。 したがって、求める面積 $S_1$ は
$$S_1 = \int_{-1}^1 f(x) dx$$
となる。ここで、(1) の途中の計算から $\int_0^x f(t) dt = \frac{2x}{1+x^2}$ であったため、$f(x)$ の原始関数の一つが $\frac{2x}{1+x^2}$ であることがわかる。これを利用すると、
$$S_1 = \left[ \frac{2x}{1+x^2} \right]_{-1}^1$$
$$S_1 = \frac{2}{1+1} - \frac{-2}{1+1}$$
$$S_1 = 1 - (-1) = 2$$
となる。
(4)
与えられた関数 $g(x), h(x)$ を具体的に求める。
$$g(x) = x \int_0^x f(t) dt = x \left( \frac{2x}{1+x^2} \right) = \frac{2x^2}{1+x^2}$$
$$h(x) = \frac{2}{1+x^2}$$
まず、2つの曲線の交点の $x$ 座標を求める。
$$\frac{2x^2}{1+x^2} = \frac{2}{1+x^2}$$
両辺に $1+x^2$ を掛けて整理すると、
$$2x^2 = 2$$
$$x = \pm 1$$
$-1 \leqq x \leqq 1$ の範囲において、
$$h(x) - g(x) = \frac{2}{1+x^2} - \frac{2x^2}{1+x^2} = \frac{2(1-x^2)}{1+x^2} \geqq 0$$
となるため、曲線 $y=h(x)$ が上側にある。 したがって、求める面積 $S_2$ は
$$S_2 = \int_{-1}^1 (h(x) - g(x)) dx$$
$$S_2 = \int_{-1}^1 \frac{2(1-x^2)}{1+x^2} dx$$
被積分関数は偶関数であるから、
$$S_2 = 2 \int_0^1 \frac{2 - 2x^2}{1+x^2} dx$$
分子の次数を分母の次数より低くするために変形する。
$$S_2 = 4 \int_0^1 \frac{-(x^2+1)+2}{1+x^2} dx$$
$$S_2 = 4 \int_0^1 \left( -1 + \frac{2}{1+x^2} \right) dx$$
$$S_2 = 4 \left[ -x \right]_0^1 + 8 \int_0^1 \frac{1}{1+x^2} dx$$
$$S_2 = -4 + 8 \int_0^1 \frac{1}{1+x^2} dx$$
ここで、$x = \tan\theta$ と置換する。 $\frac{dx}{d\theta} = \frac{1}{\cos^2\theta}$ であり、$x$ が $0$ から $1$ まで変化するとき、$\theta$ は $0$ から $\frac{\pi}{4}$ まで変化する。
$$\int_0^1 \frac{1}{1+x^2} dx = \int_0^{\frac{\pi}{4}} \frac{1}{1+\tan^2\theta} \cdot \frac{1}{\cos^2\theta} d\theta$$
$1+\tan^2\theta = \frac{1}{\cos^2\theta}$ を用いると、
$$\int_0^{\frac{\pi}{4}} \cos^2\theta \cdot \frac{1}{\cos^2\theta} d\theta = \int_0^{\frac{\pi}{4}} 1 d\theta = \left[ \theta \right]_0^{\frac{\pi}{4}} = \frac{\pi}{4}$$
となる。これを代入して、
$$S_2 = -4 + 8 \cdot \frac{\pi}{4} = 2\pi - 4$$
が得られる。
解説
(1) のように積分区間の上限に変数 $x$ を含み、被積分関数にも $x$ が含まれる等式は、まず積分変数 $t$ と無関係な $x$ を積分の外に出してから $\frac{d}{dx} \int_a^x f(t) dt = f(x)$ を用いるのが定石である。 (3) は $f(x)$ を積分して面積を求めるが、(1) の途中で求めた式を思い返せば積分計算をショートカットできる。微積分学の基本定理を深く理解していると計算量が大きく減る。 (4) で現れる $\int \frac{1}{x^2+a^2} dx$ の計算は、$x = a\tan\theta$ とおく置換積分の典型問題であり、確実にとれるようにしておきたい。被積分関数の偶奇性(対称性)を活用することで、積分区間を $0$ からに変え、計算ミスを減らす工夫も重要である。
答え
(1) $f(x) = \frac{2(1-x^2)}{(1+x^2)^2}$(グラフの概形は解法中の増減表に基づく)
(2) $a = -1, b = 1$
(3) $S_1 = 2$
(4) $S_2 = 2\pi - 4$
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